お役所言葉の言い換え一覧|「お見込みのとおり」「されたい」などの意味

役所から届いた文書を読むと、「この言葉はどういう意味だろう」と感じたことはないでしょうか。特に「お見込みのとおり」「~されたい」「遺漏」「当該」などは、行政文書でよく見られる表現です。

これらは意味を知らなければ分かりにくい一方、役所では慣用的に使われています。では、こうした「お役所言葉」は、どのような普通の日本語に言い換えられるのでしょうか。本記事では、代表的なお役所言葉の意味や言い換え、使い方を分かりやすく解説します。

目次

お役所言葉とは

お役所言葉」とは、行政機関や役所の文書などで使われる、一般の日常生活ではあまり使われない表現や堅苦しい言葉のことです。「役所言葉」「役所用語」などと呼ばれることもあります。

例えば、「可及的速やかに」「遺漏のないよう」「当該」「事由」「齟齬」「遡及して」「~されたい」などが代表的な表現です。これらは必ずしも誤った日本語ではありませんが、一般の人にとっては意味が分かりにくいことがあります。

行政文書は、制度や手続きについて正確に伝える必要があります。そのため、法律や制度に関係する専門用語を使用することがあります。しかし、専門用語を使う必要がない場面まで難しい言葉を使うと、読み手に負担をかけることになります。

例えば、「可及的速やかに提出してください」と書くよりも、「できるだけ早く提出してください」と書いたほうが、求められていることがすぐに分かります。

また、「当該施設」と書かれている場合も、「その施設」としたほうが、一般向けの文章では自然な場合があります。

重要なのは、「役所で使われている言葉だから使う」のではなく、読み手にとって分かりやすく正確に伝わるかを考えることです。

一方で、すべてのお役所言葉を機械的に言い換えればよいわけではありません。法令上の正式な用語や制度名、専門的な意味を持つ言葉などは、正確性を保つためにそのまま使用する必要があります。文書の種類や相手に応じて、適切に使い分けることが大切です。

言い換え一覧

ここでは、行政文書などで見かけることの多いお役所言葉と、一般的な言葉への言い換えを紹介します。

お役所言葉言い換え
可及的速やかに(かきゅうてきすみやかに)できるだけ早く
遺漏(いろう)漏れ
当該(とうがい)その~、この~
事由(じゆう)理由
齟齬(そご)食い違い
~されたい~してください
所要の(しょようの)必要な
従前の(じゅうぜんの)これまでの
遅滞なく(ちたいなく)遅れないように
留意する(りゅういする)注意する、気をつける
いかなるどのような
主たる(しゅたる)主な
所定の(しょていの)定められた
数次にわたり(すうじにわたり)たびたび、何回も
遡及して(そきゅうして)さかのぼって
特段の(とくだんの)特別の
多大なる(ただいなる)多くの
低廉な(ていれんな)安い
顛末(てんまつ)事の経過
誤謬(ごびゅう)誤り
疑義(ぎぎ)疑問
起因する(きいんする)原因となる、基づく
寄与する(きよする)貢献する
資する(しする)役立つ、貢献する
堅持する(けんじする)堅く守る
励行する(れいこうする)努力する、実行する
遺憾のないよう(いかんのないよう)適切に
御配慮願います(ごはいりょねがいます)お願いします
願いたいお願いします
お願いしたいお願いします
御査収ください(ごさしゅうください)お受け取りください
御了知のとおり(ごりょうちのとおり)ご存じのとおり
祈念します(きねんします)お祈りします
貴殿(きでん)あなた、○○様
~にて~で
~方について、~方~について、~を
~の用に供する(~のようにきょうする)~に使う
捺印する(なついんする)印を押す
封緘(ふうかん)
返戻する(へんれいする)戻す、返却する
還付する(かんぷする)返す、返還する
償還(しょうかん)返還
抵触(ていしょく)触れる
具有する(ぐゆうする)(~が)ある、(~を)備えている
隠ぺいする(いんぺいする)隠す
歪曲する(わいきょくする)ゆがめる
阻む(はばむ)妨げる
逸失した(いっしつした)失った
割愛(かつあい)省略
過般(かはん)先ごろ
先般(せんぱん)先に、先日
目下(もっか)今現在
みだりにむやみに
多寡(たか)多少、多い少ない
諸般の(しょはんの)いろいろな、さまざまな
種々の(しゅじゅの)いろいろな、さまざまな
一環として(いっかんとして)ある大きな取り組み・活動の一部分として
けだし考えてみると、あるいは
~するべく~するように、~するために
涵養(かんよう)養成、育成
瑕疵(かし)きず、欠陥
狭隘(きょうあい)狭い
懈怠(けたい)怠り
喧噪(けんそう)騒がしさ、やかましさ
結実(けつじつ)実り、結果
橋梁(きょうりょう)
陳述する(ちんじゅつする)述べる
~に鑑み(~にかんがみ)~に照らして、(~を)考慮して

