会社更生法 民事再生法 違い 意味 使い分け

「会社更生法」と「民事再生法」は、どちらも経営が行き詰まった企業が再建を目指す際に利用される法律です。しかし、両者は対象となる企業の規模や再建の仕組みに大きな違いがあります。

とくに上場企業の再建ニュースなどで使われることが多く、混同しやすい用語でもあります。本記事では、それぞれの意味を具体例を交えながらわかりやすく解説していきます。

「会社更生法」の意味

 

会社更生法」とは、株式会社の再建を目指すための法律です。経営が破綻した会社の債務を整理し、裁判所の管理下で再生を図る仕組みを定めています。

最大の特徴は、裁判所が強い権限を持って会社を再建する点にあります。債権者(お金を貸している側)や株主の意向よりも、企業全体の存続を優先して再建計画を進めることができます。

主に、大手企業や上場企業など、利害関係者が多い場合に適している制度です。経営陣は一時的に退任し、「管財人」と呼ばれる第三者が経営を引き継ぎます。これにより、公平性や透明性を保ちながら再建を進めることができます。

実際に、2010年に日本航空(JAL)が「会社更生法」の適用を受けたことで話題になりました。この制度によってJALは債務を整理し、経営体制を刷新し、その後、再上場を果たすまでに再建を成功させています。

「会社更生法」の例文

  1. 会社更生法によって管財人が選任され、再建計画が進められた。
  2. 多数の債権者が存在するため、会社更生法による法的整理が最も適していた。
  3. 経営破綻した大手メーカーは、裁判所の監督のもと会社更生法の適用を申請した。
  4. 経営陣の責任を明確にするため、会社更生法に基づき新体制が組まれた。
  5. 会社更生法の手続きの結果、企業は新たな出資を受けて事業を再開した。

「民事再生法」の意味

 

民事再生法」とは、企業や個人が自らの手で再建を目指すための法律です。破産を避けつつ、債務を減額・分割して返済し、経営を立て直すことを目的としています。

最大の特徴は、経営者が引き続き事業を行える点です。会社更生法とは異なり、経営者がそのまま再生計画を主導できるため、中小企業などに多く利用されています。

また、手続きも比較的簡易で、迅速に再建を進められる点が魅力です。債権者の同意を得ながら再生計画を立てるため、企業と債権者が協力して再出発を目指す仕組みになっています。

たとえば、売上不振により資金繰りが悪化した中小企業が、事業を継続しながら債務を整理する場合などに利用されます。

「民事再生法」の例文

  1. 経営者が再生計画を主導し、民事再生法の手続きを進めた。
  2. 手続きが比較的簡単なため、民事再生法は中小企業の再建に広く活用されている。
  3. 民事再生法の適用により、債務の一部を減額して企業は経営を立て直すことができた。
  4. 会社は民事再生法を利用して破産を回避し、取引先との関係を維持した。
  5. 資金繰りに行き詰まった会社は、事業継続のため民事再生法の適用を申請した。

「会社更生法」と「民事再生法」の違い

会社更生法 民事再生法 違い

「会社更生法」と「民事再生法」の違いは、次のように整理することができます。

比較項目 会社更生法 民事再生法
対象 株式会社のみ 会社・個人事業主など幅広い
経営者の地位 管財人に交代 経営者が継続
主導権 裁判所と管財人 経営者自身
利用される企業規模 主に大企業・上場企業 主に中小企業
手続きの複雑さ 複雑で長期化しやすい 簡易で迅速
有名な事例 日本航空(JAL) 民間の中小メーカーなど多数

「会社更生法」と「民事再生法」は、いずれも経営が行き詰まった企業を救済し、再建を目指すための法律ですが、対象や手続きの仕組みに大きな違いがあります。

「会社更生法」は、主に大企業を対象とした再建制度で、裁判所が選任する「更生管財人」が経営を引き継ぎ、事業再建を進めます。

現経営陣は退任し、株主の権利も原則として消滅するため、株式はほぼ無価値となります。2010年に会社更生法を申請した日本航空(JAL)では、当時の株式が上場廃止となり、再建後に新会社として再上場しました。

一方、「民事再生法」は、中小企業や個人事業主も利用できる制度で、経営者がそのまま事業を継続しながら債務整理を進められます。

債権者の多数の同意を得て再生計画を立てる点が特徴で、株主の権利が必ずしも失われるわけではありません。そのため、会社更生法に比べて柔軟で迅速な再建が可能です。

このように、会社更生法は「大企業向け・管財人主導・株主全損型」、民事再生法は「幅広い企業向け・経営者主導・株主残存の可能性あり」という違いがあります。

「会社更生法」と「民事再生法」の使い分け

 

それでは、実際に両者をどのように使い分ければよいのでしょうか?以下に、場面ごとの使い分け方を簡単に示します。

① 大企業や社会的影響の大きい場合 ⇒ 「会社更生法」

大企業の中でも特に債務規模が大きく、取引先や株主など利害関係者が多数に及ぶ場合は、「会社更生法」が選ばれることが多いです。裁判所が選任する更生管財人のもとで厳格に手続きが進むため、公平性と信頼性が高いのが特徴です。

ただし、上場企業であっても、経営陣が事業を継続しながら再建できる「民事再生法」を選択するケースもあります。たとえば、スカイマーク(2015年)は民事再生法によって再建を果たしました。

② 経営者が再建を主導したい場合 ⇒ 「民事再生法」

現経営陣が引き続き会社の経営に関わりながら再建を進めたい場合には、「民事再生法」が適しています。経営権を失わず、事業のノウハウや取引先との関係を保ったまま債務整理を行える点が大きな利点です。

たとえば、地域密着型の企業や、オーナー経営を続けたい会社などでは、経営の継続性を重視して民事再生法を選択するケースが多く見られます。

③ 手続きを迅速に進めたい場合 ⇒ 「民事再生法」

できるだけ早く再建を進めたい場合や、比較的小規模な企業の場合には、「民事再生法」の方が向いています。会社更生法に比べて裁判所の関与が少なく、柔軟な手続きで再生計画を立てやすいからです。

特に、資金繰りが厳しい中で時間との戦いになる場面では、スピード感を重視できる民事再生法が選ばれる傾向があります。短期間で再建の見通しを立て、事業の信頼回復を図ることが可能です。

まとめ

 

本記事では、「会社更生法」と「民事再生法」の違いを解説しました。両者はいずれも企業の再建を目的としていますが、主導権の所在や手続きの厳格さに明確な違いがあります。

主に、大企業の再建では「会社更生法」、中小企業や個人事業主の再建では「民事再生法」が選ばれるのが一般的です。ニュースで破綻や再建の報道を見る際には、この違いを意識すると、企業の経営判断の背景がより深く理解できるでしょう。

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