
「もうしいれ」という言葉は、「申し入れ」と「申入れ」の二つの表記の仕方があります。どちらの表記もよく見かけるため、違いが分からず迷うという人も多いでしょう。
特に役所の文書やビジネス文書では、送り仮名の違いが気になる場面も多いです。そこで本記事では、「申し入れ」と「申入れ」の違い、公用文での使い方、送り仮名のルールについて分かりやすく解説します。
「申し入れ」の意味
まずは「申し入れ」の意味から確認しておきましょう。
「申し入れ」とは、相手に対して意見・要望・要求などを正式に伝えることを意味する言葉です。
特に、組織や団体、会社などが相手に対して何かを求める際によく使われます。
「申し入れ」は、「申し入れる」という動詞の名詞形であり、ビジネス文書や行政文書、ニュースなどでもよく登場する表現です。単なるお願いというよりも、やや改まったニュアンスを持つのが特徴です。
例えば、次のような場面で使われます。
例文
- 労働組合が会社側に賃上げの申し入れを行った。
- 地域住民が市役所に道路整備の申し入れをした。
- 取引先から契約条件の変更について申し入れがあった。
- 弁護士を通じて正式な申し入れを行う予定だ。
- 団体が政府に制度改善の申し入れを提出した。
このように、「申し入れ」は公式性のある要望や提案を伝える場面で使われる言葉です。
「申入れ」の意味
「申入れ」も意味は基本的に同じで、相手に対して意見や要望などを正式に伝えることを指します。
つまり、意味や使い方の点では「申し入れ」と大きな違いはありません。
では何が違うのかというと、送り仮名の付け方です。
「申し入れ」は
- 申し(動詞「申し入れる」)
- 入れ
という形で送り仮名を付けた表記です。一方、「申入れ」は途中の送り仮名を省いた形になっています。
このような違いは、日本語の複合語の送り仮名に関するルールによって生じます。複合語とは、「申し入れ」のように複数の語が組み合わさってできた言葉のことです。
一般的な日本語のルールでは、複合語の送り仮名は元の語の形に従うのが基本です。そのため、本来の形としては「申し入れ」が自然な書き方とされています。
しかし、日本語では場合によって送り仮名を省略することも認められており、その結果として「申入れ」という表記も使われるようになりました。
一般文章では両方使える
日本語の送り仮名の基本ルールは、「送り仮名の付け方」(昭和48年内閣告示第2号)という基準で定められています。
このルールでは、複合語の送り仮名について次のように規定されています。
まず原則として、複合語はそれぞれの語の送り仮名に従って書くとされています。例えば、次のような言葉です。
- 書き抜く
- 流れ込む
- 申し込む
この原則に従えば、「申し入れ」と書くのが基本になります。
しかし同時に、このルールには「許容」という規定もあります。これは、読み間違えるおそれがない場合には送り仮名を省略してもよいというものです。
例えば、次のような例があります。
- 書き抜く → 書抜く
- 申し込む → 申込む
- 取り扱い → 取扱い・取扱
この考え方からすると、「申し入れ」と「申入れ」もどちらの表記も認められることになります。
そのため、一般的な文章やブログ、新聞記事などでは、どちらの表記を使っても基本的に誤りではありません。
公用文では「申入れ」
ただし、役所や行政機関の文書、法令などの公用文では事情が異なります。
公用文では、「公用文における漢字使用等について」(平成22年内閣訓令第1号)という基準があり、ここで送り仮名の扱いが定められています。
この基準では、送り仮名については基本的に「送り仮名の付け方」に従うとしながらも、送り仮名を省略できる語を限定的に示しています。
つまり、公用文では「送り仮名を省略できる語は、例として挙げられている語のみ」という運用になっています。
その例の中には、次のような語があります。
- 引渡し
- 取扱い
- 問合せ
- 申込み
- 申入れ
このように、「申入れ」は公用文で送り仮名を省略して書く語として例示されているため、公用文では「申入れ」を用いるのが原則とされています。
一方、「申し入れ」は一般的には問題ない表記ですが、公用文では統一性を保つために省略形である「申入れ」が採用されているのです。
まとめ
本記事の内容をまとめると、以下のようになります。
| 項目 | 申し入れ | 申入れ |
|---|---|---|
| 意味 | 要望や意見を正式に伝えること | 同じ |
| 表記 | 送り仮名を付けた形 | 送り仮名を一部省略 |
| 一般文章 | 使用可能 | 使用可能 |
| 公用文 | 原則として使わない | 公用文ではこちらを使用 |
| 理由 | 複合語の本来の送り仮名 | 公用文の例示語に含まれる |
このように、「申し入れ」と「申入れ」は意味の違いではなく、送り仮名の違いによる表記差です。一般的な文章ではどちらも問題なく使えますが、公用文では「申入れ」を使うのが基本とされています。
場面によって適切な表記を選ぶことで、より正確で読みやすい文章になります。特に行政文書やビジネス文書では表記の統一が重要になるため、今回の違いを覚えておくと役立つでしょう。