撤去 除去 違い 意味 使い分け

日常生活やニュース記事などで目にする「撤去」と「除去」という言葉。どちらも同じ意味を持つように思えますが、使われる場面は異なります。

誤って使うと、相手に誤解を与えてしまうこともあるかもしれません。本記事では、これらの言葉の違いをわかりやすく解説していきます。

「撤去」の意味

 

撤去(てっきょ)」とは、設置されている建物や物体を取り除き、その場から取り除くことを意味します。

たとえば、違法に設置された看板を行政が強制的に取り外すことや、公園にある老朽化した遊具を取り除くことなどが挙げられます。

「撤」という字には「引き下げる」「退ける」といった意味があり、「その場から退かせる行為」に重点が置かれています。

都市整備や行政処分、工事などの分野でよく使われ、目に見えるものを設置場所から物理的に移動させる行為を指すのが特徴です。

「撤去」の例文

以下に、「撤去」を用いた例文を5つご紹介します。いずれも具体的な場面での使われ方を意識した内容です。

  1. 市役所は、放置された自転車を撤去する作業を開始した。
  2. 工事のため、道路脇にあった街路灯が一時的に撤去された。
  3. 老朽化したベンチを、公園整備の一環として撤去した。
  4. 不法投棄された粗大ごみが、ようやく撤去された。
  5. 台風で傾いた看板を、安全確保のために撤去した。

「除去」の意味

 

除去(じょきょ)」とは、不要または有害なものを取り除いて、その存在自体をなくすことを意味する言葉です。

この言葉は、医療・清掃・化学などの専門的な場面をはじめ、日常でも幅広く使われています。

「除」という漢字には「取りのぞく」「消す」という意味があり、対象物をその場から消し去るニュアンスを持っています。

対象となるものには、ホコリやウイルス、異物、薬物、汚れなどがあり、目に見える場合と見えない場合の両方に対応できます。空気中の有害物質を取り除く機器や、体内の毒素を消す薬などが典型例です。

つまり、「除去」は“存在そのものをなくす”ことに焦点を当てた言葉であると言えるでしょう。

「除去」の例文

以下は、「除去」の具体的な使い方を示す例文です。主に医療・清掃などの場面を想定しています。

  1. 空気清浄機は、花粉やハウスダストを効率よく除去する。
  2. 医師は、患者の体内から異物を慎重に除去した。
  3. この洗剤は、しつこい油汚れを簡単に除去できます。
  4. 工場では、製品に混入した異物を除去する工程がある。
  5. 有害物質を除去するために、専門業者が作業を行った。

「撤去」と「除去」の違い

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「撤去」と「除去」の違いは、次のように整理することができます。

項目 撤去 除去
意味 設置されている物を取りのぞく 不要・有害なものを取りのぞく
対象 建物・構造物・設備など 汚れ・ウイルス・異物など
用途 工事・都市整備・交通 清掃・医療・化学処理など
ニュアンス 元の場所からどかす 存在自体をなくす・消す
例文 違法看板を撤去する 異物を除去する

「撤去」と「除去」はどちらも「取りのぞく」という意味を持ちますが、その使われ方や対象には明確な違いがあります。

「撤去」は、主に建物・設備・看板・障害物など、目に見える物理的なものをその場から取り除くことを指します。特に、元々あった場所から「どかす」「片づける」というニュアンスが強く、「違法駐車を撤去する」「老朽化したフェンスを撤去する」といった表現に使われます。

一方、「除去」は、汚れや有害物質、不要な成分など、目に見えるものも見えないものも含めて取り除くことを指します。たとえば、「ウイルスを除去する」「異物を除去する」のように、清掃・衛生・医療などの文脈でよく用いられます。

つまり、「撤去」は“場所から移動させる”ことに重点があり、「除去」は“存在そのものを取り除いてなくす”ことに重点があると言えます。

「撤去」と「除去」の使い分け

 

それでは、実際にどのように両者を使い分ければよいのでしょうか?以下に、場面ごとの使い分け方を簡単に示します。

①構造物などを場所から移す場合 ⇒「撤去」

看板・フェンス・仮設トイレ・放置車両など、物理的にそこにあるものをどかすときは「撤去」を使います。設置されていたものを“その場から取りのぞく”という意味合いです。

②汚れや異物を消し去る場合 ⇒「除去」

カビ、ウイルス、油汚れ、薬物など、存在自体が不要・有害なものを取り除くときは「除去」を使います。「きれいにする」「取り去る」処理を表すのに適しています。

③目に見えない対象に対応する場合 ⇒「除去」

空気中の花粉、体内の毒素、アレルゲンなど、目には見えないものの除去には「除去」を使います。「撤去」はあくまで目に見える“物体”が対象なので注意が必要です。

まとめ

 

この記事では、「撤去」と「除去」の違いを解説しました。

「撤去」は物理的にその場から物を取りのぞく行為であり、看板や構造物などが対象になります。一方の「除去」は、有害・不要なものの存在そのものを取り除くことに焦点があり、対象も広範です。

正しく使い分けることで、伝えたいことをより明確に表現できるようになるでしょう。