「任用」と「登用」は、どちらも人事や役職に関わる場面で使われる言葉です。しかし、言葉の意味は明確に異なるため、正しく理解しておかないと混同してしまうことがあります。
特に会社組織においては、それぞれの言葉が持つ意味の違いが明確に現れます。本記事ではそれぞれの違いを、具体例を使いながらわかりやすく解説していきます。
「任用」の意味
「任用(にんよう)」とは、特定の人に職務や役職を正式に与えることを指します。
特に公務員制度においては、一定の条件を満たした人を試験や選考を経て職務に就かせることを意味します。
重要なのは、客観的な基準や手続きに従って行われる点です。たとえば、国家公務員や地方公務員の採用試験に合格し、正式に役所の職員として配置されることは「任用」と表現されます。
これは単なる就職ではなく、法律や制度に基づき職務を与える行為であり、公的・形式的な性格を持ちます。
一方で、一般企業では「任用」という言葉は使われません。企業では通常、「採用」「登用」「任命」「配置」といった表現が使われます。
このように、「任用」は公務員制度において用いられる言葉であり、法律や組織のルールに基づき人に職務や役割を与えることを意味します。
「任用」の例文
- 彼は公務員試験に合格し、市役所の職員として任用された。
- 新しい学部長が正式に任用され、来月から業務を開始する予定だ。
- 災害対応のため、臨時に担当者を任用することが決定された。
- 職員は試験を経て任用されるため、一定の公平性が確保されている。
- 教育委員会は、新しい校長を任用する手続きを進めている。
「登用」の意味
「登用(とうよう)」とは、特定の人材の能力を評価して、新しい地位や役職に引き上げることを指します。
公的な手続きや法律に基づく厳密さよりも、その人の働きぶりや信頼性に基づいて抜擢する意味合いが強いのが特徴です。
たとえば、若手社員を課長に昇進させる場合や、専門知識を持つ人を新しいプロジェクトの責任者にする場合に「登用」が使われます。ここでは、「既存の人材をより高いポストへ引き上げる」というニュアンスが含まれます。
また、「登用」は必ずしも社長や役員などの高い役職というわけではなく、準備された役職への昇格や待遇の変更にも用いられます。
たとえば、「契約社員を正社員に登用する」といった表現も可能です。この場合、「採用」と言っても意味は通じますが、「登用」とすることで「すでに組織に所属している人を、より正式で上位の立場に引き上げる」というニュアンスが明確になります。
このように、「登用」は制度や手続きというよりも、能力や信頼関係に基づいた人事に用いられる言葉といえます。
「登用」の例文
- 社長は、成果を上げた若手社員を課長に登用することを決めた。
- 優秀な人材を積極的に登用することで、会社の成長が期待できる。
- 契約社員の一部を、正社員に登用する制度が導入された。
- 社長は、専門知識を持つ社員を新しい事業部の責任者に登用した。
- 長年の経験を評価され、彼は管理職に登用されることになった。
「任用」と「登用」の違い

「任用」と「登用」の違いは、次のように整理することができます。
| 項目 | 任用 | 登用 |
|---|---|---|
| 主な意味 | 法律や制度に基づき職務につけること | 能力を評価して地位や役職に引き上げること |
| 用途 | 公務員制度や法的文脈で多用 | 企業や組織、一般的なビジネスシーンで多用 |
| 強調点 | 制度的・法的な手続きの正当性 | 人材の能力や将来性の評価 |
| ニュアンス | 正式な配置、厳密な手続き | 抜擢、人材登用、人間的評価に基づく任命 |
「任用」は、法律や制度に基づいて公務員などを職務に就かせることを指します。特に公務員制度において用いられ、試験や選考を経て、一定の資格を有する者を正式に職務に配置する行為を意味します。
つまり「任用」は、客観的な基準に基づき、公的に権限を持つ人材を適切なポストにつけることに重点があります。したがって、一般の企業での採用とは異なり、法的な裏付けや厳密な手続きが伴う点が特徴です。
一方の「登用」は、人物の能力や適性を評価し、重要な地位や役割に引き上げることを意味します。こちらは必ずしも法律上の用語ではなく、日常的な場面やビジネスシーンでも広く使われます。
たとえば「若手社員を管理職に登用する」「専門知識を持つ人材を登用する」といった形で、評価や信頼に基づいて抜擢するニュアンスが強い表現です。つまり「登用」は、制度的というよりも、人材の能力や将来性に注目して行われる言葉だといえます。
両者の違いをまとめると、「任用」は制度や法律に基づく配置を表し、「登用」は能力や評価に基づく抜擢を表します。
「任用」と「登用」の使い分け
それでは、実際に両者をどのように使い分ければよいのでしょうか?以下に、場面ごとの使い分け方を簡単に示します。
① 公務員制度の場合 ⇒ 「任用」
公務員試験に合格し、正式に職務につけるときは「任用」を使います。法律や制度に基づいた厳密な手続きが重視されるためです。
② 企業の昇進の場合 ⇒ 「登用」
企業の中で、若手社員を課長にする、契約社員を正社員にするなどのケースでは「登用」を使います。能力や適性を評価して人材を引き上げる場面に適しています。
③ 一時的な役割の付与の場合 ⇒ 「任用」
臨時の担当者を決めたり、一時的に代理の職務を与えるときには「任用」を使います。これは正式な採用とは異なりますが、役目を与えるという意味で適切です。
まとめ
この記事では、「任用」と「登用」の違いを解説しました。
「任用」は法律や制度に基づき人に役職や職務を与えることを意味し、公務員制度など公的な文脈でよく使われます。一方の「登用」は、能力や適性を評価して人材を新しい役職に引き上げることであり、企業やビジネスの場面で多く用いられます。
違いを理解して使い分けることで、文章表現に正確さと説得力を持たせることができます。
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