「おそれ」と「恐れ」の違いは?公用文での使い分けを解説

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日常の文章では「おそれ」も「恐れ」も同じ読み方をし、違和感なく使われています。しかし、公用文を書く場面になると、この2つをどのように書き分けるべきか迷う人は少なくありません。

特に行政文書やビジネス報告では、誤った表記を用いると意味が変わったり、不適切な表現と判断されることもあります。本記事では、公用文における原則を踏まえながら、「おそれ」と「恐れ」の正しい使い分けをわかりやすく解説していきます。

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目次

公用文で表記を決める基準は「常用漢字表」

公用文の漢字使用には、はっきりとした基準があります。根拠となるのは次の2つのルールです。

常用漢字表(内閣告示)
公用文における漢字使用等について(内閣訓令)

このうち、「公用文における漢字使用等について」では、次の点を明確に定めています。

  • 公用文で使う漢字は常用漢字とする
  • 読みが示されていない語は公用文では使わない

つまり、常用漢字に掲載されていない語や、掲載されていても読みが記載されない場合は、公用文では使用できないということです。

また、公用文には「全国で統一した表記を使うことで誤解を防ぐ」という目的もあります。文章を書く人ごとに表記が異なると、読み手が迷ったり、法令解釈に差が生じる恐れがあるためです。

一般に、常用漢字の場合は「目安」とされていますが、公用文の場合は事実上の原則です。新聞、雑誌、マスコミでは表記が異なることもありますが、公用文では必ずこの基準に従います。


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「おそれ」と「恐れ」の違い・使い分け

「おそれ」と「恐れ」は、全く同じ使い方をするわけではありません。表記の違いは、意味の使い分けに直結します。基本的な使い分けのルールは以下の通りです。

基本ルール

用法表記意味
懸念・心配おそれ影響・事態発生の可能性
恐怖・怖がる気持ち恐れ感情としての恐怖

これを整理すると、次のように判断できます。

  • 被害や問題が起こる可能性を述べるなら「おそれ」
  • 怖い・怖がるという感情を表すなら「恐れ」

このルールを押さえておけば、普段の文章はもちろん、公用文においても迷うことはなくなります。実際の文章で比較してみましょう。

「おそれ」(懸念)の例文

  • 接近中の台風により、交通機関が大きく乱れるおそれがある。
  • 個人情報が漏えいするおそれがあるため、対策が急がれる。
  • 地震に備えない場合、建物が倒壊するおそれがある。
  • 大雨が続けば、河川が氾濫するおそれがあるので注意が必要だ。
  • ネット上で偽の情報が広まるおそれがあるため、事実確認が必要だ。

「恐れ」(恐怖)の例文

  • 暗闇を歩くことに強い恐れを抱いた。
  • 彼は高所への恐れを克服するため訓練を続けた。
  • 突然の爆発音が、人々の恐れを一気にかき立てた。
  • 彼女は人前で話すことに強い恐れを感じ、うまく声が出なかった。
  • 雷が鳴り始めると、子どもたちは恐れから家の中に駆け込んだ。

どちらも見た目は似ていますが、意味や使い方は明確に異なることが分かるかと思います。


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「おそれ」がひらがなになる理由と注意点

本来、「懸念」を意味するおそれは「虞」と書き表すことが可能です。しかし、公用文では「虞」は使用することはできません

理由は、次のとおりです。

  • 「虞」は常用漢字表に掲載されているが、「おそれ」という読みが掲示されていないため。
  • 「虞」は漢字使用の基準上、使用できない語として扱われるため。

したがって、公用文では懸念を意味する「おそれ」はすべてひらがなで書くということが決められています。

一方、マスコミでは「恐れ」を懸念にも用いることがありますが、公用文では認められません。

過去には法令文で「虞犯少年(犯罪を犯すおそれがある少年のこと)」のような語が見られましたが、現在ではほぼ使われず、古い資料に残る程度です。現在の行政文章や役所の広報資料では、ほぼ例外なく「おそれ」に統一されています。


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公用文で必ずひらがなにする語の一覧

「おそれ」と同様、常用漢字表の運用上ひらがなが原則となる語があります。以下の語は公用文ではひらがなに統一されます。

  • かつ(且つ)
  • したがって(従って)
  • ほか(外)
  • また(又)
  • よる(因る)
  • かかわらず(拘わらず)
  • この(此)
  • これ(之)
  • その(其)
  • たばこ(煙草)
  • ため(為)
  • もって(以て)
  • ら・など(等)

これらはいずれも、

  • 漢字が本来の意味で使われていない
  • 読み手の理解を邪魔する可能性がある
  • 必要性を伴わない漢字使用である

と判断された語です。

とくに「等」は常用漢字が「トウ」「ひとしい」しか認めていないため、「など」「ら」と読む場合は必ずひらがなになります。


まとめ:公用文では意味で書き分けるのが原則

本記事の内容をまとめると、以下のようになります。

  • 公用文では常用漢字表が原則
  • 「おそれ」と「恐れ」は意味で使い分け
  • 「懸念」の意味→「おそれ」(ひらがな)
  • 「恐怖」の意味→「恐れ」(漢字)
  • 「虞」は使わない
  • 語によってはひらがなが定められている

とくに行政文書や報告書では誤った表記が誤解を招くこともあります。迷ったときは、「意味で選ぶこと」と、「常用漢字に従う」という原則を押さえておくことが確実です。読み手に負担をかけず、統一された表記を使うことが、公用文を書く上では何より重要なポイントになります。

この記事を書いた人

大学卒業後、出版会社へと就職。退職後はフリーライターとして独立し、現在は言葉の意味や違いなど、日々の生活やビジネスに役立つ情報を発信しています。皆さんに「なるほど」と思ってもらえる内容をお届けすることを心がけています。

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