
ビジネスシーンでよく耳にする「法人名」と「会社名」という言葉。どちらも似たような場面で使われていますが、その定義には明確な違いがあります。
名刺や契約書、登記書類などに登場するこれらの用語を正しく理解しておくことは大切です。本記事では、それぞれの意味の違いをわかりやすく解説していきます。
「法人名」の意味
「法人名(ほうじんめい)」とは、法律上の人格を持つ団体の名称を指す言葉です。
「法人」とは、一定の目的のもとに組織された団体で、法律により人と同じように権利や義務を持つことが認められています。
法人には株式会社、学校法人、宗教法人、医療法人、一般社団法人など、営利・非営利を問わずさまざまな形態が存在します。
「法人名」は、これらの法人が登記などの法的手続きを経て公式に登録する名称のことであり、社会的な活動や契約などにおいて正式に用いられます。
たとえば、「○○株式会社」「公益財団法人○○会」などがそれにあたります。
つまり「法人名」とは、法人格を持つ組織そのものを法律上表すための公式な呼び名だと言えます。
「法人名」の例文
- この書類には法人名の記載と代表者印が必要です。
- 弊社の法人名は、10年前に変更しました。
- 製品には、法人名を記載するようにルールで決まっています。
- 法人名とブランド名が一致していない企業も多くあります。
- 法人名の由来についてよく聞かれることがあります。
「会社名」の意味
「会社名」とは、会社がビジネス活動を行ううえで使用する名称のことです。
会社とは、法人格を持った組織の中でも、特に営利活動を目的として設立された法人形態のことを指します。株式会社や合同会社、合資会社、合名会社などがこれに該当します。
「会社名」は、会社設立時に法務局へ商業登記する際に登録され、法律上も公式な名称となります。
たとえば「○○株式会社」「株式会社○○」のように、商号の一部として「株式会社」などの会社形態を示す語が含まれます。
会社名は、法人名と同じ場合もありますが、異なる場合もあります。つまり、「会社名」は、法人の中でも「会社」という特定の形態をとった組織の名称を表します。
「会社名」の例文
- 会社名のロゴは、新しくデザインされたものです。
- 履歴書には、志望企業の正式な会社名を記載しましょう。
- 会社名の変更には、株主総会の決議が必要です。
- ブランド名と会社名が異なるケースは少なくありません。
- 商標登録の際は、会社名とブランド名の関係に注意が必要です。
「法人名」と「会社名」の違い
「法人名」と「会社名」の違いは、次のように整理することができます。
比較項目 | 法人名 | 会社名 |
---|---|---|
定義 | 法人格を持つ組織の名称 | 会社として登記された法人の名称 |
対象範囲 | 会社以外の法人も含む | 会社のみが対象 |
使用例 | 学校法人、医療法人、財団法人等 | 株式会社、合同会社など |
法的根拠 | 民法・各種特別法 | 会社法 |
登録先 | 法務局(法人登記) | 法務局(商業登記) |
「法人名」と「会社名」は、混同されがちですが、法的な意味合いと使用される文脈に明確な違いがあります。
「法人名」は、法律に基づいて法人格を取得したすべての組織に使われる名称です。つまり、企業に限らず、公益法人、学校法人、宗教法人などもすべて「法人名」を持っています。
一方、「会社名」は、その中でも「株式会社」や「合同会社」など、営利目的で設立された法人(会社)に使われる名称のことを言います。つまり、会社名は法人名の一種に過ぎず、より狭い範囲を指しています。
たとえば、大学法人である「学校法人○○学園」は法人名を持っていますが、会社名はありません。逆に、「○○株式会社」は法人名でもあり、会社名でもあります。このように両者が一致するケースもあるため、注意が必要です。
「法人名」と「会社名」の使い分け
両者の違いを理解したうえで、どのように使い分ければよいのか、以下のようなケースに分けて見ていきましょう。
①法人全体を表す場合 ⇒ 「法人名」
例えば、契約書や登記簿において、学校法人や宗教法人などの名称を指す場合には「法人名」という言葉が適切です。
②営利企業に関する文脈で使う場合 ⇒ 「会社名」
商品やサービス、企業ブランドに関する説明や、ビジネス書類など、営利目的の法人が話題となっている場合は「会社名」を使います。
③口頭での紹介や日常会話の中で言及する場合 ⇒ 「会社名」
日常的な会話の中では、「ABCさんの会社」などといった形で「会社名」が使われることが多く、堅苦しくならない表現として好まれます。
このように、状況に応じて適切に使い分けることが、正確な情報伝達のためには重要です。
まとめ
本記事では、「法人名」と「会社名」の違いを解説しました。
「法人名」は法人格を持つすべての団体に使われる名称であり、会社に限らず幅広い組織に適用されます。一方で「会社名」は、営利活動を行う法人(会社)の名称を指し、法人名の一部にあたります。
正しく使い分けることで、ビジネス文書や法的書類での誤解を防ぎ、より正確な表現が可能になるでしょう。
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