公用文の敬語の使い方|丁寧語・尊敬語・謙譲語はどう使う?

公用文を書くとき、「敬語を使ってもよいのだろうか」と迷うことがあります。一般的なビジネス文書では敬語を使うのが当然ですが、公用文では簡潔で分かりやすい表現も重視されます。

そのため、「です・ます」は使えるのか、「いたします」「ございます」「おります」はどうなのかなど、判断に迷いやすい表現も少なくありません。本記事では、丁寧語・尊敬語・謙譲語の基本から、公用文で注意したい敬語表現まで分かりやすく解説します。

目次

公用文と敬語

公用文では、敬語を一律に禁止しているわけではありません。

文化庁の「公用文作成の考え方」では、公用文を「告示・通知等」「記録・公開資料等」「解説・広報等」などに分類し、それぞれの目的や読み手に応じて、分かりやすい表現を選ぶという考え方が示されています。特に国民に直接向けた情報発信では、読み手に合わせた分かりやすく親しみやすい書き表し方が重視されています。

したがって、「公用文だから尊敬語や謙譲語は使ってはいけない」と考えるのは適切ではありません。必要な場面では、相手や話題となる人物への敬意を表すために敬語を使います。

敬語には、一般に「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」などがあります。文化庁の「敬語の指針」では、より細かく「尊敬語」「謙譲語Ⅰ」「謙譲語Ⅱ(丁重語)」「丁寧語」「美化語」の5種類に分けて説明しています。

公用文で特に基本となるのが「です・ます」です。「です・ます」は丁寧語に当たり、文章の相手に対して丁寧に述べる働きがあります。一方、尊敬語は相手や話題となっている人物の行為・状態などを高めて表現し、謙譲語は自分側の行為などをへりくだって表現します。

つまり、公用文の敬語では「敬語を使うかどうか」だけではなく、誰の行為について述べているのか、誰に向けた文章なのか、どのような目的の文書なのかを考えることが重要です。

丁寧語・尊敬語・謙譲語

丁寧語は、文章や会話を丁寧にするための敬語です。「です」「ます」が代表的な表現であり、公用文でも広く使われます。「でございます」は「です」より丁寧さの度合いが高い表現ですが、公用文では文書の種類や目的に応じて使い分ける必要があります。文化庁の「敬語の指針」でも、「ございます」は丁寧語として説明されています。

尊敬語は、相手や話題にしている人物の行為・状態などを高めて表現するものです。「おっしゃる」「いらっしゃる」「召し上がる」などが代表的です。また、「読む」を「お読みになる」、「利用する」を「利用される」のように表現することもできます。

謙譲語には、相手や話題の人物を立てるために自分側の行為を表現する「謙譲語Ⅰ」と、自分側の行為を丁重に述べる「謙譲語Ⅱ(丁重語)」があります。「伺う」「申し上げる」などは謙譲語Ⅰ、「参る」「申す」などは謙譲語Ⅱの代表例です。

この違いを理解していないと、相手の行為に謙譲語を使ったり、敬語を重ねすぎたりする間違いにつながります。例えば、「市長が参られました」のように、「参る」という謙譲語Ⅱに尊敬の「られる」を付けるのは適切ではありません。

また、「御利用される」のように、「御~する」という謙譲語Ⅰの形と「れる」という尊敬語を組み合わせる表現も避けます。文化庁も、「御利用される」ではなく「利用される」「御利用になる」などを適切な形として示しています。

公用文の敬語表現

公用文で敬語を使う場合は、意味や文脈に合った表現を選ぶことが重要です。特に「お・御」「れる・られる」「いたします」「おります」「させていただく」などは、使い方を迷いやすい表現です。次の例を参考に、適切な使い方を確認しましょう。

  1. 御報告します。
    「御報告」の「御」は、相手に関係する事柄などを丁寧に表す接頭語です。「お・御」は公用文でも使用されます。「お+和語」「御+漢語」が基本的な使い分けです。
  2. 市長が会議で発言されました
    「発言される」は「れる」を使った尊敬語です。「御発言されました」のように「御~」と「される」を重ねると、敬語を重ねすぎる形になるため避けます。文化庁も「御利用される」のような形を適切ではない例として示しています。
  3. 明日の説明会について、担当者が説明します
    「します」は丁寧な文末表現として使いやすい形です。「説明いたします」も一般の日本語として誤りというわけではありませんが、公用文では文書の目的や読み手に応じて、より簡潔な「説明します」を選ぶことがあります。公用文では、表現を一律に禁止するのではなく、文書の性格に応じて判断することが重要です。
  4. 担当者が現在、準備をしています
    「しております」は丁重な表現ですが、すべての公用文で禁止されているわけではありません。ただし、簡潔さを重視する文書では「しています」とする方が分かりやすい場合があります。「おります」や「しております」を機械的に誤用と判断しないことが大切です。
  5. 今回の手続について、必要な書類を提出していただきます
    「させていただく」は便利な表現ですが、何にでも付ければよいわけではありません。文化庁は、「させていただく」について、基本的に自分側が行うことについて相手側などの許可を受け、そのことで恩恵を受けるという条件を挙げています。したがって、必要性のない場面で過剰に使うのではなく、意味に合っているかを考える必要があります。

