「拒絶」と「拒否」は、どちらも日常のさまざまな場面で使われる言葉です。しかし、この二つの語には微妙な違いがあり、使い分けに迷う人も少なくありません。
適切な言葉を選ぶためには、それぞれの語が持つニュアンスや背景を理解しておくことが大切です。本記事ではそれぞれの意味を、具体例を交えてわかりやすく解説していきます。
「拒絶」の意味
「拒絶(きょぜつ)」とは、相手からの頼みごとや申し入れを、強く拒み受け入れないことを指す言葉です。
特徴として、相手との関係性そのものを遠ざけるような、強く断固とした姿勢が含まれる点が挙げられます。心理的に距離を置くイメージがあり、やわらかく断るというよりも、はっきりと線を引き「これ以上は受け入れない」という意思を示すときに使われます。
たとえば、対人関係の場面では「面会を拒絶する」というように、申し出そのものを強く遮断する言い方が一般的です。また医療分野の「拒絶反応」、特許審査に関わる「拒絶査定」など、専門的な場面にも広く用いられています。
「絶」という字には「完全に」「断ち切る」といった意味があり、拒絶が示す強さを裏付ける語源的な要素にもなっています。このように、拒絶は単なる「断り」ではなく、心理的・関係的に距離を置く姿勢が含まれる点に特徴があります。
「拒絶」の例文
- 彼は、突然の面会依頼を強い態度で拒絶した。
- 私たちは、相手企業からの提案を内容ごと拒絶する方針を示した。
- 彼女は、過去の出来事を理由に同僚との関わりを完全に拒絶した。
- その患者は、体内で薬剤に対して拒絶反応を示してしまった。
- 父は、長年離れていた親族との面談を最後まで拒絶した。
いずれも、心理的・関係的に強く断つ場面や、専門的な文脈で使われていることが確認できます。
「拒否」の意味
「拒否(きょひ)」とは、提案・要求・依頼などを受け入れず、事務的あるいは論理的に断ることを意味する言葉です。
「拒絶」と比べると、感情的な距離を置くニュアンスはやや弱く、「条件が合わない」「手続き上認められない」など、理由に基づいて判断する場面でよく使われます。
たとえば、契約内容を変更したいと申し出があった場合に「契約変更を拒否する」と言うように、ビジネスや行政で広く使われます。また、「供述拒否権」「着信拒否」など、日常の設定や法律上の権利にも関連する語です。
「拒」という字は拒絶と同じく「寄せ付けない」という意味がありますが、「否」は「よくない」「受けない」を表すため、拒否は「その条件は受け入れられない」というニュアンスにとどまります。感情よりも判断や条件が重視される点が、拒絶との大きな違いといえます。
「拒否」の例文
- 彼は、不当だと感じた要求を、理由を述べて拒否した。
- 私たちは、契約に合わない提案を検討のうえ拒否した。
- 彼女は、知らない番号からの電話を設定でまとめて拒否した。
- その学生は、体調不良を理由に部活動への参加を一時的に拒否した。
- 父は、条件面が合わない契約内容を明確な理由とともに拒否した。
拒否は感情的な距離ではなく、判断や事情に基づく断りが中心であることが、例文からも分かります。
「拒絶」と「拒否」の違い

「拒絶」と「拒否」の違いは、次のように整理することができます。
| 項目 | 拒絶 | 拒否 |
|---|---|---|
| 意味 | 強く受け入れない、突き放す | 条件や理由により受け入れない |
| ニュアンス | 感情的・断固・関係を断つ | 論理的・事務的・条件的 |
| 使用場面 | 告白・申し出・感情的対立 | 要求・手続き・契約・設定 |
| 例文 | 「彼女は告白を拒絶した」 | 「会社は契約を拒否した」 |
| 影響 | その後の関係に影響しやすい | 手続き的で関係は残りやすい |
「拒絶」と「拒否」はどちらも “受け入れない” という意味を持ちますが、使われる場面やニュアンスに明確な違いがあります。
「拒絶」は、相手からの申し出や関係そのものを強く突き放すイメージの語です。「受け入れる余地はない」という姿勢を示すため、感情的・断固とした印象を伴います。「申し出を拒絶する」「告白を拒絶する」のように、その後の関係にも影響を与える場面で使われることが多い語です。
一方の「拒否」は、物事の提案や要求に対して「受け入れない」と論理的・事務的に判断するニュアンスがあります。感情よりも手続きや条件が理由になることが多く、「要求を拒否する」「契約を拒否する」など、日常的かつビジネス的な文脈で幅広く使われます。また、「拒否設定」「アクセス拒否」など、情報分野でも一般的に登場します。
つまり、「拒絶」はより強く関係そのものを断つ傾向があり、「拒否」は事務的で条件付きの “受け入れない” です。同じ「断る」でも、相手の心情を突き放すか、手続き的に処理するかという違いがあります。
「拒絶」と「拒否」の使い分け
それでは、実際に両者をどのように使い分ければよいのでしょうか?以下に、場面ごとの使い分け方を簡単に示します。
① 対人関係で気持ちを強く断る場合 ⇒ 「拒絶」
対人関係で相手との距離を示したいときは「拒絶」を使います。感情的・心理的な距離を明確に置くニュアンスがあります。
② 契約や依頼など事務的な判断をする場合 ⇒ 「拒否」
条件に合わないなど、判断に基づく断りのときは「拒否」を使います。手続き・ルールに沿った形式的な断りとして使われることが多い語です。
③ 設定・権利・制度に関する断りの場合 ⇒ 「拒否」
着信拒否やプライバシー設定など、機能的な選択として行う断りには「拒否」を使います。法律上の請求の拒否など、公的手続きの場面でも用いられます。
※「拒絶」は強い心理的断りを含むこと、「拒否」は判断としての断りであることを覚えておくと適切に使えます。
まとめ
この記事では、「拒絶」と「拒否」の違いを解説しました。二つの語は似ているようで、感情的な強さや使われる場面に明確な差があります。
「拒絶」は強い拒みを示し、関係を断つニュアンスを持つ一方、「拒否」は条件や事情に基づく事務的な断りです。文章や会話で適切に表現するためにも、それぞれの意味を理解して使い分けていくことが大切です。
