「油」 「脂」 違い 使い分け 例文

「油」と「脂」は、どちらも私たちの生活に欠かせない存在ですが、その違いをご存じでしょうか?

一見同じように思えるこの二つの漢字には、実ははっきりとした違いがあり、それぞれ独自の役割や特徴を持っています。

本記事では、「油」と「脂」の違いを詳しく解説し、日常生活での正しい使い方を分かりやすくお伝えします。

「油」の意味・使い方

 

」とは、主に植物から抽出される成分で、常温で液体のものを指します。

「油」は水に溶けず、料理の調理法として多く使われます。例えば、炒め物や揚げ物に使うサラダ油、ごま油、菜種油、オリーブオイルなどは、液体状で扱いやすく、さまざまな調理方法に利用されます。

「油」の例文

  1. 揚げ物を作る時は、サラダを使うことが多い。
  2. サラダにかけるドレッシングにオリーブを使うと、風味が増す。
  3. パンを焼く前に少量のを塗って、表面をパリッと仕上げる。
  4. 料理の仕上げにゴマを少し垂らすと、香りが引き立つ。
  5. 揚げ物をするときは、をしっかり温めてから食材を入れるとカリッと仕上がる。

「脂」の意味・使い方

 

一方、「」は、主に動物由来の脂肪で、常温で固体のものを指します。「脂」は、一般に動物の肉や内臓に多く含まれています。

例えば、豚肉や牛肉の脂身、バターやラードなどがこれに該当します。また、「脂」は肉の風味を豊かにするため、料理において味わいを深める役割も担っています。

「脂」の例文

  1. ステーキを焼く時、肉のが溶けて香ばしい香りが広がる。
  2. ハンバーガーに使われる肉は、身の多い部位が使われることが多い。
  3. 焼き豚を作るとき、豚肉のが料理にコクを加える。
  4. が乗った刺身なので、値段もけっこう高いだろう。
  5. 焼き肉で出てくるが焦げないように、火加減を調整する。

「油」と「脂」の違い

「油」 「脂」 違い

「油」と「脂」は、見た目や使い方が似ているため、よく混同されがちです。しかし、これらにはいくつかの重要な違いがあります。

具体的には、状態由来、そして使用方法に違いがあります。これらの違いを理解することで、日常生活での使い分けがしやすくなります。

1. 状態の違い

最も簡単に見分けられる違いは、物理的な状態です。

  • 「油」は、常温で液体の状態を保つものが多いです。例えば、サラダ油やオリーブオイルなどは、常温でも液体です。この液体状態により、油は非常に使いやすく、サラダやドレッシング、炒め物、揚げ物など、さまざまな料理で使われます。油の液体性は、食品の質感や風味を調整するのに重要な役割を果たします。
  • 一方で、「脂」常温で固体のものが一般的です。例えば、バターやラード(豚脂)などは、冷蔵庫に入れていなくても、常温で固まっています。動物の脂肪は固形状であるため、固まりやすいのが特徴です。脂の固形性は、料理の風味やコクを増すために利用されます。特に、焼き料理や煮込み料理で、脂身が溶け出し、豊かな風味を与えます。

2. 由来の違い

次に、由来の違いについてです。油と脂は、それぞれ異なる種類の原料から得られます。

  • 「油」は主に植物由来のものが多いです。代表的なものとしては、ごま油、サラダ油、菜種油、コーン油、キャノーラ油、オリーブオイルなどが挙げられます。これらはすべて植物の種子や果実から抽出されるものです。また、魚から得られる油(例:魚油)もありますが、植物由来のものが主流です。植物油は、化学的に加工されることも多く、液体の状態を保ちやすいため、家庭料理で非常に広く使われています。
  • 一方、「脂」は主に動物由来のものが多いです。例えば、豚脂(ラード)や牛脂鶏脂などは動物の肉や内臓から抽出されます。動物脂肪は植物油とは異なり、熱を加えると溶け、冷えると固まる性質を持ちます。一部、「樹脂」など植物由来のものもありますが、これは常温で固体であるため「脂」が使われています。

3. 使用方法の違い

「油」と「脂」には、それぞれ異なる使用方法があります。

  • 「油」は液体であるため、主に炒め物や揚げ物に使われます。オリーブオイルやサラダ油などは、加熱することで食材を均等にコーティングし、サクサクとした食感を作ることができます。また、ドレッシングやマリネに使われることも多く、料理全体に軽やかな風味を加えます。
  • 「脂」は固体であるため、主に肉料理や煮込み料理に使用されることが多いです。脂は料理に深みやコクを与え、風味を豊かにする役割を果たします。例えば、ラードで焼いた餃子や、バターを使った焼き菓子などが典型的な使い方です。

「あぶらっこい」と言う場合はどっち?

 

唐揚げや天ぷらなどを食べた時に「あぶらっこい」という言葉がよく使われます。

これは元々、「油濃(あぶらこし)」=「油気が強く味が濃い」という意味で平安時代には使われていました。

この場合は、液体の油を使って揚げてますから「油っこい」を使うことになります。

しかしながら、「あぶらっこい」は「しつこい。性質や態度があっさりしていない」などの意味で人に対して使われることもあります。

この場合は、食べ物に対してではなく、人に対して比喩的に使っているため、「あの人はどことなく脂っこい」「脂っこい語り口の人だ」のように「脂っこい」を使うことになります。

人に対して使う時は、「脂ぎる」「脂汗」「脂取り紙」のように、原則として「脂」を使うのが正しいです。

その他には、「調子が出て仕事や勉強がはかどる」という意味で「脂が乗る」という慣用句があります。

これはその人が太っているという意味ではなく、「脂の乗った魚が味のよい時期を迎えた」ということから転じて使われている言葉なので「脂」を使います。

一方で、「油を売る」や「油を絞られる」などは、人に対して使ってはいますが、由来になったのが「油」なので「油」を使います。

    まとめ

     

    「油」と「脂」は見た目が似ているものの、状態や由来、使用方法において異なる特徴があります。

    「油」は主に植物由来で常温で液体、幅広い調理に使われるのに対し、「脂」は動物由来で常温で固体、料理に深みやコクを与えるために使われます。

    これらの違いを理解することで、日常の料理や食材の選択がよりスムーズに行えるようになります。