「居住」と「在住」は、どちらも「人がある場所に住むこと」を表す言葉です。しかし、使われる場面やニュアンスには明確な違いがあります。
日常会話では似たように使われますが、法律文書などでは区別が重要になる場合もあります。本記事ではそれぞれの意味を、具体例を使いながらわかりやすく解説していきます。
「居住」の意味
「居住(きょじゅう)」とは、生活の拠点としてある場所に住むことを指す言葉です。
単に「今そこにいる」というよりも、日常生活を営むために「継続的・定常的に住んでいる状態」を意味します。そのため、短期滞在や旅行先のホテルに泊まることなどは「居住」とは言いません。
この言葉は日常会話よりも、行政文書や法律などの公的な場面でよく使われます。たとえば、「居住地」「居住権」「居住者」などのように、制度や権利、契約に関わる文脈で登場します。
また、「住民票がある場所」や「法的に生活の基盤がある場所」を示す表現としても用いられます。つまり、「居住」とは、生活の中心をどこに置いているかを明確に示す公的な言葉だと言えます。
「居住」の例文
- 彼は長年東京に居住しており、通勤にも便利な地域に家を構えている。
- 申請書には、現住所と居住地の両方を正確に記入する必要がある。
- 新しい住民基本台帳制度では、居住実態が確認できるかどうかが重要になる。
- 学生時代、私は寮に居住していたため、大学まで徒歩で通うことができた。
- 外国人が日本に長期的に居住する場合は、在留資格の取得が求められる。
「在住」の意味
「在住(ざいじゅう)」とは、ある地域や国に現在住んでいることを表す言葉です。
「居住」と意味は似ていますが、より日常的で柔らかい表現です。たとえば、「東京在住の写真家」「海外在住の友人」などのように、自己紹介や報道記事、メディアなどでよく使われます。
「在住」は、「どこに生活の拠点を置いているか」よりも、「今その場所に住んでいるという事実」に焦点を当てます。そのため、滞在期間の長さを問わず使うことができ、一時的に暮らしている場合でも自然に使えます。
また、「在住」は形式的・法律的な響きが少なく、親しみやすい印象を与えるのも特徴です。つまり、「居住」が制度的・法的な「定住」を指すのに対し、「在住」は現実的で柔軟な「生活の場」を表す言葉だと言えます。
「在住」の例文
- この番組では、海外在住の日本人アーティストを特集している。
- 地元在住の人々が協力して、地域の清掃活動を行った。
- 私の叔母は、長年フランスに在住していて、現地の文化にも詳しい。
- 現在在住している地域は自然が多く、休日の散歩が楽しみだ。
- 彼女は現在大阪に在住しており、リモートワークで東京の会社に勤務している。
「居住」と「在住」の違い

「居住」と「在住」の違いは、次のように整理することができます。
| 項目 | 居住(きょじゅう) | 在住(ざいじゅう) |
|---|---|---|
| 意味 | 生活の拠点として住むこと | ある場所に住んでいること |
| ニュアンス | 形式的・法律的 | 日常的・現実的 |
| 用途 | 法律文書・行政用語 | 自己紹介・報道など |
| 期間の長さ | 長期的な定住を前提 | 滞在期間を問わない |
| 例文 | 「居住地を変更する」「居住権を持つ」 | 「東京在住の作家」「海外在住の友人」 |
「居住」と「在住」は、どちらも「ある場所に住む」という意味を持つ言葉ですが、使われる場面やニュアンスに違いがあります。
「居住」は、ある場所に生活の拠点を置いて住んでいることを指すやや形式的・法律的な表現です。たとえば、「居住地」「居住者」「居住権」などのように、公的な書類や法令などで使われます。一時的ではなく、比較的長期間にわたり生活していることを前提としています。
一方、「在住」は、今現在、その場所に住んでいるという事実を表す日常的な言葉です。たとえば、「東京在住」「海外在住」など、自己紹介やニュース記事などでよく使われます。「在住」は生活の拠点というよりも「居場所」に焦点を当てた表現であり、滞在期間の長さを必ずしも問わないのが特徴です。
つまり、「居住」は法的・制度的な文脈での「住む」であり、「在住」は日常的・現実的な「住んでいる」という事実を述べる言葉といえます。使い分ける際は、文章の硬さや目的に応じて選ぶと自然です。
「居住」と「在住」の使い分け
それでは、実際に両者をどのように使い分ければよいのでしょうか?以下に、場面ごとの使い分け方を簡単に示します。
① 法律・行政の場面 ⇒ 「居住」
法的な書類、行政手続き、契約書などの場面では「居住」を使います。たとえば、「居住地変更届」「居住者登録」など、制度的に認められた住所を示す場合に適しています。
② 自己紹介・メディア表現の場合 ⇒ 「在住」
プロフィールや記事などで「今住んでいる場所」を表したいときは「在住」を使います。「東京在住のデザイナー」「カナダ在住の日本人」などが自然な用例です。
③ 滞在期間が不明・柔らかく表現したい場合 ⇒ 「在住」
定住か一時的かが不明なとき、または親しみやすく伝えたいときは「在住」を使います。たとえば、インタビュー記事や自己紹介文などでは「在住」の方が一般的です。
※「居住」は「住民票のある住所」や「生活拠点」を明確に示すのに対し、「在住」は「今住んでいる場所」を広く指すことを意識すると良いでしょう。
まとめ
この記事では、「居住」と「在住」の違いを解説しました。「居住」は制度的な生活拠点を示し、「在住」は現実的な現在地を示す言葉です。
使い分けの基本は、公的な文書では「居住」、日常的な表現では「在住」と覚えておくことです。このポイントを意識すれば、場面にふさわしい自然な日本語表現ができるでしょう。
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