
企業が海外へ製品を輸出するとき、必ずしも自由に出荷できるとは限りません。安全保障や国際的な規制により、事前に確認が求められるケースがあります。
その際に登場するのが、「該非判定書」や「非該当証明書」と呼ばれる書類です。この記事では、両者の意味や違い、使い分けのポイントを丁寧に解説していきます。
「該非判定書」の意味
「該非判定書(がいひはんていしょ)」とは、製品や技術が輸出規制に該当するか否かを判定し、その結果をまとめた書類です。
日本では、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、特定の品目や技術が国際的な安全保障上の観点から規制対象となることがあります。
この書類の目的は、輸出対象となる品目が規制対象(いわゆる軍事転用のリスク)に該当するかどうかを判断し、明文化することです。基本的に、製品の詳細な技術情報を把握している製造元や開発元が作成します。
書式は企業ごとに異なりますが、製品名、型番、用途、該当する規制番号、判定者の署名や作成日などが記載されます。輸出者が通関時に必要書類として提示する場面が多く、信頼性の高い書類として扱われます。
なお、「該非」とは「該当か非該当か」という意味で、安全保障上の問題があるかないかを表す言葉です。
「該非判定書」の例文
以下に、「該非判定書」を使った例文を5つ紹介します。
- 海外への製品輸出にあたり、該非判定書の提出を求められた。
- 該非判定書は、製品の技術内容をもとに社内で判断された書類です。
- この製品が輸出規制に該当するかどうかを判断し、該非判定書を作成した。
- 該非判定書の取得方法がわからず、輸出手続きが遅れている。
- 海外の取引先から該非判定書の提示を依頼され、対応を検討中です。
「非該当証明書」の意味
「非該当証明書(ひがいとうしょうめいしょ)」とは、該非判定の結果が「非該当」であったことを証明するための書類です。
つまり、「この製品は輸出規制の対象ではないため、特別な輸出許可は不要です」と第三者に対して明示する目的で使われます。
この証明書も、実際には企業が「該非判定書」を作成し、その中で「非該当」と判定されたことを明記する形式を取るため、「該非判定書」とほぼ同じ内容になることが多いです。
輸出先の顧客や通関業者から「非該当である証明書をください」と求められたときには、企業側がそのまま「該非判定書」を「非該当証明書」として使うことも多いです。そのため、呼び方が異なるだけで、実質は同じ役割を果たしています。
「非該当証明書」の例文
以下に、「非該当証明書」を使った例文を5つ紹介します。
- 海外の顧客から、非該当証明書の提出を求められました。
- 非該当証明書は、関税や規制の確認に使われる書類です。
- 製品が特定の規制対象に該当しないことを示すため、非該当証明書を提出した。
- 製品の用途や構造を説明し、非該当証明書を取得する準備を進めています。
- 非該当証明書がないと、輸出できない国や取引先もあるので注意が必要です。
「該非判定書」と「非該当証明書」の違い
「該非判定書」と「非該当証明書」の違いは、以下のように整理することができます。
比較項目 | 該非判定書 | 非該当証明書 |
---|---|---|
目的 | 規制対象かどうかを判断する | 非該当であることを証明する |
内容 | 該当/非該当のいずれかを含む | 非該当の結果のみを記載 |
提出先 | 主に社内、顧客、通関業者など | 輸出先企業や税関など外部向け |
作成方法 | 独自様式(項目別対比表など) | 該非判定書を基に作成される |
実務上の違い | 判定の根拠や詳細が含まれることが多い | 結果の証明に特化したシンプルな内容 |
「該非判定書」と「非該当証明書」は、どちらも輸出時に使用される書類ですが、目的や使い方に明確な違いがあります。
「該非判定書」は、輸出する製品が外為法などの規制に「該当」するか「非該当」かを判断した結果を記載する書類で、技術仕様と法令との照合をもとに作成されます。判定の根拠や詳細な対比情報が含まれることが多く、主に社内や通関業者向けに使用されます。
一方、「非該当証明書」は、その判定結果のうち「非該当」であることを第三者に証明する書類です。
内容は簡潔で、対外的な証明書として輸出先企業や税関への提出を目的とします。通常、該非判定書を基に作成されますが、詳細な説明は省略されることが多いです。
実務上は両者を併用したり、該非判定書をそのまま証明書として扱うこともありますが、「判定書=判断結果を示す書類」「証明書=非該当を証明する書類」という役割の違いを理解することが重要です。
「該非判定書」と「非該当証明書」の使い分け
それでは、実際の業務ではどう使い分けるのがよいのでしょうか?次の3つのケースに分けて見ていきましょう。
① 輸出製品が規制に該当するか調べる場合 ⇒ 「該非判定書」
製品が輸出可能かどうかを調べるときは「該非判定書」を使います。これは、自社で判断を行い、今後の輸出手続きを進めるための基礎資料になります。
② 顧客や通関業者から「規制対象外かどうか」の証明を求められた場合 ⇒ 「非該当証明書」
すでに「非該当」と判定されていて、その結果を第三者に提示する必要があるときは「非該当証明書」を使います。形式は「該非判定書」と同じでも問題ありません。
③ 海外の取引先が英語での証明を要求してきた場合 ⇒ 「非該当証明書」
国際取引では英文証明を求められることもあります。この場合は、「非該当証明書」の形式で英文を作成するとスムーズです。
まとめ
この記事では、「該非判定書」と「非該当証明書」の違いを解説しました。
「該非判定書」は、製品が輸出規制に該当するかどうかを判断する書類です。一方、「非該当証明書」は、その判定結果が「非該当」であることを第三者に証明する書類です。
今後、輸出業務に関わる際には、それぞれの書類の意味と使い方をしっかり押さえておきましょう。