質的 量的 違い 意味 分析 評価 研究

学問やビジネスの分野では「質的」と「量的」という二つの言葉がよく使われます。これらは一見似ているようでいて、実はまったく異なる特徴を持っています。

研究、教育など幅広い分野で重要な役割を果たすため、その違いを理解しておくことは大切です。本記事では、それぞれの意味を具体例を交えながら、わかりやすく解説していきます。

「質的」の意味

 

質的(Qualitative)」とは、物事の性質や内容といった、数字では表しにくい特徴に注目する視点を指します。

人の感情や行動の背景、文章表現の良さ、会話の雰囲気など、数値化が難しい情報を対象とするのが「質的」な見方です。

たとえば、研究分野では「質的研究」と呼ばれる方法があり、観察やインタビューを通じて人々の考えや行動の理由を探ります。

また、教育の場では、テストの点数だけでなく、生徒の発言の深さや創造的な表現力を評価することが「質的評価」にあたります。

ビジネスにおいても、顧客満足度を数値アンケートだけでなく、自由記述の意見から読み取るのが典型的な「質的データ」の活用です。

このように、「質的」は、数値では捉えきれない大切な情報を扱い、より深い理解や細やかな違いを把握するために役立ちます。

ただし、評価者の主観が入りやすく、基準を統一しにくいという側面もある点に注意が必要です。

「質的」の例文

  1. 顧客からの感想をもとに、サービスの質的評価を行った。
  2. 面接の内容を質的に分析し、求職者の価値観を読み取った。
  3. 文章の表現力について、質的な視点で判断した。
  4. アンケートの自由記述欄から、質的データを抽出した。
  5. 教室内の雰囲気を観察し、質的に記録した。

「量的」の意味

 

量的(Quantitative)」とは、物事を数値やデータに基づいて測定・比較する視点を指します。人数、割合、売上額、テストの点数など、客観的な数字で表せる情報を扱うのが特徴です。

たとえば、研究分野では「量的研究」と呼ばれる方法があり、統計を用いてデータを分析します。また、教育の場ではテストの点数や正答率によって学力を比較することが「量的評価」にあたります。

ビジネスでも、顧客数や売上推移、成約率といった数値を用いて状況を把握するのが一般的です。さらに経済学では、金融緩和の効果を物価上昇率やGDPの増加率といった数値データで判断するのも「量的」な分析です。

このように「量的」は、客観的で比較がしやすく、全体像をつかむのに適しています。ただし、数値化の過程で人の感情や背景といった「質的要素」が見えにくくなるため、単独では限界がある点に注意が必要です。

「量的」の例文

  1.  テストの点数を使い、学力を量的に比較した。
  2. 売上の変化を量的データとして記録する。
  3. 参加者の人数を量的な基準で評価した。
  4. 満足度を数値化し、量的に測定した。
  5. 日銀によって量的緩和が行われた。

「質的」と「量的」の違い

質的 量的 違い

「質的」と「量的」の違いは、次のように整理することができます。

観点 質的(Qualitative) 量的(Quantitative)
意味 性質や内容など、数字以外で表すこと 数や量、データなど数値で表すこと
インタビュー結果、文章の良し悪し テストの点数、売上額、人数、割合
メリット 深い理解・細かな違いがわかる 客観的に比較しやすい・統計処理が可能
デメリット 主観が入りやすく統一基準が作りにくい 背景や理由など質的な情報が失われやすい

「質的」は、性質や内容など、数字では表しにくい特徴に注目します。たとえば、顧客の満足度をインタビュー内容から探る、作文を文章表現の良さで評価する場合などが当てはまります。

一方、「量的」は数値やデータを使って客観的に測定・比較する方法です。テストの点数、売上金額、人数や割合など、明確な数値に基づく評価がこれにあたります。

質的な分析は深い理解や個別の違いを把握するのに適していますが、主観が入りやすく比較が難しいという特徴があります。

対して、量的な分析は客観性が高く、多くの事例を一律に比較できますが、背景や理由などの細かな事情を捉えにくいこともあります。

どちらが優れているというものではなく、それぞれが補い合う関係になっている点が重要です。

「質的」と「量的」の使い分け

 

それでは、実際に両者をどのように使い分ければよいのでしょうか?以下に、場面ごとの使い分け方を簡単に示します。

① 人の気持ちや背景を理解したい場合 ⇒ 「質的」

顧客がなぜ商品を選んだのか、生徒がなぜその解答をしたのかといった理由や背景を知りたいときは「質的」を使います。この場合、自由記述の意見やインタビューを通じて相手の考え方を丁寧に探る方法が効果的です。

② 大人数を比較したい場合 ⇒ 「量的」

学校全体の学力の傾向や、商品の売上推移など、数値で比較可能な場面では「量的」を使います。統計処理が可能なため、全体像を捉えやすくなります。

③ 深く理解しつつ全体も把握したい場合 ⇒ 「質的」と「量的」

ある商品の売上推移を量的に把握したうえで、購入者の意見を質的に分析すれば、数値だけでは見えない改善点が浮かび上がります。このように、両方を補完的に組み合わせて使うことも効果的です。

※ポイントとして、「質的」を感覚的・主観的と捉えすぎないこと、「量的」を万能だと思い込みすぎないことが大切です。

まとめ

 

この記事では、「質的」と「量的」の違いを解説しました。

「質的」は性質や内容に注目し、深い理解を得るために有効です。対して、「量的」は数値やデータをもとに客観的な比較を行うのに適しています。

どちらか一方だけでは見落としが生じることもあるため、時には両者の組み合わせをすることも重要です。