公用文の言い換え一覧。外来語・難解語・曖昧表現の例を紹介

公用文は、行政機関や自治体などが住民に情報を伝える際に使う文章です。ただ、難しい漢語や古い表現、意味が曖昧な言葉を多用すると、内容が伝わりにくくなることがあります。

また、専門用語や外来語についても、読み手に応じた使い方を考える必要があります。この記事では、公用文で使われる言葉の特徴を確認しながら、分かりやすい言い換え表現を具体的に紹介します。

目次

公用文の言い換えの基本

公用文では、読み手が内容を正確に理解できるよう、分かりやすく簡潔な表現を用いることが重要です。特に、住民向けのお知らせや手続きの案内では、幅広い年齢や知識を持つ人が読むことを想定し、専門的な知識がなくても理解できる文章を目指します。

例えば、「必要書類を持参の上、窓口に参集してください」という表現は、「必要書類をお持ちの上、窓口にお越しください」と言い換えることができます。「参集」は人が集まることを表す言葉ですが、一般向けの案内では「お越しください」のほうが自然で、意味も伝わりやすくなります。

また、「適宜対応してください」という表現も、使い方によっては注意が必要です。「適宜」は状況に応じて適切に判断することを意味しますが、何をどのように行えばよいのかが読み手に伝わらない場合があります。具体的な対応方法が決まっているなら、「必要書類を確認し、不足がある場合は担当窓口に連絡してください」などと説明すると明確になります。

公用文を分かりやすくするためには、難しい言葉を簡単な言葉に置き換えるだけでなく、文章全体の構成も見直す必要があります。一文に多くの情報を詰め込むと、読み手が内容を整理しにくくなるためです。伝える内容を分け、必要に応じて箇条書きや表を使うと、情報の関係が分かりやすくなります。

さらに、読み手に求める行動を明確にすることも大切です。「早めに申請してください」では、いつまでに手続きをすればよいのかが分かりません。期限が決まっている場合は、「10月10日までに申請してください」のように具体的に示すと、読み手が行動しやすくなります。

このように、公用文の言い換えでは、平易な言葉を選ぶことに加え、正確性を保ちながら、読み手が内容を理解して行動できる文章にすることが基本です。

難しい言葉の言い換え一覧

公用文には、日常会話ではあまり使われない漢語や、古風で堅い印象を与える表現が登場することがあります。こうした言葉は、行政や法律の分野では使われていても、一般の読み手には意味が伝わりにくい場合があります。

住民向けの文書では、意味を変えない範囲で、できるだけ日常的な言葉に置き換えるとよいでしょう。代表的な言い換え例を以下にまとめます。

難しい言葉言い換え例
具申意見を申し出る
採納受け入れる
査収内容を確認して受け取る
暫時しばらくの間
斟酌事情をくみ取る、考慮する
失念忘れる
従前これまで
先般先日、この前
所存考え、つもり
躊躇ためらう
甚大非常に大きい
脆弱もろい、弱い
逼迫差し迫る、余裕がなくなる
亡失なくす
漏洩漏れる、外部に漏らす
罹患病気にかかる
履行実行する、約束を果たす
了知知る、理解する
返戻返す、返却する
喚起呼び起こす、注意を促す
喫緊差し迫った、緊急の
疑義疑問、疑わしい点
幸甚大変ありがたい
目途目標、見通し
抹消消す、取り消す
高配配慮、心配り
割愛省略する
踏襲前例や方針を引き継ぐ
逡巡ためらう
顛末事の成り行き、事情

例えば、「先般お知らせした内容について、変更が生じました」という文章は、「先日お知らせした内容に変更がありました」と言い換えられます。「喫緊の課題について検討する」は、「差し迫った課題について検討する」とすれば、内容を理解しやすくなります。

また、「ご高配を賜り、誠にありがとうございます」は、「ご配慮いただき、ありがとうございます」と表現できます。相手への敬意を保ちながら、意味が伝わりやすい文章にすることが可能です。

ただし、表に挙げた言葉は、どのような文章でも必ず避けるべきというわけではありません。例えば、「履行」は契約や義務を実行することを表す用語として重要な場合があります。単に「実行」と言い換えると、法的な意味合いが十分に伝わらないこともあります。

