
ネジの緩み止めや固定に欠かせないのが、ロックタイトのスレッドロッカーです。中でも「242」「243」「263」は使用頻度が高く、多くの現場やDIYで選ばれています。
しかし、見た目はよく似ていても性能や用途には違いがあります。本記事では、それぞれの特徴や違いを整理しながら、どのように使い分けるべきかをわかりやすく解説します。
ロックタイト「242」とは?意味と使い方
ロックタイト「242」とは、青色の中強度タイプとしてもっともポピュラーな製品の一つです。
ねじ山に塗布することで、振動や衝撃によるゆるみを防ぎ、確実な固定を実現します。
最大の特徴は「中強度」である点です。つまり、工具を使えば取り外しが可能で、メンテナンス性に優れているのです。
粘度は比較的低く、細めのボルトやねじにも浸透しやすい性質を持っています。そのため、自転車やオートバイの部品固定、電動工具のネジ止めなど、定期的に分解・整備が必要な場面に適しています。
また、常温硬化型で特別な熱処理を必要とせず、手軽に使える点も利点です。さらに242は、鉄や鋼などの金属ねじに適しており、アルミや真鍮にも使用可能です。
ただし、耐油性や耐熱性は243ほど高くないため、油分が残る環境や高温下での使用にはやや不向きです。総合すると、ロックタイト「242」は「標準的なゆるみ止め」として幅広く使える万能タイプといえるでしょう。
ロックタイト「243」と「242」との違い
ロックタイト「243」とは、242の改良版ともいえる製品です。基本的な性質は同じく中強度の青色タイプですが、242と比べていくつかの性能面で強化されています。
まず大きな特徴は「耐油性」です。ネジを締め付ける際、完全に脱脂するのは難しい場面がありますが、243は軽度の油分が残っていても確実に硬化・接着が可能です。
自動車整備や産業機械の組み立てなど、油の存在を避けられない環境で特に力を発揮します。
また、243は242に比べて耐熱性や耐薬品性も高められており、長期的な安定性に優れています。そのため、温度変化が激しい場所や、化学薬品に触れる可能性がある現場でも安心して使用できます。
使用感としては、243の方がやや粘度が高めで、ボルトに塗布した際の保持力が強いと感じる場合もあります。ただし、いずれも「中強度」であるため、工具を使えば分解は可能です。
総じて、243は「242の上位互換」と表現でき、プロの現場では243を標準的に採用するケースが増えています。DIYであっても、迷ったら243を選んでおけば幅広いシーンに対応できるでしょう。
ロックタイト「263」とは?「242・243」との違い
ロックタイト「263」とは、赤色で強度が「高強度」に分類されるタイプです。
242や243が「中強度」であるのに対し、263は一度固着すると容易には外れません。分解の必要がほとんどない場所や、強力な固定が求められる場面に最適です。
具体的には、大型機械のボルト、重機や自動車のエンジン部品、高い振動が加わる箇所などで多用されます。特に安全性が重要視される場面では、263の強力な固定力が安心感を与えます。
ただし、注意点として一度固定すると通常の工具では外せない場合があります。取り外すには加熱(250℃前後)するか、特殊な方法が必要となるため、メンテナンス性は低下します。この点が中強度タイプとの大きな違いです。
また、263は油分が多少残っていても硬化可能で、243同様に耐油性を持っています。粘度も高く、ねじ山にしっかりと留まるため、太いボルトや高荷重の部品に適しています。
まとめると、263は「一度締めたら基本的に外さない箇所」向けの製品であり、242・243と比べて用途が明確に異なります。
242・243・263の違いと使い分け
ここまで解説した3製品の違いを整理すると、次のようにまとめられます。
項目 | 242 | 243 | 263 |
---|---|---|---|
強度 | 中強度 | 中強度 | 高強度 |
色 | 青 | 青 | 赤 |
耐油性 | やや弱い | 強い | 強い |
主な用途 | 一般的なねじ固定、DIY、自転車・工具 | 自動車整備、油のある現場、産業機械 | 大型機械、エンジン、強力な固定 |
取り外しの可否 | 可能(工具使用) | 可能(工具使用) | 困難(加熱で対応) |
使い分けのポイントは、「取り外す必要があるかどうか」です。
- 定期的にメンテナンスする部品 → 242または243
- 油環境や耐久性を重視する場合 → 243
- 基本的に外さない部品や強力固定が必要な場合 → 263
DIYユーザーであれば、242か243があればほぼカバー可能です。特に迷ったときは243を選ぶのがおすすめです。
プロの現場では用途に応じて使い分けることで、確実な作業と安全性が確保できます。
まとめ
ロックタイトの「242」「243」「263」は、いずれも優れたねじゆるみ止めですが、強度や耐油性に明確な違いがあります。
- 242:標準的な中強度タイプ。DIYや一般用途に最適。
- 243:242の改良版。耐油性や耐熱性が高く、プロ現場で多用される。
- 263:高強度タイプ。基本的に外さない部品向け。
選び方の基準は「取り外しの必要性」と「使用環境」です。適切に使い分けることで、機械の信頼性や安全性が格段に向上します。ぜひ本記事を参考に、用途に合ったロックタイトを選んでみてください。
※本記事を読んだ後は、以下の関連記事もおすすめです。