
日常会話の中でよく使っている「訓練」と「練習」。どちらも似たような場面で使われている印象ですが、意味に違いがあることをご存知でしょうか?
言葉の選び方一つで、伝えたいニュアンスが変わることもあります。本記事では、両者の意味を解説し、正しい使い分け方をわかりやすく紹介します。
「訓練」の意味
「訓練」とは、ある知識や技能を、誰かに身につけさせるための計画的・教育的な行為を指します。
漢字の成り立ちを見ても、「訓」は「教え導く」、「練」は「練習させる」という意味を持っており、“他人に技術を習得させる”ための行動であることがわかります。
例えば、防災訓練や職業訓練のように、現実の状況に備えた体験型の学びが「訓練」です。自分の意思で自由に行うというよりは、上司や指導者などが主導して行うものが多く、組織的・体系的な性質を持っています。
また、「訓練」は単に知識や技術を学ぶだけでなく、「とっさの判断力」や「適切な行動の取り方」、さらには「冷静に対応する心構え」など、実際の場面で役立つ力を総合的に養うことを目的としています。
「訓練」の例文
- 自衛隊では、厳しい訓練が日課になっている。
- 新入社員は、入社後三ヶ月間の職業訓練を受けた。
- 防災訓練では、実際の火災を想定した避難を行った。
- パイロットは、様々な飛行訓練を受ける。
- 医療スタッフ向けの応急処置訓練が行われた。
「練習」の意味
一方、「練習」とは、自分自身が特定の動作や技能を習得するために、繰り返し行う行動を指します。
ピアノの演奏、サッカーのドリブル、英語の発音など、比較的個人で行うシーンが多く、自発的に取り組むことが前提です。
辞書においても、「練習」=「学問・技芸などをくり返し習うこと」と定義されており、日常生活で最もよく使われる言葉の一つです。
「今日は練習する」「もっと練習しないと」といったように、自分の意志で努力を積み重ねていくイメージが強くあります。
「練習」は、スポーツや芸術の分野だけでなく、面接の受け答えやプレゼンテーションなど、あらゆるスキルアップに使われる言葉です。
「練習」の例文
- ピアノの練習を毎日30分ずつ続けている。
- 英語のスピーチの練習に取り組んでいる。
- サッカーのパスを練習し、チームワークを高めた。
- 前日に発声練習をしてからプレゼンに臨んだ。
- 就活のために面接の練習をしています。
「訓練」と「練習」の違い
「訓練」と「練習」の違いは、次のように整理することができます。
項目 | 訓練 | 練習 |
---|---|---|
主体 | 他人に技術を身につけさせる | 自分で技術を身につける |
特徴 | 計画的、体系的、実践を意識 | 自発的、繰り返し、スキル磨き |
視点 | “させる側”の言葉 | “する側”の言葉 |
使用場面 | 防災訓練、職業訓練、軍事訓練など | スポーツ、楽器、語学の上達など |
「訓練」は、一定の目的や状況に対応できるようにするための教育的・計画的な行動を指します。たとえば、消防士が災害時に備える訓練や、企業での新人研修などがこれにあたります。知識や体力だけでなく、判断力や行動パターンなども含めて体系的に身につけさせるのが特徴です。
また、「訓練」という言葉は「訓=教え導く」「練=練習させる」という意味からもわかるように、“させる側”の言葉です。つまり、誰かに教え、繰り返しやらせて慣れさせる行為が「訓練」なのです。
一方、「練習」は、主に個別のスキルを向上させるために自発的に繰り返す行為です。ピアノの演奏やサッカーのドリブルなど、日常的で比較的個人の努力に基づく行動が多く、「訓練」ほど大規模でも計画的でもありません。こちらは“する側”の言葉で、自分で技術を磨くときに使います。
このように、「訓練」は他人に身につけさせる実践的な行為、「練習」は自分のスキル向上を目的とした行為という明確な違いがあります。最大の違いは、「訓練」が他人に“させる”行為であるのに対し、「練習」は自分が“する”行為である点です。
「訓練」と「練習」の使い分け
「訓練」と「練習」の使い分けは、以下のように行うことができます。
①組織的に教え込む場合 ⇒「訓練」
消防士や自衛官などが、災害・救助・戦闘などの状況に対応できるようにする活動は「訓練」です。自ら進んで行うというより、指示や計画に基づいて行う点が特徴です。
②個人で技能を高める場合 ⇒「練習」
ピアノの上達やサッカーの技術向上など、反復によって技術精度を高める目的で行う行為は「練習」が適切です。
③相手に自発的に取り組ませたい場合 ⇒「練習させる」
この場合は、「訓練」ではなく「練習させる」と言うことで、命令的ではなく、学習的なニュアンスになります。使い方によって印象が変わるので注意しましょう。
まとめ
本記事では、「訓練」と「練習」の違いを解説しました。「訓練」は“させる側”が主導する計画的な行為、「練習」は“する側”が自発的に取り組む繰り返しの作業です。
場面に応じて正しく使い分けることで、より的確な表現ができるようになります。ぜひ今回の内容を参考にしてみてください。
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