トレイ  トレー 違い どっち 正しい 使い分け 意味

日常生活のさまざまな場面で使われる「トレイ」と「トレー」。しかし、いざ文字に起こすとなると「トレイ」と「トレー」のどちらで書くべきか迷ってしまう人も多いと思われます。

どちらの表記も見かけるうえに、発音の違いも微妙なため、判断がつきにくいです。そこで本記事では、「トレイ」と「トレー」の意味の違いや使い分けを分かりやすく解説します。

「トレイ」と「トレー」の意味

 

まず、「トレイ」と「トレー」は意味としてはまったく同じです。どちらも、英語の“tray”という単語をカタカナにしたものであり、以下のような対象を指します。

  • 食器や飲み物を乗せて運ぶための平たい皿状の容器(例:食堂のトレイ)
  • 書類を整理するための浅い箱(例:デスクトレイ)
  • CDやDVDプレイヤーのディスク挿入部(例:CDトレイが開く)
  • メールソフトで受信したメールを一時保存する場所(例:受信トレイ)

このように、「トレイ」と「トレー」は、物理的な“受け皿”や“収納部分”を表す外来語として、日本語に定着しています。言い換えれば、用途や対象に違いはなく、表記だけが異なるということです。

「トレイ」と「トレー」の表記の違い

 

英語の「tray」は、発音記号で表すと「/treɪ/」となります。この「/eɪ/」は、カタカナでは「エイ」と表現される音です。

そのため、英語の音に忠実にカタカナ化するなら「トレイ」が自然な表記とされます。「トレー」は「エー」という音にも聞こえるため、英語の原音とはややずれた印象になります。

もちろん、外来語のカタカナ表記は、英語の音を100%正確に再現するものではありません。しかし、日本語表記としての正確性や一貫性を重視する場面では、原語に忠実な「トレイ」が好まれる傾向にあります。

辞書における表記の違いは?

 

国語辞典を見てみると、「トレイ」と「トレー」のどちらを採用しているかは辞書によって異なります。以下は、その具体例です。

辞書名 見出し語 補足説明
デジタル大辞泉 トレー 「トレイ」とも言う、と補足あり
明鏡国語辞典 トレイ 「トレー」も使われると記述あり
広辞苑 第七版 トレイ トレーは記載なし
実用日本語表現辞典 トレイ(別表記:トレー) トレイを主表記として記載

このように、いくつかの辞書では「トレイ」が主表記として採用されており、「トレー」は補足的な扱いです。つまり、辞書においては「トレイ」が標準的とされる傾向があると言えます。

ただし、日常的に「トレー」と書かれることがあるのも事実であり、多くの辞書が「トレイ/トレー両方の表記が存在する」と認めています。

文化庁やNHKでは「トレイ」を推奨

 

正式な文書や教育現場で使う場合、文化庁やNHKといった公的な機関の方針は参考になります。

文化庁が1991年に公表した『外来語の表記』では、カタカナ語の表記について、できるだけ原語の発音に近い形で表記する方針が示されています。この中で、「tray」のような語は「トレー」ではなく「トレイ」と書くのが適切だとされています。

また、NHKの放送用語集やニュース原稿でも「トレイ」という表記が採用されています。これは、正確な言葉づかいが求められるメディアの現場で、文化庁の方針に基づいた表記が選ばれているためです。

公的な文章や報道のように、正確性や統一性が重視される場面では、「トレイ」が標準的な表記とされているのです。

実際の使用では「トレー」が目立つ場面も

一方で、私たちが日常的に目にする場面では「トレー」の表記が目立つこともあります。たとえば、次のようなシーンでは「トレー」が頻繁に使われます。

  • コンビニやスーパーのパッケージ表記(例:惣菜トレー、肉トレー)
  • 飲食チェーンのメニューや店内案内
  • 雑貨やインテリア商品のラベル(例:アクセサリートレー)
  • ECサイトや通販の商品のタイトル

この背景には、いくつかの要因が考えられます。

まず、「トレー」の方が語感としてやわらかく、視覚的にもなじみやすい点が挙げられます。「トレイ」はやや硬く感じられる一方、「トレー」は音の響きが親しみやすく、広告や商品名などでは受け入れられやすいのです。

また、印象の問題もあります。たとえば「トレイ」と書かれると、医療器具や実験機器のようなイメージが想起されることもあり、生活用品や食品などでは「トレー」が選ばれる傾向にあります。

「トレイ」と「トレー」の違いを整理

 

「トレイ」と「トレー」の違いを表にまとめると、以下のようになります。

項目 トレイ トレー
語源 英語「tray」 同左
発音との一致 ◯(/treɪ/に忠実) △(音の変形)
文化庁の表記基準 準拠している 原則から外れる
NHKや公的文書 使用される 使用されないことが多い
辞書での扱い 主表記として採用される例が多い 補足的な表記
商品・広告 あまり使われない 多用される
語感 硬く正確な印象 柔らかく親しみやすい

どう使い分けるべきか?

以上の説明から、「トレイ」と「トレー」は次のように使い分けるのが妥当です。

  • 公的・正式な文書、報道、教育現場では「トレイ」
    ⇒ 正式表記として信頼性が高い
  • 商品名、広告、日常会話では「トレー」も許容範囲
    ⇒ 親しみやすさや視覚的な印象を重視する場面に適する

つまり、どちらが正しいというわけではなく、場面に応じて使い分けることが大切です。

まとめ

 

「トレイ」と「トレー」は、どちらも英語の“tray”を語源とするカタカナ語であり、意味に違いはありません。しかし、文化庁やNHKが定める外来語表記の基準に従えば、「トレイ」がより正確かつ標準的な表記となります。

とはいえ、「トレー」という表記も日常生活に広く浸透しており、特に商品や広告、会話の中では頻繁に使われています。よって、「トレイ」=公的・標準表記、「トレー」=口語・広告向け表記、というように場面に応じた使い分けが求められます。

正確性と親しみやすさのバランスを取りながら、適切に使い分けていくことが重要です。