公文書の主語・述語・目的語の書き方|分かりやすい文章を書く11のポイント

公文書を書くとき、「文法的には間違っていないはずなのに、なぜか読みにくい」と感じることがあります。その原因の一つが、主語・述語・目的語の関係が分かりにくくなっていることです。

特に、長い一文の中で主語が変わったり、必要な主語が省略されたりすると、文章の意味を正確に読み取ることが難しくなります。そこで本記事では、公文書における主語・述語・目的語の使い方をわかりやすく解説していきます。

目次

主語・述語・目的語の基本

公文書を分かりやすく書くためには、まずそれぞれの役割を理解しておく必要があります。

主語とは、基本的に「誰が」「何が」に当たる部分です。述語は「どうする」「どうである」といった、主語について説明する部分を指します。目的語は、動作の対象となる「何を」に当たる部分です。

例えば、「市が道路を整備する」という文章では、「市が」が主語、「道路を」が目的語、「整備する」が述語です。このように、誰が・何を・どうするのかが明確になっていれば、文章の意味を読み手が理解しやすくなります。

一方、日本語では主語を省略できるため、文章の途中で主語が変わっても、それが明示されないことがあります。特に公文書では、主語と述語の対応関係が崩れると、誰が何をするのかが曖昧になり、誤解につながる可能性があります。

例えば、「市は道路を整備し、住民に利用を促す」という文では、「市は」が「整備し」と「促す」の両方の主語になっています。主語が一貫しているため、意味を理解しやすい文章です。

逆に、「市は道路を整備し、住民が安全に利用できる施設を目指す」とすると、「目指す」の主語が市なのか住民なのか、文脈によって分かりにくくなる場合があります。一文を書くときは、主語と述語を取り出して確認することが重要です。

また、主語と述語が対応していない文章は「文章のねじれ」と呼ばれます。文章を書き終えたら、目的語や修飾語などをいったん取り除き、「主語は何か」「それに対応する述語は何か」を確認すると、ねじれを見つけやすくなります。

公文書では、内容を詳しく説明しようとするあまり、一文が長くなることがあります。しかし、情報を詰め込むほど主語と述語の関係は分かりにくくなります。一つの文で伝える内容を整理し、必要に応じて文を分けることも、分かりやすい公文書を書くための基本です。

分かりやすい文章の11ポイント

公文書の主語・述語・目的語を適切に使うためには、文法だけでなく、文章全体の組み立て方にも注意が必要です。ここでは、分かりやすい文章を書くための11のポイントを整理します。

1.主語と述語を対応させる

最も基本的なのは、主語と述語を正しく対応させることです。文章を書いた後、主語と述語だけを抜き出して確認すると、文章のねじれを発見しやすくなります。

2.主語をなるべく前に置く

主語と述語の間に長い説明を入れると、何が主語なのか分かりにくくなります。主語はできるだけ文の前半に置きましょう。

3.必要な主語や助詞を省略しない

日本語では主語を省略できますが、公文書では省略しすぎると意味が曖昧になります。「誰が」「何をするのか」が分からない場合は、主語を明示します。

4.主語を統一する

一文の途中で主語が変わる場合は注意が必要です。主語が変わるなら、新しい主語を明示することで文章の意味が分かりやすくなります。

5.条件句の主語を明確にする

「~したとき」「~の場合」「~するとき」などの条件句では、主語が抜けやすくなります。条件に該当する人物や組織を明確にしましょう。

6.一文を短くする

一文が長くなるほど、主語と述語の関係が分かりにくくなります。目安として一文を40~50文字程度に抑え、長くなる場合は文を分けるとよいでしょう。

7.中止法を多用しない

「~し、」「~であり、」などを連続させると、文章の関係が分かりにくくなります。内容に応じて文を分けることが大切です。

8.手段と目的を整理する

「何を行うのか」という手段と、「何を実現したいのか」という目的を整理します。基本的には「手段→目的」の順にすると、文章の流れが理解しやすくなります。

9.無生物主語を必要以上に使わない

制度や政策、課題などを主語にすると、誰が行為をするのか分かりにくくなる場合があります。可能な場合は、市や担当者など、行為の主体を主語にすると明確になります。

10.受け身形を必要以上に使わない

受け身形は客観的な表現に使えますが、主体が分かりにくくなることがあります。誰が行うのかを明確にできる場合は、能動的な表現を検討します。

11.並列関係を明確にする

「AとBの半数」のように、どの言葉に修飾語がかかっているのか曖昧な表現は避けます。「それぞれ」「全員」「半数」などを適切に使い、対象を明確にします。

これらは別々のルールに見えますが、共通する考え方があります。それは、読み手が文章の意味を推測しなくても理解できるようにすることです。

主語・述語の例文で確認

ここでは、実際の公文書で起こりやすい文章の問題を例にして確認します。ポイントは、単に文法的に正しいかどうかではなく、誰が何をするのかが明確になっているかを見ることです。

