「届出」と「届け出」の違いとは?公用文での使い分けも解説

「届出」と「届け出」は、どちらも「とどけで」と読むことができる言葉です。しかし、公用文や行政関係の書類では、どちらを使ってもよいとは限りません。

ではなぜ同じ「とどけで」なのに、「届出」と「届け出」の2通りの表記があるのでしょうか。本記事では、送り仮名のルールを踏まえながら、「届出」と「届け出」の違い、公用文での正しい使い分けを分かりやすく解説します。

目次

「届出」と「届け出」の違い

「届出」と「届け出」は、基本的な意味に大きな違いはありません。どちらも、行政機関や勤務先などに対して、必要な事項を知らせることや、そのために提出する書類・手続を指します。

ただし、公用文では「届出」と「届け出」を、語の働きによって使い分けることが重要です。

届出」は、主に名詞として使う場合の表記です。例えば、「届出を提出する」「届出が必要である」「届出書を作成する」などのように、手続や書類そのものを表します。

一方、「届け出」は、主に動詞「届け出る」の一部として使う表記です。「市役所に届け出る」「変更を届け出た」「速やかに届け出てください」など、実際に何らかの事項を知らせる行為を表します。

つまり、実務上は次のように整理すると分かりやすいでしょう。

表記主な使い方
届出名詞届出を提出する、届出書
届け出る動詞市役所に届け出る
届け出た動詞の過去形変更を届け出た
届け出て動詞の連用形速やかに届け出てください

「届出」と「届け出」は、単にどちらか一方だけが正しいという関係ではありません。名詞として使うのか、動詞として使うのかによって送り仮名が変わると考えることが大切です。

公用文の送り仮名

公用文の送り仮名を考えるときは、国が定める「送り仮名の付け方」を基本的な基準として考えます。公用文では、これに加えて「公用文における漢字使用等について」などのルールに従います。

「送り仮名の付け方」には、通則1から通則7までの規定があり、それぞれ本則や例外、許容について定められています。

特に「届出」と関係が深いのが、通則6の複合語に関する送り仮名の扱いです。

通則6では、複合語の送り仮名について、原則として、それぞれの単独の語における送り仮名の付け方に従うとされています。例えば、「書き抜く」「申し込む」「流れ込む」などが該当します。

一方、通則6には、読み間違えるおそれがない場合に、送り仮名を省略できる「許容」もあります。例えば、「申し込む」を「申込む」、「書き抜く」を「書抜く」とするような表記です。

公用文では、送り仮名の「許容」は原則として広く適用するわけではありませんが、通則6の許容については適用される扱いがあります。

「届出」も、この送り仮名を省略する考え方と関係しています。

「届け出」という表記を基準に考えると、「届出」は「け」を省略した形です。公用文では、名詞として慣用が固定している「届出」のような語について、送り仮名を省略する表記が用いられます。

そのため、「届出を受理する」「届出書を提出する」「届出事項を確認する」など、名詞として使用する場合には、「届出」と表記するのが基本です。

なお、「届出」は送り仮名を省略した表記ですが、読み方まで変わるわけではありません。現在は一般に、「届出」は「とどけで」と読みます。

「届出」の例文

ここでは、「届出」を名詞として使う場合と、「届け出る」を動詞として使う場合を具体的に確認します。表記の違いを見ると、送り仮名の使い分けが分かりやすくなります。

  1. 住所を変更した場合は、所定の届出を提出してください。
  2. 届出の内容に変更がある場合は、速やかに担当課へ連絡してください。
  3. 申請に必要な届出書を窓口で受け取った。
  4. 事業を開始する場合には、所定の届出が必要となる。
  5. 担当者は提出された届出を確認し、受理した。

これらの「届出」は、いずれも名詞として使われています。「届出を」「届出の」「届出書」「届出が」のように、助詞などを伴って文の中で扱われていることがポイントです。

一方、動詞として使う場合には、「届け出る」のように送り仮名を付けます。

  1. 住所を変更した場合は、市役所に届け出る必要があります。
  2. 変更事項を担当部署に届け出た
  3. 転居した場合は、速やかに届け出てください。
  4. 紛失した社員証について、総務部に届け出るよう指示された。
  5. 事業内容に変更が生じたため、所管する行政機関に届け出た

このように、「届出」は名詞、「届け出る」は動詞と覚えると、実務で迷いにくくなります。

例えば、「届出をする」は「届出」という名詞を使っているため送り仮名を付けません。一方、「届け出る」は「届け出る」という動詞なので、「け」を省略しません。

「届出る」という表記を見かけることもありますが、動詞として使う場合は、基本的に「届け出る」とするのが適切です。

「届出」と似た表記

公用文では、「届出」以外にも、送り仮名を省略した表記が使われる語があります。似たような手続を表す言葉でも、表記が一律ではないため、個別に確認することが大切です。

例えば、「申出」「申立て」「打合せ」「問合せ」「申合せ」などは、行政文書や公的な資料で見かけることがあります。「申し出る」「申し立てる」「打ち合わせる」「問い合わせる」といった語と関係していますが、公用文では名詞として使う場合に送り仮名を省略した表記が許容されています。

ただし、これらをすべて「名詞なら必ず送り仮名を省略する」と考えるのは適切ではありません。語によって扱いが異なるため、文書を作成する際には、個々の語について公用文の基準を確認する必要があります。

「届出」もこうした公用文特有の表記の一つとして捉えると、なぜ行政文書で「届け出」より「届出」をよく目にするのかが理解しやすくなります。特に公的な通知や申請書などを作成するときは、一般的な文章での表記ではなく、公用文として定められた表記を意識することが重要です。

まとめ

本記事の内容をまとめると、以下のようになります。

項目表記・読み方ポイント
名詞届出(とどけで)公用文では送り仮名を省略する
動詞届け出る「け」を省略しない
過去形届け出た動詞なので送り仮名を付ける
依頼・指示届け出てください動詞として使う
複合語届出書「届出」は名詞
複合語届出事項「届出」は名詞
読みとどけで「届出」の一般的な読み
公用文での基本届出名詞として使う場合

「届出」と「届け出」は、名詞として使うか、動詞として使うかによって、適切な表記が変わります。公用文では、名詞として使う「とどけで」は、送り仮名を省略して「届出」とするのが基本です。

一方、動詞として使う場合は、「届け出る」「届け出た」「届け出てください」のように送り仮名を付けます。公用文を書く際には、「届け出」と「届出」のどちらが正しいかだけを暗記するのではなく、その語が名詞なのか動詞なのかを確認することが重要です。

この記事を書いた人

大学卒業後、出版会社へと就職。退職後はフリーライターとして独立し、現在は言葉の意味や違いなど、日々の生活やビジネスに役立つ情報を発信しています。皆さんに「なるほど」と思ってもらえる内容をお届けすることを心がけています。




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