ため 為 使い分け 違い 公用文 どっち 正しい

日本語には、同じ読み方でも使い方が異なる言葉があります。「ため」と「為」もその一例です。どちらも「目的」や「原因」を示す言葉ですが、使い方が異なることをご存じでしょうか?

特に、公用文ではどちらを使うべきか迷うことがあるかもしれません。本記事では、「ため」と「為」の違いや使い分けのポイントを詳しく解説します。

「ため」の意味

 

ため」は、目的・理由・原因・利益などを表す言葉です。主に、日常会話や一般的な文章で広く使われます。

主な使い方は以下のとおりです。

  1. 目的を示す:「健康のために毎日運動する」
  2. 原因・理由を示す:「大雨のため、試合が中止になった」
  3. 利益を示す:「家族のために一生懸命働く」
  4. 結果を示す:「努力したため、試験に合格した」
  5. 条件を示す:「体調が悪いため、早退した」

「ため」の例文

  1. 旅行のために、早めに新幹線のチケットを予約した。
  2. 風邪を引いたため、学校を休んだ。
  3. 子どものために、安全な家具を選ぶ。
  4. 雪のために、道路が通行止めになった。
  5. より良い未来のために、環境問題について考える。

このように、「ため」は、フォーマルな文章からカジュアルな会話まで幅広く使われます。

「為」の意味

 

一方、「」は「ため」の漢字表記ですが、現代では日常的に使われることはほとんどありません。主に、ビジネス文書や法律文書など、格式ばった場面で使用されることが多いです。

「為」の意味は「ため」とほぼ同じですが、以下のような場面で使われることが一般的です。

  1. 公的な場面:「法律のに制定された規則」
  2. 歴史的な文章:「国のに戦った英雄」
  3. 文語的な表現:「他人のにならぬ行為」

「為」の例文

  1. 国民のの法律が制定された。
  2. 彼は会社のに長年貢献してきた。
  3. 文化の発展のに、芸術活動を支援する。
  4. 社会のになる仕事をしたいと考えている。
  5. 医学の進歩のに、多くの研究者が努力している。

ただし、現代の一般的な文章では、硬すぎる印象を与えるため、「ため」とひらがなで書くのが一般的です。

「ため」と「為」の違い

 
「ため」と「為」の違いは、以下のように整理することができます。

項目 ため(ひらがな) 為(漢字)
使用頻度 高い 低い
使われる場面 日常会話、一般的な文章 法律文、古典的表現
印象 柔らかく、親しみやすい 硬い、格式がある
「健康のために運動する」 「国の為に尽くす」

「ため」はひらがな表記で、日常的な文章や会話でよく使われます。「〜のために」や「〜のため」などの形で、「目的」や「原因・理由」を示すのが一般的です。

例えば、「健康のために運動する」では「目的」を、「雨のため、試合が中止になった」では「原因・理由」を示しています。

一方、「為」は漢字表記で、主に書き言葉や格式のある文書、法律文、古典的な表現などで使われます。例えば、公的な文書では「○○の為」と書かれることがあり、やや硬い印象を与えます。

ただし、現代の一般的な文章では、「為」を使うと古風な印象を与えるため、通常は「ため」と書くのが自然です。

まとめると、日常的な文章では「ため」を使うのが一般的で、法律文や古典的な表現などでは「為」が使われることがあります。

公用文ではどちらを使う?

 

公用文では、「ため」とひらがなで書くのが正式なルールです。これは、公用文における「分かりやすい表記」の方針によるものです。

(3) 常用漢字表に使える漢字があっても仮名で書く場合

書き表そうとする語に使える漢字とその音訓が常用漢字表にある場合には、その漢字を用いて書くのが原則である。ただし、例外として仮名で書くものがある。

【形式名詞】 

例)事→こと 時→とき 所・処→ところ 物・者→もの 為→ため 通り→とおり 故→ゆえ 様→よう 訳→わけ

引用:新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告) 令和3年3月12日 文化審議会国語分科会より

総務省の「公用文作成の要領」においても、日常的に使われる言葉はできるだけひらがなで表記するよう推奨されています。そのため、公用文では「為」ではなく、「ため」を使うのが適切です。

公用文では、できるだけ読者にとって分かりやすい表現が求められます。そのため、漢字を使うべき場面でも、日常的に使われる言葉については、できるだけひらがなで表記することが推奨されています。

「為」もその対象であり、通常は漢字ではなくひらがなで「ため」と表記されるべきと記載されています。このルールは、言葉の意味が明確に伝わり、読みやすさが重視されるためです。

また、形式名詞(事、時、所など)は通常、意味がわかりやすくなるように、漢字を使わずひらがなで表記することが推奨されています。

例えば、、「事」を「こと」、「所」を「ところ」、「為」を「ため」のように使います。これにより、文章の流れが自然になり、誤解を招かずに読み手に伝わりやすくなります。

まとめ

 

本記事では、「ため」と「為」の違いについて解説しました。

両者の使い分けは、日常的な文章では「ため」を使い、法律や歴史的な文書では「為」を用いることが一般的です。また、公用文では、分かりやすさを重視して「ため」とひらがなで表記するのが基本です。

それぞれの使い方を押さえ、文脈に応じて使い分けることが、より適切で自然な表現につながります。