このように、お役所言葉の中には、一般的な日本語に置き換えることで意味が分かりやすくなるものが数多くあります。

特に「可及的速やかに」「遺漏」「所要の」「当該」「事由」「齟齬」などは、日常会話ではあまり使われないため、一般向けの文書では言い換えを検討するとよいでしょう。

ただし、言い換えはあくまで一例です。同じ言葉でも文章の意味によって適切な表現が変わることがあります。

代表例の使い方

ここでは、特に分かりにくい表現を取り上げ、意味と使い方を例文で確認します。

可及的速やかに

「可及的速やかに」は、「できるだけ速やかに」「可能な限り早く」という意味です。「可及的」は「できる限り」という意味を持ちます。

意味は通じても、一般の人には堅苦しく感じられるため、住民向けの文書などでは「できるだけ早く」とするほうが分かりやすいです。

  1. 必要な書類を可及的速やかに提出してください。
  2. 事故が発生した場合は担当部署へ可及的速やかに連絡してください。
  3. 問題の原因を調査し、可及的速やかに対応します。
  4. 修繕工事を可及的速やかに実施する必要があります。
  5. 申請内容を確認し、可及的速やかに結果を通知します。

一般向けに書き換えるなら、「必要な書類をできるだけ早く提出してください」のように書きます。

遺漏

「遺漏」は、必要なものが抜け落ちていることや、漏れがあることを意味します。「遺漏のないように」という形で使われることが多い表現です。

例えば、「遺漏なく手続きを行う」は「漏れなく手続きを行う」という意味です。

  1. 必要書類に遺漏がないか確認してください。
  2. 申請内容に遺漏がないよう注意してください。
  3. 関係者への連絡に遺漏がないようにしてください。
  4. 調査結果に遺漏がないことを確認しました。
  5. 必要な手続きに遺漏が生じないよう対応します。

一般向けの文書では、「漏れがないように」「漏れなく」などにすると意味が伝わりやすくなります。

当該

「当該」は、今話題にしている対象となるものを指す言葉です。行政文書や法令などでは頻繁に使われます。

例えば、「当該施設」と書けば、「現在話題になっているその施設」という意味になります。一般向けの文章では「その施設」「この施設」などに言い換えられることが多いです。

  1. 当該施設の利用者を対象とします。
  2. 当該事業について必要な手続きを行ってください。
  3. 当該書類を窓口へ提出してください。
  4. 当該制度を利用する場合は申請が必要です。
  5. 当該事業者に対して通知を行いました。

ただし、「当該」は対象を明確にするために便利な言葉でもあります。法令や行政文書では、意味を正確にするためにあえて使われることもあります。

~されたい

「~されたい」は、行政文書などで相手に一定の行動を求めるときに使われる表現です。一般的には「~してください」という意味に近く、通知や依頼などで見られます。

例えば、「詳細については別添資料を参照されたい」は、「詳細については別添資料を参照してください」という意味です。

  1. 詳細については、別添資料を参照されたい
  2. 必要事項を確認の上、申請されたい
  3. 関係者に対して、内容を十分に周知されたい
  4. 今後、同様の事例が発生しないよう注意されたい
  5. 手続きに必要な書類を確認し、期限までに提出されたい

一般向けの文書では、「~されたい」よりも「~してください」としたほうが、相手に求めている行動が直接的に伝わり、自然で分かりやすい表現になります。

お見込みのとおり

「お見込みのとおり」は、相手が考えていることや予想している内容が、そのとおりであることを伝える表現です。行政文書や公的な通知などで使われることがあります。

例えば、「ご質問の件につきましては、お見込みのとおりです」は、「ご質問の件については、お考えのとおりです」という意味になります。

  1. ご認識の内容は、お見込みのとおりです。
  2. 今回の手続きについては、お見込みのとおりです。
  3. ご質問の件につきましては、お見込みのとおりです。
  4. 今後の事業の進め方については、お見込みのとおりです。
  5. 今回の申請手続きについては、お見込みのとおりです。

