
ビジネス文書や契約書などでは、「または」や「もしくは」という表現がよく使われます。しかし、実際にどちらを使えばよいのか迷うことも少なくありません。
さらに、公的な文章では「又は」や「若しくは」と漢字で書かれる場合もあります。本記事では、日常的な使い分けから、法律や公用文における正式なルールまでをわかりやすく解説します。
「または」と「もしくは」の意味の違い
「または」と「もしくは」は、いずれも「AかBか」という選択を示す接続詞です。意味はほぼ同じですが、語感や使われる場面に違いがあります。
「または」は、最も一般的で自然な表現で、日常会話や案内文など幅広く使われます。柔らかく読みやすい印象を与えるため、カジュアルな場面にも適しています。
「または」の例文
- 「電車またはバスでお越しください。」
- 「ラーメンまたはうどんを食べたい。」
- 「野球またはサッカーのいずれかを選択すること」
一方の「もしくは」は、「または」と意味はほぼ同じですが、やや丁寧でかたい響きを持つ表記です。主に、説明書、契約条件、役所の通知など、フォーマルな文章で好まれます。
「もしくは」の例文
- 「郵便もしくはメールでご連絡ください。」
- 「現金もしくはクレジットカードでお支払いください。」
- 「学会発表もしくは論文投稿のいずれかを選択できます。」
このように、「または」は日常的で口語的な場面に向き、「もしくは」は書面や公式の場面に向いている表現です。
「又は」と「若しくは」の意味の違い
「または」と「もしくは」は、漢字表記にするとそれぞれ以下のようになります。
ひらがな | 漢字表記 |
---|---|
または | 又は |
もしくは | 若しくは |
「又は」は常用漢字で、契約書や法律文などで広く使われます。読みやすく、現代の文書でも比較的よく見られます。
一方、「若しくは」は古風で格式の高い表現です。日常文書ではほとんど使われず、法令や契約文など専門的で厳密な文章に限られます。
意味はどちらも同じですが、「若しくは」のほうがやや改まった響きを持つため、重要な案内や規約文などではこちらが選ばれることもあります。ただし、多くの場合は「又は」を使っても問題ありません。
なお、公用文作成基準では原則ひらがな表記が推奨されていますが、法律文や契約書では文章構造を明確にする目的で漢字表記が用いられることがあります。
法律文における違いや使い分けは?
法律や契約文では、「又は」と「若しくは」は単なる言い換えではなく、文章の論理構造を明確にするためのルールとして使い分けられます。条文や契約書では一字一句が解釈に影響するため、選択肢の階層を正確に示すことが重要です。
基本ルールとして、同じ階層に並ぶ選択肢は「又は」を使います。たとえば、「懲戒処分又は免職」という表現は、懲戒処分と免職が同列であることを示しています。
一方、ある選択肢の中でさらに細かく分ける場合は「若しくは」を使います。たとえば、「懲戒処分又は減給若しくは免職」とすると、まず「懲戒処分」と「その他の処分」を「又は」で区切り、その他の処分の中を「減給」と「免職」に分けるために「若しくは」を使用しています。
この考え方は、民法第111条にも反映されています。条文では「代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと」と規定され、上位の選択肢には「又は」、下位の選択肢には「若しくは」を使っています。
すべてを「又は」にすると、どこまでが同じ階層か分かりにくくなり、誤読や解釈の揺れが生じます。法律文書では、このような階層的区切りを正確に表すことが求められるのです。
公用文における違いや使い分けは?
公用文では、読み手にとって分かりやすく、誤解のない文章にすることが重要視されます。そのため、「または」と「もしくは」の使い方も、法律文ほど厳密な階層構造を意識する必要はありません。
一般的には、「または」をひらがなで統一することが推奨されています。これは、ひらがな表記のほうが視覚的に柔らかく読みやすく、文章全体の平易さを保てるためです。
たとえば、行政通知や案内文では「郵便またはメールで提出してください」と記載することで、選択肢を明確に示しつつ、余計な漢字表記で文章が硬くなるのを避けられます。「もしくは」や「若しくは」を使う場合もありますが、基本的には「または」で統一する方が公用文として自然です。
また、公用文では法律文のような細かい階層区別を行う必要がないため、複数の選択肢があってもすべて「または」でつなげることが多いです。
つまり、公用文における「または」と「もしくは」の使い分けは、読みやすさと平易さを優先し、「または」を基本として用いることが原則となります。
法律文のような厳密な階層区別や漢字の使い分けは求められず、誰が読んでも理解しやすい文章を作ることが最優先です。こうした配慮により、行政文書や案内文は誤解なく、スムーズに情報を伝えることができます。
まとめ
この記事では、「または」と「もしくは」の違いを解説しました。内容を表にまとめると、以下のようになります。
項目 | または(又は) | もしくは(若しくは) |
---|---|---|
意味 | 選択を示す「AかBか」 | 選択を示す「AかBか」 |
語感 | 自然・柔らかい | 丁寧・かたい |
日常文・口語 | ○ 例:電車またはバスで行く | × あまり使わない |
ビジネス文・案内文 | ○ 例:郵便またはメールで提出 | △ 例:郵便もしくはメールで提出(硬め) |
法律文・契約書 | ○ 上位階層で使用 | ○ 下位階層で使用(階層区別用) |
公用文 | ○ 基本はひらがなで統一 | △ 必要に応じて使うが基本は「または」 |
「または」と「もしくは」は基本的に同じ意味を持ちますが、日常文・ビジネス文・法律文・公用文など、場面や形式によって使い分けることが重要です。読みやすさや文章の階層構造を意識して、適切に選択することで、誤解なく情報を伝えることができるでしょう。