「引き取り」と「引取り」の違い | 公用文ではどっちを使うべきか

「引き取り」と「引取り」は、どちらも日常的に見かける表記です。しかし、いざ文章に書くとなるとどちらを使えばよいのか迷うことがあります。

特に、公用文やビジネス文書では、送り仮名の扱いに一定のルールがあるため分かりにくいです。そこで本記事では、「引き取り」と「引取り」の違いや公用文での正しい使い分けをわかりやすく解説します。


目次

「引き取り」の意味

引き取り」とは、相手から物や人を受け取ること、または自分の側へ受け入れることを意味する言葉です。

「引き取る」という動詞が名詞化したもので、日常会話からビジネス文書まで幅広く使われます。例えば、荷物を受け取る場合や、人を自分の側で受け入れる場合などに用いられます。

具体的な意味としては、次のような使い方があります。

  • 物品や荷物を受け取ること
  • 依頼された物を回収すること
  • 人を自分のところで受け入れること

日常生活では、宅配サービスや店舗受け取りなどでよく使われる言葉です。

例文

  • 注文した商品を引き取りに行く。
  • 不要になった家具を業者が引き取りに来た。
  • 修理が終わったパソコンを店に引き取りに行った。
  • 退院後は家族が本人を引き取り、自宅で療養することになった。
  • クリーニングの衣類を、明日引き取りに行く予定だ。

このように「引き取り」は、一般的な文章では自然な表記として広く使われている形です。新聞記事やウェブサイト、日常の文章でもよく見かけるため、特に違和感を持つ人は少ないでしょう。

ただし、この表記は日本語の送り仮名の原則に基づいた形であり、公用文では別の書き方が採用される場合があります。


「引取り」の意味

引取り」も意味自体は「引き取り」と同じで、相手から物や人を受け取ることを表します。

違いは意味ではなく、送り仮名の付け方にあります。

「引取り」は、「引き取り」から送り仮名の「き」を省いた形です。日本語では、このように複合語の送り仮名を省略する表記が一定程度認められています。

たとえば、次のような表記も同じ仕組みです。

  • 申込み/申込
  • 打ち合わせ/打合せ
  • 取扱い/取扱

これらはすべて、複数の語が組み合わさった複合語です。

「引き取り」も

  • 引く
  • 取る

という二つの動詞が結びついてできた語であり、日本語の文法では複合語に分類されます。

そして複合語の場合、読み間違える恐れがない場合には送り仮名を省略できるというルールがあります。

そのため、一般的な文章では

  • 引き取り
  • 引取り

どちらの表記も誤りではありません。


送り仮名の基本ルール

「引き取り」と「引取り」の違いを理解するには、まず送り仮名の基本ルールを知っておく必要があります。

日本語の送り仮名は、「送り仮名の付け方」(昭和48年・内閣告示第2号)という文書の中で定められています。

このルールの中で、複合語の送り仮名については通則6で説明されています。

通則6では、複合語の送り仮名は基本的に元の語の送り仮名に従うとされています。

例えば、次のような例です。

  • 書き抜く
  • 申し込む
  • 行き帰り
  • 乗り降り

この原則に従えば、「引き取り」も

  • 引く
  • 取る

という元の動詞の送り仮名を残した形になるため、本来の形は「引き取り」になります。

しかし、同じ通則6には許容という規定もあります。

ここでは、読み間違えるおそれがない場合は送り仮名を省略できるとされています。

例えば、

  • 書き抜く → 書抜く
  • 申し込む → 申込む
  • 打ち合わせ → 打合せ

といった表記が認められています。

この規定によって、「引き取り」も

引き取り/引取り

のどちらも使えることになります。

つまり、一般的な日本語の文章では両方とも正しい表記ということです。


公用文では「引取り」を使う

一般文章では両方正しいとされる「引き取り」と「引取り」ですが、公用文では扱いが異なります。

公用文の送り仮名については、「公用文における漢字使用等について」(平成22年・内閣訓令第1号)という文書で定められています。

この訓令では、基本的に「送り仮名の付け方」に従うとされていますが、複合語の送り仮名の省略については独自の運用が行われています。

具体的には、送り仮名を省略できる語をあらかじめ例示しているという特徴があります。

例えば次のような語です。

  • 打合せ
  • 問合せ
  • 取扱い
  • 引渡し
  • 引取り

このように、約200語ほどが例示されています。

そして公用文では、これらの語を限定列挙として扱うのが一般的です。

つまり、

  • リストにある語 → 送り仮名を省略できる
  • リストにない語 → 原則どおり送り仮名を書く

という運用になります。

この例示語の中に「引取り」は含まれているため、公用文では「引取り」という表記が採用されています。そのため、役所の文書や行政文書などでは、基本的に「引取り」が標準的な書き方とされています。

このように、「引き取り」と「引取り」は意味は同じですが、公用文では「引取り」を使うのが基本と覚えておくとよいでしょう。


まとめ

本記事の内容を表にまとめると、以下のようになります。

項目引き取り引取り
表記引き取り引取り
意味物や人を受け取ること物や人を受け取ること
一般文章使用可使用可
公用文基本使わない推奨表記

「引き取り」と「引取り」は、意味の違いはなく、送り仮名の違いだけがあります。ただし、文章の種類によって適切な表記が変わる点には注意が必要です。

一般的な文章では、送り仮名のルールによって両方とも正しい表記として扱われます。一方で、公用文では送り仮名の省略が自由ではなく、例示された語に限って使用するという運用が行われています。

そのため、公用文では例示語に含まれている「引取り」が標準的な表記になります。文章を書く際には、一般文章なのか、公用文なのかを意識して使い分けることが大切です。

この記事を書いた人

大学卒業後、出版会社へと就職。退職後はフリーライターとして独立し、現在は言葉の意味や違いなど、日々の生活やビジネスに役立つ情報を発信しています。皆さんに「なるほど」と思ってもらえる内容をお届けすることを心がけています。




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