
「取り替え」と「取替え」。どちらもよく見かける表記ですが、いざ文章に書こうとすると迷ったことはありませんか。
特に役所の文書や契約書など、表記の正確さが求められる場面では、どちらを使うべきか気になるところです。本記事では、意味の違いから公用文の使い分けまで、順を追ってわかりやすく解説します。
「取り替え」と「取替え」の違い
まず押さえておきたいのは、「取り替え」と「取替え」は意味そのものに大きな違いはないという点です。どちらも「今あるものを別のものに替えること」を表します。
辞書でも「取(り)替える/取(り)換える」のように併記されており、日常語としてはほぼ同じ意味で使われています。
違いがあるとすれば、それは意味というよりも送り仮名の有無です。「取り替え」は送り仮名を付けた形、「取替え」は送り仮名を省いた形です。つまり問題の本質は、「意味の違い」ではなく「表記のルール」にあります。
一般的な文章やブログ、新聞などでは「取り替え」と書くのが自然です。読みやすさや視認性の面でも、送り仮名がある方が現代日本語としてはなじみやすいからです。そのため、多くのメディアでは「取り替え」が主流になっています。
「取り替え」と「取替え」どっちが正しい?
では、なぜ「取替え」という表記も存在するのでしょうか。ここで関係してくるのが、内閣告示「送り仮名の付け方」です。この中の通則6が重要なポイントになります。
通則6では、複合語の名詞形については、送り仮名を省く形を許容しています。たとえば、
- 申立て
- 問合せ
- 届出
- 取替え
などがこれに当たります。
つまり、「取り替える」という動詞の名詞形として使う場合、送り仮名を省いた「取替え」も認められている、というわけです。
ただし、ここで注意したいのは、「許容」であって「本則」ではないという点です。基本形は「取り替え」であり、「取替え」は省略形として認められている形です。一般の文章では、読みやすさを優先して「取り替え」が無難といえるでしょう。
公用文ではどっちを使うべきか?
公用文では、原則として文法上の役割によって書き分けます。動詞として使う場合は「取り替える」、名詞として使う場合は「取替え」とするのが基本です。
公用文は「公用文における漢字使用等について(平成22年内閣訓令第1号)」に基づき、原則として「送り仮名の付け方」に従って作成されます。特徴的なのは、通則6の許容は適用するという点です。
そのため、公用文では語の使われ方によって表記が変わります。
・動詞として使う場合
例:「部品を取り替える」
→ 送り仮名を付ける(取り替え)
・名詞として使う場合
例:「商品の取替えはできません」
→ 送り仮名を省く(取替え)
つまり、公用文では文法上の役割によって書き分けるのが原則です。これは見た目の好みではなく、ルールに基づいた使い分けです。
ただし、実際の官公庁文書を見ると、「取り替え」に統一している例も少なくありません。実務上は統一性を重視することが多く、混在を避けるために送り仮名を付ける形に揃えるケースもあります。
「取り替え」と「取替え」の使い分け
「取り替え」と「取替え」を使い分ける判断のポイントは次の三つです。
第一に、公用文かどうかです。役所の通知や条例、規程などの公用文では、送り仮名の付け方(通則6)に基づいて書き分けます。動詞として使う場合は「取り替える」、名詞として使う場合は「取替え」とするのが原則です。
第二に、文章の統一性です。ブログや一般記事などであれば、途中で「取り替え」と「取替え」が混在すると読みにくくなります。そのため、特別な理由がなければ、どちらかに統一するのが望ましいです。一般向け文章では、読みやすさの観点から「取り替え」に統一するケースが多いです。
第三に、読者層と可読性です。一般読者向けの記事では、送り仮名のある「取り替え」のほうが視認性が高く、現代日本語として自然に感じられます。検索結果を見ても、「取り替え」の表記のほうが広く使われている傾向があります。
結論として、迷った場合は、一般文章では「取り替え」に統一するのが無難です。一方、公用文で名詞として使う場合には「取替え」とするのが原則に沿った書き方になります。文書の種類に応じて選ぶことが大切です。
まとめ
本記事の内容を表にまとめると、以下のようになります。
| 項目 | 取り替え | 取替え |
|---|---|---|
| 意味 | ものを別のものに替えること | 基本的に同じ |
| 違いのポイント | 送り仮名あり | 送り仮名なし |
| 表記の位置づけ | 本則(基本形) | 通則6による許容形 |
| 一般文章 | ◎ よく使われる | △ あまり使われない |
| 公用文(動詞) | 取り替える | ― |
| 公用文(名詞) | △(統一する場合あり) | ◎ 原則はこちら |
「取り替え」と「取替え」の違いは、意味の差ではなく送り仮名の扱いにあります。辞書上はどちらも正しく、日常的には大きな区別はありません。しかし、公用文ではルールが存在します。動詞なら「取り替え」、名詞なら「取替え」という使い分けが原則です。とはいえ、実務では読みやすさや統一性を優先することもあります。
大切なのは、「どちらが絶対に正しいか」と考えるのではなく、文書の種類と目的に応じて適切に選ぶことです。送り仮名のルールを理解しておけば、迷うことはなくなります。正しい知識を身につけ、状況に応じた表記を選びましょう。