他方 一方 使い分け 違い 例文 使い方

「他方」と「一方」は、どちらも普段の文章やビジネスシーンにおいてよく使われる言葉です。しかし、意味が似ていることからその使い分けに迷うという人も多いと思われます。

これらの言葉は同じように使ってよいのか、それとも使い分けるべきなのでしょうか?今回は、「他方」と「一方」の違いについて詳しく解説しました。

「他方」と「一方」の基本的な意味の違い

 

他方」と「一方」には、どちらも 名詞としての意味副詞・接続詞としての意味 があります。

副詞や接続詞として使う場合は、意味の違いはなく、互換的に使用可能です。しかし、名詞として使う場合は、それぞれの持つ意味が異なります。

名詞としての「他方」と「一方」

  • 「他方」他の方面・別の方向
    (例)「彼の意見は理解したが、他方の意見も聞くべきだ。」
  • 「一方」一つの方向・片方
    (例)「ホテルの一方が海に面している。」

副詞・接続詞としての「他方」と「一方」

  • どちらも「ある物事に対して、別の物事を対比させる」という意味で使う
    (例)「彼は慎重な性格だが、一方(他方)、弟は大胆な性格だ。」

「副詞・接続詞」としての使い分けは必要?

 

「他方」と「一方」は、副詞や接続詞として使う場合、意味の違いはなく、入れ替えても問題ありません。どちらも「対比」を示す表現として機能します。

例文

  • 「彼は冷静な判断ができるが、他方(または一方)、感情を表に出さないことが多い。」
  • 「Aは高価だが、他方(または一方)、Bは安価で手に入る。」

このように、どちらを使っても意味は変わらず、文章として成り立ちます。使い分けは好みによる部分が大きいです。

一般的には、「他方」はやや堅い表現なので、ビジネス文書などでよく使われます。対して、「一方」の方は、普段の文章や日常会話においてよく使われます。

したがって、この場合の「他方」は比較的堅い表現(書き言葉向き)で、「一方」は 比較的やわらかい表現(会話でも使える)と言えます。

「名詞」としての使い分けは必要?

 

名詞として使う場合は、「他方」と「一方」の意味が異なるため、適切に使い分ける必要があります。

「他方」は「別の方向・他の方面」

「他方」は、まだ特定されていない「別の何か」を指す場合に用います。

例文:

  • 「あなたの意見は理解しました。ただ、他方の意見も聞きましたか?」
    → ここでは「まだ特定されていない他の人の意見」を指す。
  • 「片方の意見だけではなく、他方の意見も尊重すべきだ。」
    → 「別の意見」について言及している。

「一方」は「一つの方向・片方」

「一方」は、「二つあるうちの片方」という明確な対比を示すときに使います。

例文

  • 「この道は一方通行なので、逆走できない。」
    → 「一つの方向しか通れない」という意味。
  • 「ホテルの一方が海に面している。」
    → 「ホテルの片方が海側に位置している」という意味。

また、「一方」の場合は、対比ではなく「物事が一方向に進んでいく様子」を表すこともあります。

例文

  • 「仕事が増える一方だ。」
    → 仕事がどんどん増えていくという意味。
  • 「物価は上がる一方だ。」
    → 物価が上がる傾向にあることを示している。

このように、「一方」には「片方」「一定の方向へ進む」という意味があり、「他方」とは異なるニュアンスを持ちます。

「他方」と「一方」の辞書での意味

 

辞書を見ても、「他方」と「一方」には下記のような違いがあります。

「他方」の意味(旺文社国語辞典より)

  1. 名詞:ほかの方面。別の方向(例:「他方 の意見を聞く」)
  2. 副詞:とはいうものの、一方では(例:「口は悪いが、他方、優しい面もある」)

「一方」の意味(旺文社国語辞典より)

  1. 名詞:一つの方面(例:「一方通行」)
  2. 名詞:片方(例:「一方を選ぶ」)
  3. 名詞:もっぱらその方向へかたよること(例:「仕事が増える一方だ」)
  4. 接続詞:別の面から言えば(例:「一方、こういう考え方もある」)

これを見ても、「副詞・接続詞」としての「他方」と「一方」は同じ意味ですが、「名詞」としての意味は異なることが分かります。

「他方」と「一方」の違いを整理

他方 一方 使い分け

「他方」と「一方」の違いを表で整理すると、以下のようになります。

項目 他方(たほう) 一方(いっぽう)
名詞としての意味 他の方面・別の方向(例:他方の意見を聞く) 一つの方向・片方(例:一方通行、片方を選ぶ)
副詞・接続詞としての意味 ある物事に対して別の物事を対比させる(例:口は悪いが、他方優しい) ある物事に対して別の物事を対比させる(例:彼は冷静だが、一方弟は大胆)
使用例(名詞) まだ特定されていない別の何か(例:他方の意見も聞くべきだ) 二つあるうちの片方(例:ホテルの一方が海に面している)
使用例(副詞・接続詞) 対比を示す(例:口は悪いが、他方優しい) 対比を示す(例:慎重だが、一方弟は大胆)
その他の用法 「別の方向」という意味で使う 「片方」「進行方向が決まっている」という意味で使う

「他方」と「一方」は、似たような意味を持ちながらも、使用される文脈やニュアンスに違いがあります。特に名詞として使う場合は、それぞれ異なる意味を持つため、適切に使い分ける必要があります。

まず、名詞としての違いですが、「他方」は「他の方面」や「別の方向」を指します。これは、まだ特定されていない別の選択肢や意見を示す場合に使います。例えば、「他方の意見も聞くべきだ」という場合、特定されていない別の意見に言及しています。

対して、「一方」は「一つの方向」や「片方」を意味し、対比する二つのもののうちの片方を示す際に使います。例えば、「ホテルの一方が海に面している」とは、ホテルの片側が海に面していることを指します。

次に、副詞・接続詞としての使い方ですが、こちらは両者に大きな違いはありません。どちらも対比を示す際に使われ、「一方では~、他方では~」という形で、二つの異なる側面を並べて述べる役割を果たします。例えば、「彼は冷静だが、一方(他方)弟は大胆だ」といった使い方です。この使い方では、どちらを使っても意味が変わることはありません。

このように、「他方」と「一方」は名詞として使う際に意味の違いがあり、適切に使い分けることが大切です。しかし、副詞や接続詞としては、意味がほぼ同じであり、対比を示す場面でどちらを使っても問題はありません。

違いを例文で比較

「他方」の例文

  • 「この件に関しては、他方の意見も尊重するべきだ。」
  • 「Aの商品は新機能が搭載されているが、他方にはその機能がない。」
  • 「Aの主張には一理あるが、他方、Bの意見も無視できない。」

「一方」の例文

  • 「彼は冷静な性格だが、一方で短気な面もある。」
  • 「この部屋の一方が海に面している。」
  • 「物価は上昇する一方だ。」

まとめ

 

今回は、「他方」と「一方」について解説しました。違いをまとめると、以下のようになります。

  • 「副詞・接続詞」としての「他方」と「一方」 → どちらも同じ意味で使える
  • 「名詞」としての「他方」 → 他の方面・別の方向(対比する対象が明確でない)
  • 「名詞」としての「一方」 → 一つの方向・片方(対比が明確、または一方向に進む)

「他方」と「一方」は副詞・接続詞としては同じ意味ですが、名詞としては使い分けが必要です。文脈に応じて適切に使い分けるようにしましょう。