まくしあげる たくしあげる 違い 意味 どっち 正しい

「捲し上げる」と「たくしあげる」は、どちらも布などを上に持ち上げる場面で使われる言葉です。しかし、この二つには微妙なニュアンスの違いがあります。

どちらも似ているため、使い方を誤ると不自然に感じられることもあります。本記事ではそれぞれの意味を、具体例を使いながらわかりやすく解説していきます。

「捲し上げる」の意味

 

捲し上げる(まくしあげる)」とは、布や袖などを勢いよく上の方へ持ち上げる動作を指します。

広辞苑では「上の方へ引きあげる。まくりあげる。」と定義されており、「まくる」という動作の延長にある言葉です。

この言葉には「勢い」「力強さ」というニュアンスが含まれます。たとえば、仕事を始める前に袖を勢いよく上げるような場面で使われます。「言葉をまくし立てる」という表現もここから派生したものです。

また、「捲し上げる」は少し荒っぽい、エネルギッシュな印象を与えるのも特徴です。静かな動作よりも、感情や力がこもった動きを表したいときに使うと自然です。

「捲し上げる」の例文

  1. 彼は、作業を始める前に袖を捲し上げて気合を入れた。
  2. 店員は、長靴の上までズボンを捲し上げて水仕事に取りかかった。
  3. 彼女は、ぬれた裾を捲し上げて階段を上った。
  4. 漁師は、波しぶきを避けるためズボンを捲し上げた
  5. 子どもは、泥だらけの裾を捲し上げて歩いた。

「たくしあげる」の意味

 

たくしあげる」とは、服の袖や裾などを手で整えながら上に持ち上げる動作を指します。

広辞苑では「袖や裾などを手でまくり上げる」と定義され、日常的で柔らかい印象の言葉です。

「捲し上げる」と異なり、勢いというよりも身なりを整える、準備をするといった丁寧な動作を表します。たとえば、水仕事や料理の前に袖を上げる場面では、「たくしあげる」を使う方が自然です。

また、「たくしあげる」はあくまで衣類に関する動作を指す言葉です。そのため、「井戸水をバケツでたくしあげる」といった使い方は誤用で、この場合は「くみ上げる」や「引き上げる」を使うのが正しい表現です。

「たくしあげる」の例文

  1. 母は、炊事の前に袖をたくしあげた
  2. 彼は、裾をたくしあげて泥を払った。
  3. 子どもは、川で遊ぶためスカートをたくしあげた
  4. 看護師は、作業前に制服の袖をたくしあげた
  5. 学生は、実験の準備をしながら白衣の袖をたくしあげた

「捲し上げる」と「たくしあげる」の違い

まくしあげる たくしあげる 違い

「捲し上げる」と「たくしあげる」の違いは、次のように整理することができます。

比較項目 「捲し上げる(まくしあげる)」 「たくしあげる」
意味 布などを勢いよく上にまく 袖や裾を整えて上に持ち上げる
ニュアンス 力強い・勢いがある・荒っぽい 丁寧・落ち着いた・日常的
使用例 袖を捲し上げて仕事にかかる 水仕事の前に袖をたくしあげる
使用場面 強調表現として使う 実際の動作でよく使う
漢字表記 「捲し上げる」または「まくし上げる」 通常はひらがなで表記する

「捲し上げる」は勢いよく、力強く布を上げる様子を表すのに対し、「たくしあげる」は落ち着いて丁寧に上げる場面に適しています。どちらも衣服に使えますが、使う場面の雰囲気によって自然さが変わります。

また、語感の違いも重要です。「捲し上げる」は「まくる」から派生しており、勢いや感情の高まりを伴うことが多い言葉です。

一方で「たくしあげる」は日常的で、女性的・やわらかい印象を与える表現といえます。そのため、「袖を捲し上げて勝負に挑む」といった力強い文脈では前者が自然ですが、「袖をたくしあげて洗い物をする」といった場面では後者が適切です。

つまり、「捲し上げる」は勢い・力強さ、「たくしあげる」は丁寧さ・日常性がポイントです。文脈に応じて使い分けると、表現のニュアンスが豊かになります。

「捲し上げる」と「たくしあげる」の使い分け

 

それでは、実際に両者をどのように使い分ければよいのでしょうか?以下に、場面ごとの使い分け方を簡単に示します。

① 力を込めて作業に取りかかる場合 ⇒ 「捲し上げる」

力強く何かを始めるときは、「捲し上げる」を使います。「袖を捲し上げて掃除に取りかかる」など、行動や感情に勢いがある場面に向いています。「やるぞ」という気持ちを表したいときに適した表現です。

② 丁寧に服装を整える場合 ⇒ 「たくしあげる」

落ち着いた動作で袖や裾を上げるときは、「たくしあげる」を使います。水仕事や料理、実験など、実用的で日常的な動作を表すのに向いています。やさしく・自然な印象を与えたいときに最も合う表現です。

③ 比喩的に勢いを表す場合 ⇒ 「まくし立てる(捲し立てる)」

両者は、あくまで衣服などを持ち上げる動作を表す言葉であり、比喩的な勢いを表すときには使いません。そのような場合は「まくし立てる(捲し立てる)」を使います。たとえば、「彼は怒りながら言葉をまくし立てた」のように、次々と勢いよく話す様子を表すときに使います。

まとめ

 

この記事では、「捲し上げる」と「たくしあげる」の違いを解説しました。「捲し上げる」は勢い・力強さを、「たくしあげる」は落ち着き・丁寧さを表す点で異なります。

言葉の意味自体は似ていますが、使われる場面に差があるため、状況に応じた使い分けが大切です。動作に勢いを出したいときは「捲し上げる」、日常的で自然な動作を表したいときは「たくしあげる」を選ぶとよいでしょう。