
ビジネス文書や報道資料でよく見かける「情報元」と「情報源」。見慣れた言葉ではありますが、どちらを使うべきか迷った経験はないでしょうか?
微妙に異なるこの二語を使い分けることは、誤解を避けるうえでも重要です。本記事では、それぞれの意味を丁寧に解説し、使い分けのポイントをご紹介します。
「情報元」の意味
「情報元」とは、ある情報を提供した人物や団体を指す言葉です。
特に報道や機密情報のやりとりにおいて用いられ、「この情報を誰が発信したのか」という出所に焦点が当てられます。
たとえば、記者が特定の公務員や企業関係者から得た情報を報じる場合、その発信者は「情報元」となります。
この言葉が使われる場面では、多くの場合、情報を提供した人物の匿名性や信頼性が問われます。そのため、「情報元」は報道の中で「匿名の政府関係者」や「事情に詳しい関係者」など、特定されない形で使われることも少なくありません。
また、企業内の内部通報や調査報告書などでも「情報元」は重視され、信憑性を裏付ける根拠の一つとなります。
このように、「情報元」は“誰が言ったか”という点に主眼を置いた表現であり、情報の背景にある人間関係や立場を含めて使われることが多いです。
「情報元」の例文
- 彼は記者に対し、情報元として秘密情報を提供していた。
- 調査チームは、情報元を確認するまで報告書をまとめなかった。
- 情報元の信頼性が疑問視され、今回の記事は掲載を見送られた。
- 情報元の保護が求められるため、発言者の名前は公表されていない。
- 報道によると、匿名の官僚を情報元とした内部文書が明らかになった。
「情報源」の意味
「情報源」とは、情報が得られた出所や入手先全般を指す言葉です。
この言葉は「情報元」よりも広い意味を持ち、人物に限らず、書籍、論文、統計データ、ニュースサイトなど、あらゆる情報提供の媒体が対象となります。
例えば、学生がレポートを書く際に参考にした書籍や政府の統計資料は「情報源」となります。また、研究者が実験結果や論文を元に仮説を立てるときにも、その元となるデータや文献を「情報源」と呼びます。
「情報源」は、信頼性や出典の明示が重視されるため、学術的な文章や公的な文書でよく使用されます。情報の発信者が誰であるかよりも、どの資料や媒体から得たかが重要視されるのが特徴です。
「情報源」の例文
- 論文を書く際には、情報源を明確に示す必要があります。
- 彼の主張は、複数の情報源からのデータに裏付けられていた。
- このレポートの情報源は、政府の統計データに基づいています。
- インターネットの情報源が不明確な場合は注意が必要です。
- 書籍や専門誌など、信頼できる情報源から資料を集めました。
「情報元」と「情報源」の違い
「情報元」と「情報源」の違いは、次のように整理することができます。
項目 | 情報元 | 情報源 |
---|---|---|
意味 | 情報を提供した人物・団体 | 情報が得られた出所・入手先 |
主な対象 | 人物、組織(例:記者の取材対象など) | 書籍、ウェブ、論文、人物など広範 |
使用場面 | 報道、内部告発、機密情報など | 調査、学術、日常的な情報収集など |
匿名性 | 高い(例:情報元は匿名の警察関係者) | 低い(明示的に「統計資料」「論文」など) |
ニュアンス | 特定の提供者に焦点を当てる | 情報の出どころ全体に焦点を当てる |
「情報元」と「情報源」は、どちらも“情報の出どころ”を指す言葉ですが、焦点の置き方や対象に違いがあります。
「情報元」は、主にニュース報道や内部告発、機密情報などの文脈で使われることが多く、情報を提供した“人物”や“組織”そのものを指します。
たとえば、「警察関係者を情報元とする報道」のように、具体的な発信者が想定されるケースで使われ、匿名性や信頼性が重要視される場面でも用いられます。
一方で、「情報源」はもっと広い意味で使われ、情報が得られた“場所”や“手段”全般を指します。書籍、インターネット、研究論文、統計データなど、人物以外の情報ソースにも使われます。
たとえば、「この情報の情報源は、政府の統計データである」のように、客観的・公式な出所を指す場合に使われます。
このように、「情報元」は人や組織に重点を置くのに対し、「情報源」は情報が得られた手段や媒体全般を含む点が、両者の主な違いです。
「情報元」と「情報源」の使い分け
それでは、実際の場面で「情報元」と「情報源」をどう使い分ければよいのでしょうか。以下に、典型的な使い分けパターンを示します。
① 情報を発信した人・組織を伝えるとき⇒「情報元」
ある情報を誰が伝えたのかをはっきりさせたいときは、「情報元」を使います。
例えば、「政府関係者によると…」というニュースでは、政府関係者が「情報元」です。「匿名の通報で発覚した」といった場合も、その通報者が「情報元」になります。
② 情報を得た手段や資料を示すときは「情報源」
情報をどこから得たのか、どんな資料を使ったのかを伝えたいときは、「情報源」を使います。
例えば、「この内容は新聞記事を情報源にしている」「統計データを情報源として調査した」といった具合に、情報の取得に使った“媒体や手段”を表すのが「情報源」です。
③ 信頼性を確かめたいときは、何を確認したいかで選ぶ
情報の信頼性を判断したい場面では、次のように考えるとよいでしょう。
- その情報を発信した人の信頼性を確かめたい場合 ⇒ 「情報元」(例:この発言は本当に専門家が言ったのか?)
- その情報を得た資料やメディアの信頼性を確かめたい場合 ⇒ 「情報源」(例:データの出典はどこの統計資料か?)
まとめ
この記事では、「情報元」と「情報源」の違いを解説しました。
「情報元」は情報を提供した人物や組織を指し、主に報道や取材などの文脈で使われます。一方、「情報源」は情報の入手先全般を示し、学術的な場面などで重視されます。
正しく使い分けることで、相手に対して明確に伝えることができ、文章や発言の説得力が増すでしょう。