このように、公用文の敬語では「この言葉は敬語だから禁止」という考え方よりも、文書の目的に合っているか、相手にとって分かりやすいか、敬語の形として適切かを確認することが大切です。

二重敬語に注意

公用文に限らず、敬語を使うときに注意したいのが二重敬語です。二重敬語とは、一つの語について同じ種類の敬語を重ねて使うことをいいます。

例えば、「お読みになられる」は、「お読みになる」という尊敬語に、さらに「れる」という尊敬語を加えたものです。そのため、一般には二重敬語として適切ではないとされています。文化庁の「敬語の指針」でも、「お読みになられる」を二重敬語の例として挙げています。

ただし、二重敬語がすべて誤りというわけではありません。長く使われる中で慣用として定着している表現もあります。例えば、「お召し上がりになる」「お見えになる」「お伺いする」「お伺いいたす」「お伺い申し上げる」などは、二重敬語に当たるものの、習慣として定着した表現として認められています。

また、「お読みになっていらっしゃいます」のように、複数の敬語表現を「て」でつないだものは、単純な二重敬語とは異なります。このような形は「敬語連結」と呼ばれ、個々の敬語が適切に使われていれば、基本的に許容されています。

公用文では、ただでさえ文章を簡潔に分かりやすくすることが求められるため、敬語を必要以上に重ねないことが重要です。「おっしゃられる」「お召し上がりになられる」「御利用される」などは避け、「おっしゃる」「お召し上がりになる」「御利用になる」など、すっきりした表現を選ぶとよいでしょう。

さらに、「食べれる」「見れる」のようないわゆる「ら抜き言葉」や、「させていただく」の過剰使用にも注意が必要です。敬語は多く付ければ付けるほど丁寧になるわけではありません。相手への敬意と文章の分かりやすさを両立させることが、公用文の敬語では重要です。

まとめ

本記事の内容をまとめると、以下のようになります。

項目ポイント
丁寧語「です・ます」が代表的で、公用文でも基本的に使用できる
尊敬語相手や話題の人物の行為・状態などを高めて表現する
謙譲語自分側の行為などをへりくだって表現する。公用文でも必要に応じて使用できる
お・御「お+和語」「御+漢語」が基本。「御報告」など公用文でも使われる
れる・られる尊敬語として使えるが、「御~される」のような重ね方には注意する
いたします一律に禁止するのではなく、文書の目的や簡潔さを考えて使い分ける
しております・おります公用文で一律に禁止されるものではない。文脈に応じて「しています」「います」なども選ぶ
ございます丁寧語の一種。文書の種類や目的に応じて「です」などと使い分ける
させていただく相手の許可や恩恵などの意味に合っているかを確認して使う
二重敬語原則として避けるが、「お召し上がりになる」「お伺いする」など定着した表現もある
敬語連結「お読みになっていらっしゃる」のように、敬語を「て」でつないだ形。二重敬語とは区別する
基本的な考え方「敬語だから禁止」ではなく、文書の目的・読み手・敬意の必要性・分かりやすさを考えて使い分ける

公用文では、敬語そのものを減らすことが目的なのではありません。必要な敬意を保ちながら、読み手にとって理解しやすい文章にすることが重要です。迷った場合には、敬語を重ねるのではなく、「誰の行為なのか」「誰に対して敬意を示すのか」「その敬語が本当に必要なのか」を確認すると、適切な表現を選びやすくなります。

また、敬語そのものの使い方については、文化庁の「敬語の指針」が参考になります。公用文を書く際には、これらを踏まえて、正しい敬語であることだけでなく、読み手にとって分かりやすい表現になっているかまで確認するとよいでしょう。

この記事を書いた人

大学卒業後、出版会社へと就職。退職後はフリーライターとして独立し、現在は言葉の意味や違いなど、日々の生活やビジネスに役立つ情報を発信しています。皆さんに「なるほど」と思ってもらえる内容をお届けすることを心がけています。




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