「昆布」という言葉は「こんぶ」と「こぶ」の二つの読み方がありますが、それぞれどのような意味があるのでしょうか?日常生活では特に意識せずに使っている言葉でも、調べてみると面白い背景が隠されています。
この記事では、「こんぶ」と「こぶ」の意味や違い、さらにその使い分けについて詳しく解説します。また、似た事例として「サケ」と「シャケ」の違いにも触れ、日常の言葉遣いに役立つ情報をお届けします。
「こんぶ」・「こぶ」の意味
「こんぶ」と「こぶ」は、辞書だと次のように記されています。
昆布(こんぶ)
⇒《アイヌ語から》コンブ科コンブ属の褐藻の総称。主に東北・北海道の沿岸に分布。外見は根・茎・葉に区別され、長さ数十メートルにも達する。マコンブ・リシリコンブなど。こぶ。えびすめ。ひろめ。
昆布(こぶ)
⇒「こんぶ(昆布)」に同じ。
引用元:デジタル大辞泉
辞書によると、「こんぶ」と「こぶ」は同じような意味として載せられています。
「こんぶ」から引くと、詳しい説明が書かれており、「こぶ」から引くと、”「こんぶ」に同じ。「こんぶ」と同じ意味 “などと書かれているものが多いです。
その他には、漢和辞典や百科事典なども調べてみたところ、その多くが「昆布」とあり、「コブ」の方は、”「コブ」とも読む。”などと補足的に書かれているものがほとんどです。
したがって、一般的には「こんぶ」の方が優先的に使われていると言えそうです。意味もどちらも同じですので、普通に使う際には特に使い分けを意識する必要はありません。
「こんぶ」と「こぶ」の違い
ではなぜ「昆布」という言葉は、二つの読み方が存在するのでしょうか?
調べたところ、学名では「コンブ科」と言うため、正式には「こんぶ」が正しい読み方のようです。ところが、さらに詳しく調べてみると、実は昔から二つの呼び方があったことが分かりました。
平安時代の国語辞書『色葉字類抄(いろはじるいしょう)』には「コンフ」、鎌倉時代初期に増補された同じ辞書には「コフ」と書かれています。
ここから、最初は「コンブ」と読んでいて、後から「コブ」という言い方もすぐに出てきたと推測することができます。
「昆布(こんぶ)」の語源にはいくつかの説があり、アイヌ語の「コプ(koppu)」(海草を意味する言葉)が変化して「こんぶ」になったという説が有力です。
北海道が昆布の主な産地であったことも、この説を裏付けています。
この「コプ」が「コンフ」「コフ」などと呼ばれていくうちに、最終的に「コンブ」「コブ」の二つが定着していったと考えられます。
二つの読み方が存在しているのは、その当時の名残が今もあるからだと言えるでしょう。
「こんぶ」と「こぶ」の使い分けは?
「こんぶ」と「こぶ」に明確な使い分けの決まりはありません。ただ、大まかな使い分けの傾向はあるようです。
一般に、「生きている状態やそれに近い状態」は「コンブ」と言い、加工や製品になると「コブ」と使われることが多いです。
例えば、本来の形に近い乾燥させた板状のものは「コンブ」と言い、おぼろ状のものも「おぼろコンブ」と言います。
一方で、「コブ茶」「コブ巻」「コブじめ」などのように、加工や製品になると「コブ」が使われる傾向にあります。
そのため、同じこんぶを使っていても、茶が付くと「こんぶ茶」と言わずに「こぶ茶」と言うことが多いです。
「昆布」の歴史はかなり古いため、大昔などは加工などをせずにそのまま食べるのが普通でした。
そのため、本来の言い方が「生きている状態」の「こんぶ」で、「加工や製品」の「こぶ」は後から出た言い方と言われています。
現在でも「こぶ」は当たり前のように使われていますが、何かの方言というわけなどではないため、今後もずっと使われていくことになりそうです。
「サケ」か「シャケ」か?
同じような例で、「鮭」を「サケ」と「シャケ」のどっちで呼ぶのか?という疑問があります。この二つに関しても、どちらで読んでも問題ありません。
元々は、「サケ」は「サケ」としか読んでいませんでしたが、時が経つにつれて「シャケ」へと呼び名が変わりました。
現在では、「昆布」と同様に、本来の言い方である「サケ」が「生きている状態」であり、「シャケ」は「加工や製品」に対して使われることが多いです。
例えば、川で泳いでいる状態の場合は「サケ」と言いますが、それが加工されると「シャケ弁当」「シャケおにぎり」などのように呼び名が変わります。
これは「昆布」と同様に、時代とともにお弁当やおにぎりなどの加工食品が増えたことが影響していることが分かります。
また、特定の地域でも呼び名が異なり、関東や東海では「シャケ」と呼ぶ人が多いとも言われています。
いずれにせよ、何かはっきりした使い分けの基準があるというわけではないため、語呂や言いやすい方などで自然と使い分けている人も多いようです。
まとめ
「こんぶ」と「こぶ」はどちらも「昆布」を表す言葉で、意味としても同じです。しかし、歴史や地域性、加工状態によって使い分ける必要があります。
一般的には「こんぶ」が標準的な読み方として使われていますが、加工された製品や特定の場面では「こぶ」が使われることが多いです。また、「サケ」と「シャケ」も同様に、加工状況によって使い分けが見られます。
このように、言葉には長い歴史や背景があり、時代とともに変化してきたことがわかります。本記事を参考に、普段の言葉づかいにぜひ役立ててみてください。