一般向けの文書では、「お見込みのとおり」よりも、「お考えのとおり」「ご認識のとおり」「ご推察のとおり」など、文章の意味に応じて具体的な表現にしたほうが分かりやすいです。

なお、「お見込み」は単に「予想」という意味だけではなく、相手が考えていることや見通し、判断などを指す場合があります。そのため、文脈に応じて適切な言葉に言い換えることが大切です。

遅滞なく

「遅滞なく」は、遅れることなく、速やかにという意味の表現です。行政文書や法令などで、届出や報告、手続きなどを速やかに行うよう求める場合に使われます。

例えば、「変更があった場合は遅滞なく届け出てください」は、「変更があった場合は、遅れることなく届け出てください」という意味です。

  1. 住所を変更した場合は、遅滞なく届け出てください。
  2. 事故が発生した場合は、遅滞なく担当部署へ報告してください。
  3. 必要な書類を受け取った後、遅滞なく内容を確認してください。
  4. 手続きが完了した場合は、申請者に遅滞なく通知します。
  5. 変更内容を確認した後、遅滞なく必要な対応を行います。

一般向けの文書では、「遅れないように」「速やかに」などに言い換えると、意味が伝わりやすくなります。

お役所言葉の注意点

お役所言葉を言い換えるときに大切なのは、「難しい言葉をなくすこと」ではなく、「正確で分かりやすい文章にすること」です。

例えば、「橋梁」を「橋」に、「事由」を「理由」に、「遺漏」を「漏れ」にすることで意味が変わらないのであれば、一般向けの文章では積極的に言い換えることができます。

一方で、法令用語や制度上の正式名称については注意が必要です。例えば、法律や条例に定められている用語を、分かりやすくするために別の言葉へ変更すると、かえって正確性を失う可能性があります。

また、表彰状や式典関係の文書などでは、一般的な文章とは異なる定型表現が使われることがあります。このような場合も、単純に分かりやすい言葉へ直せばよいとは限りません。

さらに、行政文書では略語にも注意が必要です。「国調」「社協」「児扶手」のような略語は、役所内部では通じても、一般の人には分からないことがあります。そのため、国勢調査、社会福祉協議会、児童扶養手当のように正式名称を書くことが基本です。

内部向けの文書であっても、行政文書は後から住民に公開される可能性があります。そのため、起案文書や報告書、文書の件名、フォルダ名などでも、意味の分かりにくい略語を安易に使用しないことが大切です。

最終的には、文章の目的や読み手に応じて判断する必要があります。住民向けの案内であれば、特に「普通の日本語で読んだときに意味が理解できるか」を意識するとよいでしょう。

まとめ

本記事の内容をまとめると、以下のようになります。

ポイント内容
お役所言葉行政文書などで使われる、一般には分かりにくい堅い表現
言い換えの目的読み手に内容を正確かつ分かりやすく伝えること
可及的速やかにできるだけ早く
遺漏漏れ
当該その~・この~
~されたい~してください
遅滞なく遅れないように・速やかに
注意点法令用語や正式名称などは、必要に応じてそのまま使用する
略語国調・社協などは、正式名称を使うことが基本
基本的な考え方難しい言葉を単純になくすのではなく、正確さと分かりやすさを両立する

「可及的速やかに」「遺漏」「当該」「~されたい」などのお役所言葉は、行政文書ではよく使われています。しかし、一般の人を対象とする文書では、「できるだけ早く」「漏れ」「その~」「~してください」など、意味が伝わりやすい言葉に置き換えるのが基本です。

ただし、すべての表現を一律に言い換えるのではなく、法令上の用語なのか、専門用語なのか、一般向けの説明なのかを考えて使い分けることが大切です。

この記事を書いた人

大学卒業後、出版会社へと就職。退職後はフリーライターとして独立し、現在は言葉の意味や違いなど、日々の生活やビジネスに役立つ情報を発信しています。皆さんに「なるほど」と思ってもらえる内容をお届けすることを心がけています。




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