
パン屋さんやカフェ、レストランのメニューで見かける「フォカッチャ」という名前のパン。ところが、場所によっては「フォッカチオ」と書かれているのを目にすることもあります。
この場合、どちらが正しいのかと疑問に思ったことはないでしょうか?そこで本記事では、「フォッカチオ」と「フォカッチャ」の違いや由来、日本での使われ方などをわかりやすく解説していきます。
「フォカッチャ」とは?本来の意味と特徴
「フォカッチャ(focaccia)」とは、イタリア発祥の伝統的な平たいパンの一種です。
オリーブオイルをたっぷり練りこんだ生地を平らにのばし、表面に岩塩やローズマリーなどのハーブをふりかけて焼き上げます。さらに、トマトやオリーブ、チーズなどの具材をのせてアレンジされることもあり、地域や店によってバリエーションが豊富です。
見た目はピザの生地に似ていますが、フォカッチャは基本的にチーズやトマトソースを使わず、パンとしての素朴な味わいを楽しむ点が特徴です。外は香ばしくパリッと焼き上がり、中はしっとり・もちもちとした食感で、オリーブオイルの香りが口いっぱいに広がります。
そのまま食べるのはもちろん、スープやサラダと一緒に食べるパンとしても親しまれており、さらに、具材をはさんでサンドイッチ風にしても美味しく食べられます。日本でもすでに多くのパン屋やカフェ、イタリア料理店で提供されており、「イタリアンパン」として定番の存在となっています。
「フォッカチオ」は何?意味の違いはある?
「フォッカチオ」という表記を見かけたことがある方も多いかもしれませんが、これは実は「フォカッチャ」とまったく同じパンを指しています。
違いがあるとすれば、それは「表記」や「発音」の揺れによるものです。言い換えれば、「フォッカチオ」という言葉は、下記のような理由から生まれたと考えられます。
- イタリア語「focaccia」の発音をローマ字的に読んだ結果
- 日本語における外来語表記の揺れによる一例
- かつて一部の飲食店や製品で、誤って使われた表記がそのまま残ったケース
つまり、「フォッカチオ」は発音やスペルの理解が不正確だったことに起因する、誤表記あるいは旧表記の一種であると言えるでしょう。現在では「フォカッチャ」という表記が広く用いられており、より一般的かつ正確な言い方として定着しています。
イタリア語発音と日本語表記のズレ
イタリア語の「focaccia」は、現地の発音に近づけると「フォカッチャ」に聞こえます。語尾の「-cia」は、イタリア語では「チャ」または「ッチャ」と発音されるため、「フォッカチオ」とはならないのです。
しかし、日本語に外来語を取り入れるとき、語尾の発音やアクセントがうまく伝わらず、誤って表記されてしまうことがあります。たとえば、「エクスプレッソ(誤)」と「エスプレッソ(正)」や、「カルボナーラ(正)」を「カリボナーラ」と誤記した例など、似た現象は多く見られます。
「フォッカチオ」という表記もその一例です。「focaccia 」のつづりをローマ字的に読んで「フォッカチオ(fokkachio)」のようにしてしまった結果、生まれた表記だと考えられます。
しかし実際には、イタリア語の「c」+「cia」は「チャ」と読むのが自然であり、「フォカッチャ」が正しいカタカナ表記となるのです。
比較表で確認:「フォッカチオ」と「フォカッチャ」
以下に、両者の違いを比較表にまとめました。パンそのものに違いはないものの、表記の正しさや日本語としての使われ方にははっきりとした差があります。
項目 | フォッカチオ | フォカッチャ |
---|---|---|
意味 | イタリアの平たいパン | 同左 |
正確さ | 誤表記・旧表記 | 正しい表記 |
語源 | イタリア語「focaccia」 | 同左 |
使用頻度 | 少ない | 多い(一般的) |
発音の印象 | やや不自然 | イタリア語に近い |
サイゼリヤでは「フォッカチオ」表記の理由とは?
実は、大手イタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」では、メニュー上に「フォッカチオ」という表記が使われています。これを見て「じゃあそっちが正しいのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、これはサイゼリヤ独自の表記方針によるもので、言葉の使い方として正しいかどうかとは別の話です。サイゼリヤでは1980年代からこの名前を使って商品を販売しており、それがメニューの中で定着したため、現在も変更せずに「フォッカチオ」として提供されています。
企業やブランドによっては、一般的な表記とは異なる名前を使うことがあります。たとえば、「エクスプレッソ」や「ドリア」なども、日本独自の呼び名や表記が浸透している例です。
したがって、サイゼリヤの「フォッカチオ」も中身はもちろん一般的な「フォカッチャ」と同じパンであり、表記の違いにすぎません。これは、外来語のカタカナ表記が日本語に取り入れられる過程で生まれた一例だといえるでしょう。
まとめ
結論として、「フォッカチオ」と「フォカッチャ」は同じパンを指すものの、正しい表記は「フォカッチャ」です。
「フォッカチオ」は一部で使われていた誤った旧来の表記であり、現在ではほとんど見かけなくなっています。
ただし、サイゼリヤのようにブランド名や商品名として使用されているケースはあり、それが一般表記とは異なる理由も理解しておくとよいでしょう。
パンそのものには何の違いもありませんので、「フォッカチオ」と書かれていても混乱する必要はありませんが、文章やメニューなどで正確に表記したい場合は「フォカッチャ」を使うのが適切です。
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