「出来る」と「できる」はどっちが正しい?ビジネスや公用文の使い分け

メールで「資料が出来ました」と打ってから、ふと「この漢字でよかったのだろうか」と不安になったことはありませんか。日常ではあまり意識しない表記の違いですが、ビジネス文書や公用文では判断に困る場面が少なくありません。

とくに履歴書や報告書では、細かな表記の違いが気になるものです。本記事では、公用文の基準を踏まえながら、「出来る」と「できる」の違いをわかりやすく解説していきます。

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目次

動詞「できる」はひらがな

結論から言うと、動詞の「できる」はひらがなで書くのが原則です。とくに公用文やビジネス文書では、この考え方が基本になります。

その根拠の一つが、文化庁が示している「常用漢字表」です。常用漢字表では、法令や公用文などで用いる漢字の目安が示されていますが、動詞「出来る」の読みは掲げられていません。公用文では常用漢字表に従うことが原則とされているため、動詞の「できる」は漢字ではなくひらがなで書くことになります。

また、共同通信社の『記者ハンドブック』でも、動詞や副詞として使う場合は「できる」とかな表記にするように示されています。そのため、新聞やニュース原稿では、ほぼ「できる」表記に統一されています。

動詞「できる」には、さまざまな意味があります。例えば「生じる」「完成する」「能力がある」「可能である」といった意味です。しかし、公用文や新聞表記では、意味に関係なく原則ひらがなで「できる」と書くというのが現在の主流です。

つまり、「橋ができる」「英語ができる」「入場できる」「理解できる」など、どの意味であっても、ビジネスや公的な文章ではひらがなを選ぶのが無難です。


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名詞「出来」は漢字

一方で、名詞の「出来」は漢字で書くのが原則です。ここが動詞との大きな違いです。

名詞の「出来」は、「ものができること」や「できばえ」「状態のよしあし」といった意味を表します。「テストの出来」「仕事の出来」などがそれに当たります。

さらに、「出来」を含む複合語も漢字で書きます。たとえば、「出来事」「出来心」「出来栄え」「出来上がり」「出来具合」などです。これらは、動詞の連用形「でき」が名詞化したものと説明されます。

このように整理すると、使い分けは比較的シンプルです。動詞ならひらがな、名詞や複合語なら漢字と覚えておけば、大きく間違えることはありません。

使い分けの例を見てみましょう。

・今回のプロジェクトは無事にできました。(動詞)
・今回のプロジェクトの出来は上々です。(名詞)

前者は動作や状態の成立を表す動詞なのでひらがな、後者は成果の評価という名詞なので漢字になります。


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ビジネス文書の書き方

ビジネスメールや報告書、履歴書ではどちらを使えばよいのでしょうか。この場合は、迷ったら「できる」とひらがなにするのが安全です。

履歴書では「英語ができます」「パソコン操作ができます」といった自己PRを書くことがありますが、ここはひらがなが正解です。公的な文章は公用文の基準に沿うのが望ましいためです。

例文を確認してみましょう。

・本日中に資料を提出できます
・新しいシステムが来月から利用できるようになります。
・この方法ならコスト削減が実現できると考えます。
・急な予定ができましたので、日程を変更します。
・今回の試験の出来は予想以上に良かったです。

前半の四つは動詞としての用法なのでひらがな、最後の一つは名詞なので漢字です。このように整理して考えれば、実務でも迷いにくくなります。

なお、一部では「新しく生じる」「完成する」という意味のときは「出来る」と漢字にするという考え方もあります。しかし、現在の新聞表記や公用文の実務では、ほとんどがかな表記に統一されています。したがって、ビジネス文書ではあえて漢字にする必要はありません。


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「出来る」は誤りなのか

では、「出来る」と書くのは間違いなのでしょうか。結論としては、日本語として誤りではありません実際、小説や一般の文章では漢字表記が使われることもあります。

「出来る」は、歴史的には「でく(出来)」という語から変化したとされ、一定の根拠があります。そのため、当て字だから誤りという単純な話ではありません。

しかし、公用文という枠組みで考えると事情が変わります。公用文では常用漢字表に従うことが原則であり、動詞「出来る」はその読みが示されていないため、漢字で書くことはしません。この点が、一般文章との大きな違いです。

また、近年は新聞や放送などのメディアでも「できる」という表記が主流になっています。これは表記を統一することで、読みやすさを高めるという考え方も背景にあります。

したがって、「出来る」は誤りではないが、ビジネスや公的な文章では基本的に使わないと理解しておくのが現実的です。


まとめ|使い分け一覧

本記事の内容をまとめると、以下のようになります。

用法表記
動詞(可能・能力・完成など)できる利用できる、橋ができる
副詞的用法できるできるだけ、できる限り
名詞出来テストの出来
複合語出来出来事、出来栄え
ビジネス・公用文の原則できる英語ができます

重要なのは、品詞で分けるという視点です。動詞や副詞ならひらがな、名詞や複合語なら漢字。さらに、ビジネスや公用文ではひらがなを基本とするという三点を押さえておけば十分です。

迷ったときは、「これは動詞か、それとも名詞か」と考えてみてください。そして公的な文章では、原則としてひらがなを選ぶ。これが最も安全で、現在の実務にも合った使い分けです。

この記事を書いた人

大学卒業後、出版会社へと就職。退職後はフリーライターとして独立し、現在は言葉の意味や違いなど、日々の生活やビジネスに役立つ情報を発信しています。皆さんに「なるほど」と思ってもらえる内容をお届けすることを心がけています。

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