難しい言葉を言い換える際は、読み手にとっての分かりやすさと、元の言葉が持つ意味の正確性を両立させることが大切です。

外来語・専門用語の言い換え一覧

公用文では、カタカナで表記される外来語や、特定の分野で使われる専門用語にも注意が必要です。関係者の間では一般的な言葉でも、一般の住民には意味が伝わらない場合があります。

特に、行政サービスや公共施設の案内では、読み手が言葉の意味を推測しなくても済むよう、適切な日本語への言い換えや説明の追加を検討します。

代表的な外来語の言い換え例は、次のとおりです。

外来語言い換え例
アジェンダ議題
インキュベーション創業支援、企業支援
インタラクティブ双方向の
コンセンサス合意
スキーム枠組み、仕組み
ソリューション解決策
ニーズ需要、必要性
フィードバック意見、改善のための情報
プライオリティ優先順位
リソース資源、人員、予算など
ロードマップ工程表、実施計画
アウトリーチ積極的な働きかけ、訪問支援
エビデンス根拠、証拠
ガイドライン指針、手引き
マイルストーン節目、重要な中間目標

例えば、「会議のアジェンダを共有します」は、「会議の議題を共有します」と言い換えられます。「利用者からフィードバックを得る」は、「利用者から意見を聞く」とすれば、内容が伝わりやすくなります。

一方、ストレス、ボランティア、リサイクルなど、日常用語として定着している外来語は、そのまま使っても理解されやすい言葉です。すべての外来語を無理に日本語に置き換える必要はありません。

専門用語については、言い換えが可能かどうかを慎重に判断します。例えば、「頻回」は「頻繁」と言い換えられますが、制度上の正式な名称や法律で定義された用語は、安易に置き換えると意味が変わる可能性があります。

そのような場合は、正式な用語を使ったうえで、括弧書きなどによる説明を加えます。例えば、「罹災証明書」という用語を使う場合には、自然災害による住家の被害程度などを証明する書類であることを補足すると、読み手が理解しやすくなります。

また、今後普及させる必要がある用語や、社会的に重要な概念については、単に日本語に置き換えるのではなく、用語の意味や背景を段階的に説明する方法もあります。用語を維持しながら理解を促すことも、公用文では重要な工夫です。

外来語や専門用語は、定着度や専門性に応じて、言い換える、説明を加える、そのまま使用するという方法を使い分けましょう。

曖昧表現の言い換え一覧

公用文では、読み手によって解釈が分かれる曖昧な表現をできるだけ避けることが重要です。特に、手続きの期限や必要な数量、対応方法などを伝える文章では、具体性が不足すると誤解につながる可能性があります。

例えば、「早めに提出してください」という表現では、いつまでに提出すればよいのかが明確ではありません。提出期限が決まっている場合は、「10月10日までに提出してください」とすれば、読み手が行動しやすくなります。

曖昧になりやすい表現と、言い換えの方向性をまとめると、次のようになります。

曖昧な表現言い換え例
幾つか3点、複数の項目など
多少具体的な数量や割合を示す
多めに通常より10%多くなど
少なめに通常より10%少なくなど
早めに期限の3日前までなど
急いで本日中、3日以内など
しばしば週に3回など
しばらく1週間、次回の開催までなど
前向きに検討する検討する内容や今後の対応を具体的に示す
善処する具体的な対応方針を示す
適宜対応する対応する条件や判断基準を示す
しかるべく処理する必要な手続きや処理方法を示す
可及的速やかにできるだけ早く、可能であれば具体的な期限を示す
念頭に置く考慮する、意識する

「前向きに検討します」「善処します」などの表現は、対応する姿勢を示す一方で、実際に何をするのかが伝わりにくい場合があります。公用文では、可能な範囲で検討内容や対応方針を具体的に示すことが望まれます。

また、二重否定も、意味を理解しにくくする原因の一つです。「申請しないと利用できないわけではありません」という文章は、「申請しなくても利用できます」とすれば、意味が直接伝わります。ただし、例外条件がある場合は、単純な言い換えによって内容が変わらないように注意が必要です。

