
日常会話の中でよく使われる言葉の中に、「嫉妬」と「羨ましい」があります。似たような場面で耳にするこの二つですが、意味はまったく同じなのでしょうか?
何気なく使っていると、誤解を招いたり気まずい思いをしたりすることもあります。今回は、これらの言葉の意味を例文を交えてわかりやすく解説します。
「嫉妬」の意味
「嫉妬(しっと)」とは、自分にないものを他人が持っていることに対して湧き上がる、否定的な感情を指します。
そこには怒りや不満、焦りといったネガティブな感情が含まれており、相手への敵意や排除したい気持ちが混ざることもあります。
例えば、他人の成功や評価を見て、「自分はなぜうまくいかないのか」と感じたとき、その思いが「嫉妬」に変わることがあります。
「嫉妬」は、他人の優位性を認めながらも受け入れがたく思うときに起こりやすい感情です。心理学では、嫉妬は自尊心の低下や劣等感の表れともされており、人間関係に悪影響を及ぼすこともあります。
素直に喜べない、祝えないという気持ちは、まさに「嫉妬」によって生まれる状態です。
「嫉妬」の例文
- 彼が注目されているのを見て、心の奥で嫉妬している自分に気づいた。
- 親友が希望の大学に合格したと聞いて、素直に祝えず嫉妬の感情が湧いた。
- いつも上司に評価される同僚に、つい嫉妬してしまうことがある。
- SNSで幸せそうな投稿を見るたびに、軽い嫉妬を感じてしまう。
- 自分より後輩が先に昇進したことに対して、思わず嫉妬してしまった。
「羨ましい」の意味
「羨ましい(うらやましい)」とは、他人の持っているものや状況に対して「自分もそうなりたい」と感じる前向きな感情を指します。
この言葉には、他人への敵意や否定的な思いは含まれません。あくまで、他人の良い状態に対しての憧れや感心が中心となる感情です。
例えば、友人の英語力や才能を見て「羨ましい」と思うとき、それは相手を素直に評価している証です。「自分も頑張れば、ああなれるかもしれない」と思える気持ちは、行動の原動力にもなります。
「羨ましい」はポジティブな感情であるため、日常会話の中でも比較的よく使われる表現です。「嫉妬」とは異なり、相手を攻撃したい気持ちはなく、むしろ尊敬やリスペクトが含まれているのが特徴です。
「羨ましい」の例文
- あの人の語学力の高さは本当に羨ましい。
- 海外旅行に何度も行っているなんて、羨ましいと思った。
- 子どもの頃からやりたい仕事に就いている友人が羨ましい。
- 自由に時間を使える生活ができるなんて、本当に羨ましい。
- 家族みんなが仲良しな友達を見て、羨ましい気持ちになった。
「嫉妬」と「羨ましい」の違い
「嫉妬」と「羨ましい」の違いは、次のように整理することができます。
項目 | 嫉妬(しっと) | 羨ましい(うらやましい) |
---|---|---|
感情の性質 | ネガティブ(怒り・憎しみ・焦り) | ポジティブまたは中立(憧れ・感心) |
含まれる感情 | 相手への敵意や不満が混ざることが多い | 敵意はなく、純粋な憧れ |
例文 | 同僚の昇進に嫉妬してしまった | 同僚の昇進が羨ましいと思った |
心の動き | 相手を否定・排除したい気持ちが出やすい | 自分も同じようになりたいという願望 |
日常使用度 | やや強い言葉。控えることが多い | 比較的よく使われる日常的な表現 |
「嫉妬」と「羨ましい」は、どちらも他人の状況や持ち物に対して心が動く感情ですが、その性質や心理的背景には明確な違いがあります。
「嫉妬」は、自分にはないものを他人が持っていることによって生じるネガティブな感情です。怒りや憎しみ、焦りといった否定的な思いが入り混じっており、しばしば他人への敵意や不満を含みます。
たとえば、「同僚が上司に評価されていて嫉妬した」という場合、自分が評価されないことへの劣等感や不満、さらにはその同僚を妬ましく思う感情が表れています。
一方で「羨ましい」は、他人の成功や能力、状況を見て「自分もああなりたい」と感じるポジティブな感情です。
他人を否定したり攻撃したりする意図はなく、純粋な憧れや感心が込められています。「彼の英語力が羨ましい」という場合、その実力を認めつつ、自分もそうなりたいという前向きな思いが含まれています。
このように、「嫉妬」は相手の優位を認めたくない、または奪いたいと感じる対抗的な感情であり、「羨ましい」は相手を素直に評価し、自分も成長したいと願う建設的な感情です。
感情の種類としては、「嫉妬」はやや強く、心のバランスを崩しやすいのに対し、「羨ましい」は人との比較の中で自然に生まれる感情として受け止めやすい傾向があります。
「嫉妬」と「羨ましい」の使い分け
「嫉妬」と「羨ましい」の使い分けは、以下のような基準で行うとよいです。
①誰かの成功に対して純粋に「自分もそうなりたい」と思う場合⇒「羨ましい」
成功や幸せを見て、自分も頑張りたいと思うときは「羨ましい」を使います。例えば、友達が希望の大学に合格したときなど。
②誰かの成功が自分と比較されて辛く感じる場合⇒「嫉妬」
比較されて苦しくなったり、「なんであの人ばかり」と思ってしまうときは「嫉妬」を使います。たとえば、同じ職場で同期だけが昇進して辛く感じたときなどです。
③相手に対してイライラしたり否定的な感情が出ている場合⇒「嫉妬」
相手を応援するどころか、嫌悪感や不満が生まれているときは、それは「嫉妬」です。このようなときに「羨ましい」と言ってしまうと、自分の感情に嘘をつくことになってしまいます。
日常の中では「羨ましい」は比較的安心して使える表現ですが、「嫉妬」は相手によってはネガティブに受け取られるため、使う場面に注意が必要です。
まとめ
本記事では、「嫉妬」と「羨ましい」の違いを解説しました。どちらも他人との関係で生まれる感情ですが、その意味や心の動きには大きな差があります。
「嫉妬」はネガティブな感情を、「羨ましい」は前向きな憧れを表す言葉です。感情を正しく理解し、適切な言葉で表現することで、人間関係もより円滑になるでしょう。