日常会話やビジネスシーンで、時々耳にする「踵を返す」という表現。普段の会話では何気なく使っているかもしれませんが、その正しい使い方については意外と知られていないことも多いです。
この記事では、「踵を返す」の意味や由来、使い方、例文を交えながら詳しく解説し、最後に類義語もご紹介します。これを読んで、「踵を返す」の使い方をマスターしましょう。
「踵を返す」の意味とは
「踵を返す(きびすをかえす)」とは、ある行動や計画を急にやめて、逆の方向へ進む、または元の場所に戻ることを意味します。
言い換えれば、「途中で方向転換する」「考えを改める」といった意味です。物理的に後ろを向く、または振り返る動作が含まれていることから、急激な変化を強調する言葉です。
日常的に使用するシーンとしては、例えば、予定していた仕事を途中で中断したり、旅行先で急に予定を変更したりする場面が多いです。
例文:
- 「彼は途中で踵を返し、家に戻ることに決めた。」
- 「計画通り進めていたが、突然踵を返して方向を変えた。」
このように、「踵を返す」は急な変更を示す表現としてよく使われます。
「踵を返す」の語源・由来
「踵を返す」の「踝(きびす)」は、足の一部である「かかと」を指します。特に、歩く時や立つ時に地面に触れる後部の部分を意味します。
この「きびす」は、昔は「かかと」を表す言葉として「くびひす」などと呼んでいました。「踵」の由来は、この「くびひす」が次第に変化していき、「くびひす」⇒「きびす」に転じたという説が有力です。
そして、「返す」は、何かを元の位置や状態に戻す動きを意味します。
この事から、「踵を返す」とは、文字通り「かかとを元の方向に向け直す」という動作を表します。この動きが転じて、進んでいる方向を変え、元の場所や逆方向に戻ることを指すようになったと言われています。
また、もう一つの説としては、足首から下を指す「首下(くびし)」が「きびす」に転じたという説もあります。
これらの言葉が次第に変化していき、現在では「踵を返す」という慣用句が広く一般に使われるようになりました。
「踵を返す」の使い方・例文
「踵を返す」という慣用句は、急な決定変更や方向転換を表すために使われます。さまざまな場面で使える表現ですが、特に、計画を変更したり、途中でやめる決断をしたりする時に適しています。
ここでは、具体的な使い方をいくつかの例文で見てみましょう。
使い方1: 急な計画変更
何かを決めた後で急に気が変わり、元の計画を中止したり、方針を変更したりする場面で使われます。
- 例文:
- 「海外に移住する予定だったが、急に踵を返して日本に残ることにした。」
- 「事前に準備していたプロジェクトを途中で中止し、踵を返すことになった。」
使い方2: 行動を中止する
途中で行動をやめる、またはやり直す必要があるときに使います。
- 例文:
- 「旅行の予定を急遽変更し、空港で踵を返して家に帰ることにした。」
- 「会議で提案した案が却下されたため、踵を返して新しい提案を考え始めた。」
使い方3: 急に逆方向へ進む
何かを始めたが、その進行方向を急に変えることを示します。
- 例文:
- 「道に迷ったので、踵を返して元の道に戻ることにした。」
- 「彼は一度その仕事を受けることに決めたが、踵を返して別の仕事を選ぶことにした。」
このように、「踵を返す」は予期せぬ変更や思いがけない行動の転換を示す表現として幅広く使えます。
「踵を返す」の類義語
「踵を返す」に似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。これらの言葉も、方向転換や中止を意味しますが、使い分けることでより適切な表現ができます。
1. 方向転換する
「方向転換する」は、「踵を返す」と同じく、行動や計画の方向を変えることを指しますが、少し堅い言い回しです。ビジネスの場面でよく使われます。
- 例文:
- 「マーケティング戦略を方向転換する必要がある。」
- 「急速な市場の変化に対応するため、チームは即座に方向転換を決断した。」
2. 方針を変える
「方針を変える」は、主に企業や団体が立てた計画を変更する際に使われます。個人の行動の変更よりも、組織的な変更に使われることが多いです。
- 例文:
- 「会社の方針を変えることで、新しいビジネスモデルを導入した。」
- 「消費者のニーズを考慮して、製品開発の方針を変えることにした。」
3. 撤退する
「撤退する」は、ある事業や計画から完全に引き下がる、または途中で放棄するという意味で使われます。「踵を返す」と比べて、より積極的に行動を止めるニュアンスが強いです。
- 例文:
- 「プロジェクトがうまくいかなかったため、最終的に撤退することに決めた。」
- 「海外事業の採算が取れなかったので、最終的に撤退することになった。」
4. やり直す
「やり直す」は、計画や行動を最初から再スタートすることを意味します。方向転換に近い意味を持ちますが、より強い意図を伴います。
- 例文:
- 「プロジェクトは途中でやり直すことになった。」
- 「設計に問題があったため、全ての作業をやり直すことにした。」
まとめ
「踵を返す」は、計画や行動を急に変更することを意味し、特に急な決断や予期せぬ変更を表す際に使われます。この慣用句の由来は、「かかと」を意味する「くびひす」が「きびす」に転じたという説が有力です。
また、「踵を返す」には、方向転換や計画変更を意味する類義語もいくつかありますが、文脈に応じて適切な言葉を選ぶことが重要です。
日常生活でもよく使われるこの言葉を理解し、上手に使いこなすことで、より豊かなコミュニケーションができるようになるでしょう。