否定形よりも肯定形を使うと、読み手にとって受け入れやすい文章になる場合もあります。例えば、「10日以降は受け付けません」よりも「9日まで受け付けます」としたほうが、受付期間が明確になります。ただし、禁止事項や受付終了後の扱いなど、否定形で明確に伝える必要がある場合もあります。

さらに、「申請書を提出すること」のような命令口調の表現は、住民向けの案内では「申請書を提出してください」とするほうが自然な場合があります。一方、規則や要領などでは「~すること」が適切な場合もあるため、文書の目的に応じて判断しましょう。

なお、数量や期限を具体的に示す場合は、必ず実際の条件や根拠を確認する必要があります。根拠のない数字を入れると、かえって誤った情報を伝えることになるためです。

曖昧表現を言い換える際は、具体性を高めると同時に、元の意味や条件を変えないことが重要です。

分かりやすい公用文の書き方

公用文を分かりやすくするためには、個々の言葉を言い換えるだけでなく、文章全体を読み手の立場から見直す必要があります。文書の目的や読み手に応じて、用語、文の長さ、情報の順序などを調整しましょう。

まず、読み手が誰なのかを明確にします。専門家向けの資料と一般の住民向けのお知らせでは、適切な用語や説明の詳しさが異なります。専門家向けであれば正確な専門用語が必要な場合もありますが、一般向けの文書では、できるだけ平易な言葉を選ぶことが基本です。

次に、正式な用語を維持する必要があるかを確認します。法律や条例などで定められた用語は、別の言葉に置き換えると意味が変わる可能性があります。その場合は正式な用語を使い、初めて登場する箇所で意味を説明するとよいでしょう。

また、一文に複数の条件や説明を詰め込むと、読み手が内容を整理しにくくなることがあります。文章が長くなった場合は、内容ごとに文を分けたり、箇条書きにしたりすることで、重要な情報が伝わりやすくなります。

文章の文末表現にも注意が必要です。住民向けの案内では、命令口調を避け、必要な行動を丁寧に示すとよいでしょう。ただし、重要な期限や禁止事項については、曖昧な表現にせず、何を守る必要があるのかを明確に伝えることが大切です。

さらに、作成した文章は、実際にその制度や手続きについて詳しく知らない人の立場で読み直してみましょう。「何をすればよいのか」「いつまでに行えばよいのか」「どの条件に当てはまるのか」が明確になっているかを確認します。必要に応じて、表や具体例を使って補足すると、より理解しやすい文章になります。

公用文の作成に当たっては、文化庁が示す「公用文作成の考え方」(令和4年1月7日)などの公的資料も参考になります。表現を分かりやすくすることと、用語や内容の正確性を保つことの両方を意識し、文書の目的に合った書き方を選びましょう。

分かりやすい公用文とは、単に簡単な言葉を使った文章ではなく、正確な情報を誤解なく伝え、読み手が必要な行動を取れる文章です。

まとめ

本記事の内容をまとめると、以下のようになります。

項目言い換えのポイント
公用文の基本正確性を保ちながら、簡潔で分かりやすい文章にする
難しい言葉日常的な言葉に置き換え、意味を理解しやすくする
外来語定着度に応じて日本語に言い換える
専門用語言い換えが難しい場合は、説明を加えて使用する
曖昧表現数量・期限・条件などを具体的に示す
二重否定意味が直接伝わる表現に直す
命令口調読み手に配慮しつつ、必要な指示を明確にする

公用文では、難しい言葉や曖昧な表現を見直し、読み手が内容を正確に理解できる文章にすることが大切です。外来語や専門用語は一律に排除せず、言い換えによって意味が変わらないかを確認しながら使用しましょう。

また、数量や期限、必要な対応を具体的に示すことで、読み手の誤解を防ぎやすくなります。文書の目的や読み手に応じて適切な表現を選び、正確で分かりやすい公用文を作成しましょう。

この記事を書いた人

大学卒業後、出版会社へと就職。退職後はフリーライターとして独立し、現在は言葉の意味や違いなど、日々の生活やビジネスに役立つ情報を発信しています。皆さんに「なるほど」と思ってもらえる内容をお届けすることを心がけています。




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