
「青田買い」と「青田刈り」は、普段はあまり意識せずに使っている言葉かもしれません。ですが、この二つの言葉には明確な違いがあるため、使い方には注意が必要です。
特に、ビジネスや就職活動の場面でよく使われる表現なので、正しく理解しておくことが大切です。この記事では、「青田買い」と「青田刈り」の違いを、具体例を交えてわかりやすく解説していきます。
「青田買い」の意味
「青田買い」とは「稲の収穫前に、その田の収穫量を見越して先買いすること」を意味します。
そこから転じて、現在では「企業が人材確保のために、卒業予定の学生を早い段階から採用すること」という意味で使われることが多いです。
例文:
- 「大手企業は青田買いを強化しており、夏の時点で内定を出すケースも増えてきた。」
- 「青田買いを意識して、学生は就活の早期スタートを切るべきである。」
「青田買い」は、元々農業に由来する言葉で、「稲がまだ青々としている段階で買う」という意味から派生しています。
「まだ収穫時期が来ていない稲を、成熟する前にあらかじめ買っておく」という行為が、この「青田買い」に当たります。
現代社会では、「青田買い」という言葉は、企業が、まだ就職活動が本格的に開始されていない段階で学生をスカウトしたり、採用内定を出したりすることを指します。
このような企業の行為は、将来有望な人材を早期に確保するための一つの手段であり、競争が激しい現代においては珍しくなくなってきています。
そのため、ビジネスシーン、特に新卒採用においてはよく使われる言葉となっています。
「青田買い」と「青田刈り」の違い
「青田買い」と「青田刈り」は、一見すると似たような言葉ですが、本来の意味は異なります。
「青田買い」は「まだ稲が青い内に収穫量の見込みをつけて買うこと」です。一方で、「青田刈り」は「まだ稲の出ないうちに稲を刈り取ること」です。
「青田刈り」は、古くは戦国時代に、敵が兵糧不足になるように稲を刈る軍事作戦の一つとして行われていました。
そのため、仮に「青田刈り」を現代の就職活動に当てはめると、「実る見込みのない学生を採用すること」という意味になってしまいます。
そのため、正式には「青田刈り」は誤りということになります。
ですが、現代では「青田刈り」も辞書の方には記述されており、全くの誤りというわけではなく、慣用的に使われているという実情があります。
元々、「青田刈り」は1962年の流行語になってから広く使われるようになりました。当時は、高度経済成長の時代ですから新卒者が足りず、企業が半ば強引に求人勧誘をしていました。
それを強調するために、マスコミを中心に「青田刈り」という言い方が生まれたという背景があります。
つまり、マスコミから流れ出る流行語に影響されて、本来の言葉である「青田買い」があやふやになり、この「青田刈り」という言い方が使われるようになったということです。
そのため、若い人は、元々何の予備知識もないところへ正確な知識が入ってくるので、記憶も新しく、正しい意味を理解している人が多いです。
一方で、1960年代を過ごした中高年の方は、「青田刈り」と言う人が多いようです。このような当時の時代背景などもあり、二つの言葉が混同されるようになったと考えられます。
「青田買い」の使い方・例文
「青田買い」を使った具体的な例文をいくつか紹介します。これらを参考に、ビジネスや日常会話でどのように使えるかを考えてみましょう。
例文1:
「新卒採用で青田買いを狙っている企業が多く、学生は早期に内定をもらうことが一般的になりつつある。」
- これは、企業が新卒学生を早い段階で採用する状況を表しています。青田買いをすることで、将来有望な学生を早期に確保しようという企業の戦略を表現しています。
例文2:
「彼はまだ大学三年生だが、すでにいくつかの企業から青田買いのオファーを受けている。」
- 学生がまだ卒業前の段階で、すでに内定を得ている様子を示す例文です。
例文3:
「ベンチャー企業は青田買いを積極的に行っており、インターンシップの段階で学生にオファーを出すことが一般的だ。」
- 小規模な企業やスタートアップが早期に人材を獲得しようとしているシーンを表現しています。
例文4:
「青田買いの方針を採る企業が増える中、学生は早期の自己PRがますます重要になっている。」
- 就職活動の初期段階での自己アピールの重要性を強調した例文です。
例文5:
「青田買いをする企業は、まだ確定していない未来の可能性に賭けるリスクを取っているともいえる。」
- 企業が未成熟な人材を採用するリスクを取りながらも、将来の成功を見込んでいる点を表しています。
「青田買い」の類義語
「青田買い」と似た意味を持つ表現をいくつかご紹介します。これらの表現は、文脈に応じて使い分けが可能です。
- 先取り:何かを他の人よりも早く手に入れること。
- 早期採用:新卒や若手人材を、通常の採用活動よりも早い段階で採用すること。
- 先見の明:将来を見越して早期に判断を下すこと。
「青田買い」の英語訳
「青田買い」を英語に訳す際は、以下のようなフレーズが適しています。
- Early recruitment(早期採用)
- Pre-emptive hiring(先手を打った採用)
- Early talent acquisition(早期の人材獲得)
これらの表現は、企業が早期に優秀な人材を確保しようとする行為を英語で説明する際に使われます。
まとめ
「青田買い」と「青田刈り」は、いずれも「早期に行動する」という意味を持つ表現ですが、本来の意味としては両者は異なります。
「青田買い」は「まだ稲が青い内に収穫量の見込みをつけて買うこと」ですが、「青田刈り」は「まだ稲の出ないうちに稲を刈り取ること」です。
現代では「青田刈り」の方も慣用的に使われてはいますが、本来の使い方としては「青田買い」が正しいです。そのため、ビジネスシーンなどにおいては「青田買い」を使うようにしましょう。