「言う」と「いう」の使い分け・違い|公用文の正しい表記を解説

文章を書いていると、「言う」と「いう」のどちらを使えばよいのか迷うことがあります。特に「○○という○○」や「とはいえ」などの表現は、漢字とひらがなのどちらが正しいのか判断しにくいものです。

実は、公用文や新聞などでは一定の基準に基づいて使い分けが行われています。本記事では、「言う」と「いう」の使い分けの基準、公用文における考え方、「とはいえ」の表記ルールなどをわかりやすく解説します。

目次

「言う」と「いう」の違い

「言う」と「いう」の違いは、言葉としての意味がしっかり残っているかどうかにあります。

言う」は、本来の「発言する」「言葉にして伝える」という意味を持つ動詞です。誰かが実際に言葉を口に出している場面では、漢字の「言う」を使います。

一方の「いう」は、本来の「発言する」という意味が薄れ、補助的な役割をもつ動詞です。名称を説明したり、言葉同士をつないだりする際に使われます。

例えば、「夏目漱石という作家」の「という」は、実際に「夏目漱石」と発言しているわけではありません。この場合の「いう」は名称を説明する働きをしているだけなので、ひらがなで表記します。

反対に、「彼は自分の意見を言った」の場合は、実際に発言しているため、漢字の「言う」が適切です。

つまり、「発言する」という意味が残っているかどうかが、両者を見分ける最も重要なポイントといえるでしょう。

公用文における表記ルール

公用文では、文化庁の「常用漢字表」や「公用文における漢字使用等について」を基準として表記が行われます。

一般的には、常用漢字で書ける語は漢字で書くのが原則です。しかし、補助的な働きをする語や形式的な表現については、ひらがなで表記する慣例があります。

「いう」もその一つです。

例えば、「AというB」「こういう人」「そういう考え方」などでは、「いう」が単独で意味を持つわけではありません。そのため、公用文ではひらがなで表記されるのが一般的です。

また、「日本語は難しい言語だといわれる」のような伝聞や一般論を表す表現も、ひらがなで書かれることが多くあります。

一方で、「意見を言う」「名前を言う」「悪口を言う」のように発言行為そのものを表す場合は漢字を使用します。

公用文の考え方では、「漢字で書けるかどうか」よりも、「その語が実質的な意味を持っているかどうか」が重要な判断材料になります。

「言う」と「いう」の使い分け例文

それでは、実際の使い分けを例文で確認してみましょう。

「言う」を使う例

  1. 彼は会議で自分の意見を言った
  2. もっと上司に改善案を言うべきだ。
  3. 子どもが問題の答えを言った
  4. あえて言うなら、この方法が最適だ。
  5. 言うまでもなく安全対策は重要である。

これらはすべて「発言する」という意味が明確に残っているため、漢字表記になります。

「いう」を使う例

  1. 柴犬という犬種は日本原産である。
  2. 彼は誠実な人だという評価を受けている。
  3. そういう考え方もある。
  4. これといった特徴は見当たらない。
  5. 日本語は習得が難しい言語だといわれている。

これらは名称説明や評価、伝聞などを表しており、「発言する」という意味が薄れているため、ひらがな表記が適切です。

迷った場合は、「実際に誰かが口に出して言っている場面かどうか」を考えると判断しやすくなります。

「とはいえ」はなぜひらがななのか

「とはいえ」は、「言う」という漢字を使いたくなる表現の一つです。しかし、公用文や通常の文章では「とはいえ」とひらがなで表記するのが一般的です。

これは、「とはいえ」の「いう」が発言を意味していないためです。

「とはいえ」は、「そうは言うものの」「しかしながら」「それでも」といった逆接の意味を表す接続表現として使われています。

例えば、「便利なサービスだ。とはいえ、注意点もある。」という文では、誰かが実際に発言しているわけではありません。

また、次のような表現も同様です。

  • とはいえ
  • とはいうものの
  • といえば
  • といった
  • というわけで

これらの「いう」は補助的な働きをしており、本来の「発言する」という意味がほとんど残っていません。そのため、公用文ではひらがな表記が一般的です。

特にブログ記事やビジネス文書では、「とは言え」と漢字で書くよりも、「とはいえ」とひらがなで書くほうが自然な印象を与えます。

迷ったときの判断ポイント

「言う」と「いう」の使い分けは、一見すると難しく感じられます。しかし、判断基準はそれほど複雑ではありません。

まず、「発言する」「口に出して伝える」という意味がある場合は漢字の「言う」を使います。

一方で、名称の説明や補助的な表現、一般論や伝聞を表す場合はひらがなの「いう」を使います。

特に、「AというB」「こういう」「そういう」「とはいえ」などは、公用文でもひらがな表記が定着している表現です。

また、文章作成の現場では、「迷ったらひらがなにする」という考え方が採られることも少なくありません。補助的な表現に漢字を多用すると、かえって読みにくくなる場合があるためです。

ただし、「意見を言う」「名前を言う」のような発言行為までひらがなにしてしまうと不自然になるため注意しましょう。

まとめ

本記事の内容をまとめると、以下のようになります。

表記意味・使い方
言う発言する、言葉にして伝える意見を言う、名前を言う、言うまでもなく
いう意味が薄れた補助的表現柴犬という犬種、そういう人、これといって
といわれる伝聞・一般論日本語は難しい言語だといわれる
言われる実際に発言される上司にそう言われた
とはいえ逆接表現便利だ。とはいえ注意点もある

「言う」と「いう」の違いは、発言する意味が残っているかどうかにあります。実際に言葉を口に出す場合は「言う」、名称説明や補助的な表現、伝聞などでは「いう」を使うのが基本です。特に「○○という○○」「そういう」「とはいえ」などは、公用文でもひらがな表記が一般的です。迷ったときは、「実際に発言しているか」を基準に判断するとよいでしょう。

この記事を書いた人

大学卒業後、出版会社へと就職。退職後はフリーライターとして独立し、現在は言葉の意味や違いなど、日々の生活やビジネスに役立つ情報を発信しています。皆さんに「なるほど」と思ってもらえる内容をお届けすることを心がけています。




目次