
「または」という言葉は、漢字で「又は」と書く場合と「または」と仮名で書く場合があります。普段の文章では仮名で書かれることが多いですが、「又は」という漢字表記を目にする機会もあります。
なぜこのような違いがあるのか気になるという人も多いと思われます。そこで本記事では、「又は」と「または」の使い分けについて、詳しく解説していきます。
「又は」と「または」の意味の違い
「又は」と「または」は、どちらも複数の選択肢を提示し、そのうちのどれかを選ぶための接続詞です。
たとえば、
- 「電話またはメールでご連絡ください。」
- 「ペンまたは鉛筆で記入してください。」
- 「バス、またはタクシーでお越しください。」
このように使われ、意味に違いはありません。
しかし、表記については「または」が一般的で、「又は」は公用文で使われるというルールがあります。では、なぜそれぞれの表記に違いが生まれるのかその理由の部分を説明していきたいと思います。
「または」が一般的に使われる理由
日常的な文章では、「または」と仮名で書くのが一般的です。
これは、かつて国が定めた「当用漢字表(使用上の注意事項)」というルールが影響しています。
【当用漢字表(昭和21年)より】
昭和21年11月5日
当用漢字表
使用上の注意事項
「代名詞・副詞・接続詞・感動詞・助動詞・助詞は、なるべくかな書きにする。」
出典:昭和21年11月5日「当用漢字表(使用上の注意事項)」
この方針に従い、「または」のような接続詞は、原則としてひらがな表記が推奨されるようになりました。
例えば、以下のような言葉も同様に仮名で書かれることが多いです。
- 或いは → あるいは
- 尚 → なお
- 従って → したがって
こうしたルールが長年続いたことで、現在でも「または」と仮名で書くことが一般的になっています。
ただし、「当用漢字表」はすでに廃止され、現在は「常用漢字表」が基準になっています。そのため、絶対に「または」と書かなくてはいけないわけではなく、漢字を使っても誤りではありません。
公用文では「又は」を使う理由
一方、公的な文書では「又は」という漢字表記が正式なルールとなっています。
これは、平成22年(2010年)に内閣訓令で定められた「公用文における漢字使用等について」によるものです。
【公用文における漢字使用のルール】
公用文における漢字使用等について
1 漢字使用について
(2) 「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表すに当たっては,次の事項に留意する。
オ 次のような接続詞は,原則として,仮名で書く。
例 おって かつ したがって ただし ついては ところが ところで また ゆえに
ただし,次の4語は,原則として,漢字で書く。
及び 並びに 又は 若しくは
出典:平成22年11⽉30⽇ 内閣訓令第1号「公⽤⽂における漢字使⽤等について」
そのため、官公庁が作成する法律や公的な文書では、「又は」と漢字で表記する必要があります。
たとえば、法律文書では以下のように書かれます。
「この契約は、当事者双方の合意により、変更又は解除することができる。」
このように、公的な文章では「又は」と書くことで、統一された書式を維持し、明確な表記を心がけているのです。
「又は」と「または」の使い分けまとめ
【普段の文章では?】
✔ ひらがな表記の「または」が一般的
✔ 公用文以外では基本的に「または」と書く
【公用文では?】
✔ 「又は」と漢字表記するのが正式なルール
✔ 法律や公的な書類では「又は」と書く必要がある
「または(又は)」の辞書的な意味と使い方
辞書では、「または(又は)」について以下のように説明されています。
【または(又は)】
(接続詞)それでなければ。あるいは。例:「父または母が出席します。」
【使い方の例】
- 「紅茶、またはコーヒーをお選びください。」
- 「書類はメールまたは郵送で提出してください。」
- 「水性ペンまたは鉛筆で書いてください。」
どの例でも、「AまたはB」という形で、いずれかを選択できる状況を示しています。
「又は・または」に似た表現との違い
「又は・または」と似た意味を持つ接続詞には、以下のようなものがあります。
✔ 「もしくは」
「または」とほぼ同じ意味で使えますが、やや口語的な表現になります。
✔ 「あるいは」
「または」よりもやや格式ばった印象があり、文語的なニュアンスが強いです。
✔ 「及び」
「または」は「AかBのどちらか」を示すのに対し、「及び」は「AとBの両方」を意味します。
まとめ
今回は、「又は」と「または」の違いについて解説しました。内容をまとめると、以下のようになります。
- 普段の文章では「または」を使うのが一般的。
- 公用文や法律文書では「又は」と漢字表記するのが必須。
- 「または」と「もしくは」はほぼ同じ意味で使えるが、「あるいは」はやや文語的。
このように、場面によって使い分けることで、適切な表現ができるようになります。「又は」と「または」を正しく使い分け、より読みやすく伝わる文章を心がけましょう。