ご持参ください 敬語 正しい 誤用 ビジネス 例文

ビジネスや日常会話で、丁寧な表現が求められる場面は多いです。その中でも「ご持参ください」というフレーズを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

ただ、「ご持参ください」は正しい敬語なのか、そしてどのような場面で使えばよいのかと疑問に思う方もいるでしょう。この記事では、「ご持参ください」の意味や正しい敬語表現、類義語まで詳しく解説します。

「ご持参ください」の意味

 

「ご持参ください」は、「持参」という行動に「ご」と「ください」を付けて丁寧に依頼する敬語表現です。

「持参」とは、自分の手で何かを持って行くことを指します。そのため、「ご持参ください」は、「必要なものをお持ちになってきてください」という意味になります。

敬語としての構造

「ご持参ください」は以下のように成り立っています

  • 「ご」:動作や物事に敬意を表す接頭語。
  • 「持参」:行動そのものを指す言葉(謙譲語)。
  • 「ください」:依頼やお願いをする丁寧な表現。

ポイント

  • 形式ばった表現であり、主にビジネスや公式な場面で使われることが多い。
  • カジュアルな場面では「持ってきてください」と言い換えられる。

使用シーン

履歴書や身分証明書など、何かを持参する必要がある場面において、案内や依頼の際に使われる。

例⇒「当日は身分証明書をご持参ください。」

「ご持参ください」は正しい敬語?

 

「ご持参ください」という表現に疑問を感じる人は多いです。その理由は、「持参」に含まれる「参る」に引っかかる人が多いからだと思われます。

「参る」は「行く・来る」の謙譲語であり、謙譲語は自分がへりくだって相手に敬意を表す言葉です。そのため、自分以外には使えないはずの言葉を相手に対して使っているのでおかしいのではという考えです。

ですが、結論から言いますと「ご持参ください」は正しい表現です。

その論拠については、文化庁による「敬語の指針」が参考になります。以下、実際の引用部分です。

「御持参ください 」「お申し出ください 「お申し込みください」などといった言い方には 「参る」や「申す」など、本来自分に使う敬語が入っているのでいつも気になっている。これらは、適切な使い方なのだろうか。

【解説1 「参る」や「申す」は、謙譲語Ⅱに当たる敬語である。しかし 「御持参ください」「お申し出ください 」「お申し込みください」などといった表現の中に含まれる「参る」や「申す」は、謙譲語Ⅱとしての働きは持っていないと言ってよい。したがって、これらの表現を「相手側」の行為に用いるのは問題ない

出典:文化庁 文化審議会答申 敬語の指針

要約すると、「ご持参ください」を相手側の行為に使っても何ら問題はないということです。

なぜそう言えるのかということですが、まず、辞書には「持参」=「持っていくこと。持ってくること」としか記述されていません。つまり、「持参」という言葉自体はへりくだる意味を持たない普通の名詞なのです。

そのため、相手に使っても問題ないですし、尊敬表現の「ご~ください」と組み合わせて、相手を敬う言い回しにしても問題ないのです。

とは言え、「参る」は謙譲語なので「行く・来る」ことをへりくだって述べる言葉なのでは?と納得いかない人もいるかもしれません。

しかし、「参る」にはこの「持参」と同様に、謙譲の意味を含まない使い方があります。

例えば、「雨が降って参りました」「夜も更けて参りました」「子どもだちが参りました」などといった使い方です。

この場合、「雨が降って参りました」という言い方は、雨がへりくだっているわけではなく、「雨が降ってきた」という状況を丁寧に述べているだけです。

これらの表現は自分側の行為ではなく、雨、夜、子どもたちはへりくだっていません。つまり、「参る」には物事を丁寧に言い表すという使い方もあるのです。

「持参」も元々は敬意を含んだ言葉ではありましたが、現在は丁寧な意味も失い、普通の言葉としての意味合いしか持たなくなっています。

そのため、「ご持参ください」は、敬語として使っても問題ないのです。

「ご持参ください」の使い方・例文

ご持参ください 使い方 ビジネス メール

ビジネスメールや公式の案内など、さまざまな場面で「ご持参ください」は便利に使われます。ここでは具体例を挙げて、正しい使い方を解説します。

ビジネスメールでの例文

  1. 「当日は履歴書をご持参ください。」
    (採用面接の案内)
  2. 「必要書類をご持参くださいますようお願いいたします。」
    (依頼をより丁寧にした表現)
  3. 「当日、印鑑をご持参いただければ幸いです。」
    (相手への配慮を示す場合)

会話での例文

  1. 「会議資料を忘れずにご持参ください。」
    (職場での依頼)
  2. 「参加証をご持参ください。当日受付で確認いたします。」
    (イベントの案内)

誤用の例(×)

  • 誤用例:「持参ください。」
    • 「ご」をつけない場合、丁寧さが欠けた印象になります。
    • 修正例:「ご持参ください。」

誤用を避けるポイント

「ご持参ください」の後に、条件を補足することでよりスムーズな表現になります。例えば、「忘れずに」や「当日」などを追加することで、依頼の意図が明確になります。

「ご持参ください」の類義語

 

「ご持参ください」に似た意味を持つ表現は多くあります。状況に応じて使い分けることで、より適切なコミュニケーションが可能です。

類義語一覧

  1. 「お持ちください」
    • 「持参」の代わりに「持つ」を使った表現。カジュアルな場面で使いやすい。
    • 例:「傘をお持ちください。」
  2. 「お持ちになってください」
    • 「お持ちください」のやや丁寧な言い回し。
    • 例:「必要な書類をお持ちになってください。」
  3. 「お持ちいただけますと幸いです」
    • より丁寧で柔らかい印象を与える表現。ビジネスメールでよく使われる。
    • 例:「当日は身分証明書をお持ちいただけますと幸いです。」
  4. 「お忘れなくお持ちください」
    • 持参を忘れないよう促す表現。
    • 例:「印鑑をお忘れなくお持ちください。」
  5. 「お持ちいただければ幸いです」
    • 相手への配慮を強調した丁寧な依頼。
    • 例:「必要書類をお持ちいただければ幸いです。」

まとめ

 

「ご持参ください」は、フォーマルな場面で使われる正しい敬語表現です。文化庁の指針でもその適切さが認められており、ビジネスや公式な案内でよく使われます。

状況や相手に応じて正しく使うことで、より丁寧でスムーズなコミュニケーションを図ることができます。「ご持参ください」を適切に使いこなして、敬語表現のスキルを向上させるようにしましょう。