新鮮な野菜のことを、「取りたての野菜」もしくは「取れたての野菜」と言いますが、この場合に「取りたて」と「取れたて」のどちらが正しい表記なのかという疑問が生じます。
また、「取れたて」以外にも「採りたて」「捕りたて」「獲りたて」など複数の漢字の書き方があるので、これらをどう書けばよいのかという問題もあります。そこで今回は、「取りたて」と「取れたて」の違い、そして漢字表記の仕方について詳しく解説していきます。
「取りたて」と「取れたて」の違い
まず両者に共通する「~たて」は、言葉の後ろに付いて「~したばかり」という意味を持つ接尾語です。そのため、「取りたて」は「取ったばかり」、「取れたて」は「取れたばかり」という意味になります。
したがって、例えば「取りたての野菜」であれば、「(自分で野菜を収穫して、)取ったばかりの野菜」という意味になります。
また、「取れたての野菜」であれば、収穫されてある野菜を主体に考えることになるため、「(誰かに収穫された、)取れたばかりの野菜」という意味になります。
よって、私たち消費者の立場からすると、客観的に「取れたばかり」、つまり「取れたての野菜」を使うことになります。
逆に、野菜農家という立場の人であれば、自ら収穫した野菜なので「取りたて」を使うことになります。
他にも、例えば「魚」だと、普通の人であれば海に出て自分で魚をとりにくようなことはありません。
そうなると、一般消費者であれば「取れたての魚」を使い、専門の漁師の人などであれば「取りたての魚」を使うことになります。
「取りたて」と「取れたて」の使い分け
「取りたて」と「取れたて」は、一般に使う分には厳密に区分されているわけではありません。
NHKの調査で、「取りたて」と「取れたて」のどちらを使うべきかを一般の人に尋ねたところ、以下のような結果が出ています。
- 「取りたて」を使う⇒全体の44%
- 「取れたて」を使う⇒全体の56%
上の結果のように、現在では感覚的に「取れたて」の方が多く使われる傾向にあります。その理由は、時代とともに私たちの生活様式が変わってきたためです。
現代では、わざわざ自分で畑や海に行かなくても、スーパーに行けば「取れたて」の野菜や魚が簡単に手に入る時代なので、捕獲者自身が使う表現の「取りたて」を使うのに違和感を覚えるという人も多いようです。
元々、辞書には「取りたて」の方が古くから記述されており、「取れたて」は記述されていませんでした。しかし、時代が進むにつれて「取りたて」が主流であったものが、だんだんと「取れたて」が使われるようになりました。
この事から、「取れたて」の方が「取りたて」よりも比較的新しい表現であることが分かります。このような経緯もあり、現在では「取れたて」の方が一般に使われているようです。
時代とともに私たちの生活様式も変わるため、言葉の使われ方も異なってくることが分かるでしょう。
「採れたて」「捕れたて」「獲れたて」の違い
「とれたて」という言葉は、「取れたて」以外にも「採れたて」「捕れたて」「獲れたて」など複数あります。これらの違いを、簡単に整理しておきましょう。
1. 取れたて(とれたて)
- 意味:一般的に、取ったばかりの新鮮なものを指します。漁や収穫など、物を「取る」行為によって得たものです。
- 対象:魚、野菜、果物、動物など、広範囲に使われます。
- 例:「取れたての魚」「取れたての野菜」など。
- ニュアンス:「取る」という行為全般に使える表現で、捕獲や収穫など、物理的に「取る」ことに焦点を当てます。
2. 採れたて(とれたて)
- 意味:植物や農作物が「収穫されたばかりのもの」を指します。
- 対象:野菜や果物などの農作物。
- 例:「採れたての野菜」「採れたての果物」
- ニュアンス:「採る」は収穫を意味し、農作物や果物の新鮮さを強調します。「取れたて」よりも農作物に特化しています。
3. 捕れたて(とれたて)
- 意味:捕まえたばかりのものを指します。捕獲行為が強調されます。
- 対象:動物や魚など、捕獲したもの。
- 例:「捕れたての魚」「捕れたての動物」
- ニュアンス:「捕る」ことに重点を置いており、漁や狩猟など、捕まえる行為が強調されています。捕まえたばかりの新鮮な状態を意味します。
4. 獲れたて(とれたて)
- 意味:狩猟や漁で得たばかりのものを指します。捕まえる行為とその結果を含みます。
- 対象:動物、魚、海産物など、狩猟や漁で獲得したもの。
- 例:「獲れたてのカニ」「獲れたての魚」
- ニュアンス:「獲る」は狩猟や漁によって得たものを意味し、捕まえるだけでなく、その過程や技術的な要素に重きを置いています。狩猟や漁の結果として得たものが強調されます。
違いのまとめ
- 取れたて:漁や収穫で「取ったばかりのもの」全般(植物も動物も含む)。
- 採れたて:農作物や果物が収穫されたばかりのものに特化。
- 捕れたて:捕まえたばかりのもので、捕獲行為が強調。
- 獲れたて:狩猟や漁で得たばかりのもので、捕獲の結果が強調される。
まとめ
「取れたて」と「取りたて」は、どちらも「取ったばかりのもの」を意味しますが、使用シーンに若干の違いがあります。一般的には「取れたて」が広く使われ、「取りたて」は収穫や漁を行う者により使われることが多いです。また、時代とともに「取れたて」が一般的に広まりました。
さらに、「取れたて」は広範囲に使われ、新鮮さを強調しますが、「採れたて」は農作物、「捕れたて」は捕獲したもの、「獲れたて」は狩猟や漁で得たものに特化しています。
現代の言葉の使い方に合わせて、どの表現を使うべきかを理解して、シチュエーションに応じて適切な表現を選ぶようにしましょう。