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日本語には、発音が似ているために混同されやすい表現が少なくありません。「ひいては」と「しいては」もその中の一つです。

特にビジネス文章やスピーチではどちらを使えばよいのか迷うという人も多いです。本記事では、両者の違いをわかりやすく整理し、正しい使い方を解説していきます。

「ひいては」の意味と使い方

 

ひいては」は、副詞「ひいて」を強調した表現で、漢字では「延いては」と書きます。

意味は「それが原因となって結果として」「その事柄にとどまらず、さらに広く影響が及んで」というものです。

「ひいては」は、ある事柄が将来的に、または広い範囲に影響を及ぼすことを示すときに使われます。たとえば、次のような例文が挙げられます。

  1. 「この地域での環境活動は、ひいては地球全体の保護につながる。」
  2. 「社員一人ひとりの努力が、ひいては会社全体の成長を支える。」
  3. 「研究の進展は、ひいては社会全体の生活水準向上につながる。」

このように「ひいては」は、個別の行為や出来事からより大きな結果へとつながる流れを表す言葉です。

特にビジネスシーンで好んで用いられ、戦略の意義や取り組みの効果を説明する際に有効です。相手に「この取り組みは単なる小さな成果ではなく、大きな意味がある」と伝えることができます。

ただし、日常会話で頻繁に用いられる言葉ではありません。やや硬い表現であるため、会議のプレゼンテーションや公式な文章に適しており、普段の会話では「その結果」「結局は」といった表現の方が自然でしょう。

「しいては」の意味と使い方

 

一方で「しいては」という言葉はどうでしょうか?結論から言うと、「しいては」は日本語としては存在しない誤用です。

国語辞典にも「しいては」という形での項目はなく、正しくは「強いて(しいて)」や「強いて言えば」と表現します。

強いて」は「無理に」「強引に」といった意味を持ちます。たとえば、次のような例文が挙げられます。

  • 「部下に残業を強いてはいけない」
  • 強いてお願いするのも気が引ける」

また、「強いて言えば」は「無理に言うならば」「あえて言うならば」という意味で、複数の選択肢の中から一つを挙げるときに使われます。

  • 「AとBはどちらも良いが、強いて言えばAの方が使いやすい」

では、なぜ「しいては」という誤用が生まれたのでしょうか?その理由は、「ひいては」と音が似ているためだと考えられます。

特に「人のため、ひいては社会のため」といった言い回しを耳で覚えた人が、「しいては」と書き間違えたり話し言葉で使ったりしたことから広まったと考えられます。

誤用が広まった結果、「しいては成功につながる」といった表現を見かけることもありますが、これは誤った日本語です。特にビジネス文書や公式な場面では、誤用が信用低下につながる恐れがあるため注意が必要です。

「ひいては」と「しいては」の違い

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両者の違いを明確に理解するには、意味や用例を比較するのが効果的です。以下の表にまとめました。

表現 意味 用例 備考
ひいては それが原因となり結果として、さらに広く影響が及んで 「この活動は、ひいては社会全体の利益となる」 正しい日本語。ビジネスでも多用される
しいては 誤用(本来は存在しない) ×「この努力は、しいては成功につながる」 正しくは「強いて」または「強いて言えば」を使う
強いて 「無理に」「強引に」 「部下に残業を強いてはいけない」 正しい表現
強いて言えば 「無理に言うならば」 「強いて言えば、BよりAが好みだ」 比較や選択の場面で用いる

この比較からわかるように、「ひいては」と「しいては」は全く別物です。

「ひいては」は正しい日本語であり、原因と結果の関係を示す重要な表現です。一方、「しいては」は誤用であり、正しくは「強いて」や「強いて言えば」に言い換える必要があります。

誤って「しいては」を使うと、文章の意味が曖昧になり、読み手に混乱を与える可能性があります。文章の正確性や信頼性を守るためにも、使い分けは重要です。

正しく使い分けるためのポイント

 

最後に、「ひいては」と「しいては」を混同しないためのポイントを整理しましょう。

原因と結果を強調するとき⇒「ひいては」

物事の広がりや最終的な結果を強調する場合は「ひいては」を使います。

例:「この努力が、ひいては会社全体の成長につながる」。

選択や強調をするとき⇒「強いて」や「強いて言えば」

無理に何かを行うニュアンスや、あえて一つを選ぶニュアンスを伝えたいときは「強いて」「強いて言えば」を使います。

例:「強いて言えば、こちらの案の方が妥当だろう」。

「しいては」は公式文書では必ず避ける

公的な文章やビジネスシーンで誤って「しいては」を使うと、言葉の正確さを疑われる恐れがあります。

特に契約書・報告書などの場面では、信頼性を損なう原因になるため、必ず「ひいては」を使うようにしましょう。

まとめ

 

本記事では、「ひいては」と「しいては」の違いを解説しました。

「ひいては」は「それが原因となって結果として」「さらに広く影響が及んで」という意味を持つ正しい日本語です。一方、「しいては」は存在しない誤用で、正しくは「強いて」や「強いて言えば」を使います。

ビジネス文書や公式な場面では誤用を避け、正しい表現を心がけることが大切です。

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