  1. 主語と述語を対応させる

× 活動内容は、子供たちを集めてソフトボールの試合をしたり、自然探検などをしています。

○ 私たちは、子供たちを集めてソフトボールの試合や自然探検を行っています。

「活動内容は」が「しています」という行為をするわけではないため、主語と述語が対応していません。「私たちは」とすることで、誰が活動するのかが明確になります。

  1. 条件句の主語を明確にする

× 市長は、この条例に違反したときは、利用許可を取り消すことができる。

○ 市長は、○○施設を利用する者がこの条例に違反したときは、利用許可を取り消すことができる。

「この条例に違反した」のが誰なのかが明確ではありません。条件句の中に主語を補うことで、意味が明確になります。

  1. 主語を統一する

× 係長は、主任に業務の効率化をさせ、税金を大切に使う職員にならなければならない。

○ 係長は、主任に業務の効率化をさせ、税金を大切に使う職員として育てなければならない。

×の文章では、前半と後半で実質的な主語が変わっています。述語を「育てなければならない」とすることで、係長が行う行為として統一できます。

  1. 長い文章を分ける

× 次の欄に要求事項を記入し、要求事項がない場合は「ない」と記入し、その理由を記入してください。

○ 次の欄に要求事項を記入してください。要求事項がない場合は「ない」と記入し、その理由を記入してください。

複数の指示を一文に詰め込むと、どの条件で何をするのか分かりにくくなります。指示ごとに文を分けると、読み手が理解しやすくなります。

  1. 並列関係を明確にする

× 研修には、課長補佐と係長の半数を出席させてください。

○ 研修には、課長補佐と係長のそれぞれ半数を出席させてください。

「課長補佐と係長の半数」では、課長補佐と係長のそれぞれが半数なのか、係長だけが半数なのか分かりません。「それぞれ半数」とすることで、対象を明確にできます。

このように、文章を直すときは、単に言葉を置き換えるだけではなく、主語・述語・目的語の関係と、修飾語がどの言葉にかかるのかを確認することが大切です。

主語・述語を明確にする書き方

公文書では、情報を正確に伝える必要があるため、文章を書くときには「詳しく書くこと」と「分かりやすく書くこと」を区別する必要があります。情報を多く盛り込めば、必ずしも分かりやすい文章になるわけではありません。

特に注意したいのが、一文の中に複数の行為や条件、目的を詰め込むことです。「~し、~し、~する」と続けると、どの行為の主体が誰なのか分かりにくくなります。

例えば、

この政策の目的は、高齢者福祉を維持向上させることであり、令和6年度から実施されます。

という文では、「政策の目的」と「政策の実施」という異なる内容が一文に含まれています。

これを、

この政策は、高齢者福祉を維持向上させることを目的として、令和6年度から実施されます。

とすれば、一文の中で内容を整理できます。また、

この政策の目的は、高齢者福祉を維持向上させることです。この政策は、令和6年度から実施されます。

のように、二つの文に分ける方法もあります。

また、「~を実現するために、~を行う」という文章が長くなった場合は、「~を行うことで、~を実現する」のように手段を先に示すと、内容を整理しやすくなります。

例えば、

市内公共交通の現状を調査・把握することで、公共交通の利便性向上を目指す。

とすれば、「調査・把握する」という手段と、「利便性向上を目指す」という目的の関係が分かりやすくなります。

さらに、公文書では「誰が責任を持って行うのか」を明確にすることも重要です。「制度が実施する」「政策が検討する」のように、制度や政策を行為の主体として扱うと、文章が分かりにくくなる場合があります。実際に行為をするのが市や担当部署などであれば、それを主語として示すほうが明確です。

受け身形についても同様です。「実施される」「検討される」「確認される」などの表現をすべて避ける必要はありませんが、主体を明確にしたほうがよい場合は、能動態に置き換えることを検討します。

そして、文章を書き終えたら、最後に主語と述語だけを取り出して確認します。「Aは、……する」という形で自然につながるかを確認し、途中で主語が変わっていないか、必要な主語が省略されていないかをチェックします。

「誰が」「何を」「どうする」の3点が明確かを確認するだけでも、公文書の分かりやすさは大きく変わります。

まとめ

本記事の内容をまとめると、以下のようになります。

ポイント書き方の基本
主語と述語主語と述語を正しく対応させる
主語の位置主語をなるべく文の前に置く
主語の省略必要な主語や助詞を省略しない
主語の統一一文の中で主語を安易に変えない
条件句「~の場合」「~したとき」の主語を明確にする
一文の長さ長い文は分け、40~50文字程度を目安にする
中止法「~し、」「~であり、」の連続を避ける
手段と目的「手段→目的」の順に整理する
無生物主語行為の主体を明確にする
受け身形必要に応じて能動態にする
並列「AとBの半数」などの関係を明確にする

公文書では、正確な情報を伝えるために、主語・述語・目的語の関係を明確にすることが重要です。特に、一文が長くなったり、主語が省略されたりすると、文章のねじれや意味の曖昧さが生じやすくなります。

文章を書く際には、主語と述語を対応させ、必要な主語を省略せず、主語をできるだけ前に置くことを意識しましょう。また、一文を短くし、中止法や受け身形を必要以上に使わないことも、分かりやすい公文書につながります。

さらに、手段と目的の順番を整理したり、無生物主語を避けたり、並列関係を明確にしたりすることで、読み手が意味を迷わず理解できる文章になります。

この記事を書いた人

大学卒業後、出版会社へと就職。退職後はフリーライターとして独立し、現在は言葉の意味や違いなど、日々の生活やビジネスに役立つ情報を発信しています。皆さんに「なるほど」と思ってもらえる内容をお届けすることを心がけています。




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