「あるかどうか」 「ないかどうか」 違い

日常会話や文章の中で、『あるかどうか』や『ないかどうか』という表現を使う場面は意外と多いものです。しかし、これらの表現には微妙なニュアンスの違いがあり、使い方によって伝わる印象が変わることがあります。

本記事では、『あるかどうか』と『ないかどうか』の意味の違い、適切な使い分け方をわかりやすくご紹介します。

「あるかどうか」の意味

 

あるかどうか」とは、何かが存在しているかどうかを確認したり、可能性を考えたりする表現です。

「ある」は、中立的・曖昧で、「ある」場合も「ない」場合も想定された問いかけです。

具体例と使い方

  1. 存在の確認
    「この部屋に鍵があるかどうか確認してください。」
    → 鍵が存在する可能性を、「ある」場合と「ない」場合の両方前提にしている。
  2. 選択肢の検討
    「参加する時間があるかどうか、教えてください。」
    → 時間が確保できる可能性を、「ある」場合と「ない」場合の両方想定している。
  3. 過去の状況
    「昔の資料がまだあるかどうか、調べてみます。」
    → 資料が現存する可能性が「ある」か「ない」か、両方を探っている。

「ないかどうか」の意味

 

一方、「ないかどうか」は、何かが存在しないことを確認したり、否定的な可能性を探る表現です。

「ない」という否定的な状態を前提とすることから、「ない」ことがすでに分かっているような場合の問いかけを意味します。

具体例と使い方

  1. 存在しないことの確認
    「この道に危険な箇所がないかどうか、確認してください。」
    → 危険な箇所が存在しないことを前提として、念のため調べている。
  2. 問題の確認
    「書類に間違いがないかどうか、最終チェックをしてください。」
    →書類にミスがもうないことを前提として、改めて確認している。
  3. 過去の状況
    「彼の説明に矛盾がないかどうか、後で確認しておきます。」
    → 矛盾点がないことを前提として、後で確認しておくという表現。

「あるかどうか」と「ないかどうか」の違い

あるかどうか ないかどうか 違い 使い分け

あるかどうか」とは、中立的・曖昧で、「ある」場合も「ない」場合も想定された問いかけです。一方で、「ないかどうか」とは、前提として「ない」ということが分かっているような場合の問いかけです。

つまり、「ないかどうか」の方は、前提として「ない」ことが分かっている場合にしか使えないということになります。

例えば、本屋さんで店員とお客が、次のようなやりとりをしていたとします。

①「ある」を使ったケース

お客「この雑誌の先月号はある?」
店員「あると思いますが…」
お客「あるかどうか確かめてくれる?(〇)」or「ないかどうか確かめてくれる?(×)」
⇒お客は「ある」は使うことができるが、「ない」は使うことができない。

②「ない」を使ったケース

お客「この雑誌の先月号はある?」
店員「ないと思いますが…」
お客「あるかどうか確かめてくれる?(〇)」or「ないかどうか確かめてくれる?(〇)」
⇒お客は「ある」と「ない」の両方を使うことができる。

①では、「ある」という予想が前提になっています。一方、②では「ない」という予想が前提になっています。

そのため、「あるかどうか」は①と②の両方で使うことができますが、「ないかどうか」は①の場合には使うことができません。

「あるかどうか」は、どちらも想定した中立的な表現なので、両方とも使うことができますが、「ないかどうか」は「ない」ことを前提とした表現なので、「ない」ことが分かっている場合にしか使えないということです。

「あるかどうか」と「ないかどうか」の使い分け

 

しかしながら、この二つの使い分けは人によって受け止め方が異なるため、そう単純ではありません。

例えば、「この作文に間違いが〇〇かどうか見てください。」という文があったとします。

この場合、「ある」を使うとすると、「間違いがあることが前提なんてそんなのダメじゃないか」と思う人もいます。

逆に、「ない」を使うとすると、「間違いがないことが前提なんてずいぶん自信家な奴だな」と思われてしまうかもしれません。

言葉というのは、使う場面や相手との関係、言い方などによって様々な伝わり方をするため、どちらが正しいと厳密に決めることはできないのです。

ただ、「ある」と「ない」には、その潜在的な意味をくみとって、やはり使い方には一定の傾向はあるようです。

例えば、ある記者が苦境を乗り越えたアスリートに「やめようと思ったことはないですか?」などと聞いたりします。

これは、やめようと思ったことがあるだろうから「ある」という答えを引き出したいために使っているのだと考えられます。

また、あるかないかどちらか分からないような時は「ある?」と聞き、あるという答えを引き出したい時は逆に「ない?」と聞く傾向もあります。

他には、例えば、「忘れ物がないかどうか確かめなさい」などは、忘れ物というのはない方がいいものなので、「ないかどうか」と聞きます。

一方で、宝くじの番号を確認するような時は、「自分の番号があるかどうか見てみよう」など言ったります。

これは、宝くじに自分の番号がある方がいいので、「ある」かどうかを使っています。

このように、言葉というのは無意識に人の心理が表れているので、一概にどっちが正しい・間違いなどの明確な線引きはできないということが言えます。

まとめ

 

「あるかどうか」と「ないかどうか」は、似たような表現ですが、その意味は異なります。

  • 「あるかどうか」: 中立的・曖昧で、「ある」場合と「ない」場合の両方が想定された問いかけ
  • 「ないかどうか」: 前提として「ない」ことが分かっているような場合の問いかけ。

「あるかどうか」は、中立的に物事の可能性を探る表現で、「ある場合」と「ない場合」の両方を想定しています。一方、「ないかどうか」は否定的な状態を前提にし、「ないこと」を確認するための表現です。

この二つの使い分けは、文脈や話し手の心理によっても変わるため、明確な線引きは難しいですが、使い方次第で印象が大きく異なります。それぞれの特性を理解して、より自然に使いこなせるようになりましょう。